2003年10月12日

書評:「ぷちナショナリズム症候群」香山リカ著

社会のレンズ サイトより
「ぷちナショナリズム症候群」香山リカの書評 2003.10.11


・・・・・こうした中で、近年の若き論客の中には、「現実主義」に立った議論を展開する者が多く見られるようになっているとしています。例えば、ある若手の学者は、集団的自衛の方が効率がよいといった理由によって改憲論を主張したり、また別の若手学者は、現実は金儲けという方向に進んでいるのだから、それがいかに非人間的に見えようとも仕方ないではないか、といった主張を展開しているわけです。こうした態度は、ある意味で非常に効率的でストレスの少ない態度であるわけです。つまり、「切り離し」というメカニズムによって、目の前の現実を歴史という大きな流れの中で考えたりすることを回避しているわけです。・・・・・

・・・・・以上が本書の概要ですが、本書にはいくつかの鋭い指摘がなされています。例えば、今日のエリート層までが過去の脈絡を棚上げにして「現実主義」の思考方法を取っていることについて、実は無邪気なナショナリズムでニッポンを応援する若者たちと共通するものであることを指摘している点は、正に今日の「1億総思考停止状態」を象徴していると思います。こうした過去の脈絡を棚上げする思考方法は、香山氏も述べているように、極めて楽な思考方法なのです。・・・・・

機会平等があれば結果不平等は仕方がないというのが現政権の立場だが、機会平等がかりにあったとしても、多数が生活できなくなり他方は億万長者となるような米国のような「結果不平等」は通常の人間には許容できるものではない。しかも機会平等などということは戦後日本でも一度もなかったことは社会学の実証的研究を通して明かになってきている。このような正義なき「構造改革」が、急速な右傾化をもたらす懸念があることを書評者は懸念しているように思える。

tjst |10月12日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000203.html |荒廃の諸相
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