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国立大学独立行政法人化の諸問題: 司法改革


11/06 半年前の「裁判員制度・刑事検討会」議事録が公開司法改革
11/02 国民審査を受ける藤田宙靖最高裁判事への公開書簡より荒廃の諸相 , 司法改革 , 司法制度の形骸化
11/02 「共謀罪新設は監視社会体制を正当化」司法改革
11/02 「裁判員制度と刑事訴訟法との非整合性」司法改革
10/29 弁護士報酬敗訴者負担へのパブリックコメント集司法改革
10/21 「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」パブリックコメント5,134通司法改革
10/02 国対個人訴訟における片面的敗訴者負担に経団連が反対司法改革 , 司法制度の形骸化
9/20 司法修習生の給費制を貸与制に移行するための法案を次期通常国会に提出司法改革
8/30 「行政訴訟などでの片面的敗訴者負担制度を検討すべき」司法改革 , 司法制度の形骸化

2003年11月06日

半年前の「裁判員制度・刑事検討会」議事録が公開

司法制度改革-裁判員制度・刑事検討会(第18回2003.5.20)議事録 司法制度改革推進本部事務局

議題
「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」について

議事録公開まで半年近くもかかっているのは問題ではないか。

Posted by tjst at 11月06日
URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000282.html
他の分類:司法改革

2003年11月02日

国民審査を受ける藤田宙靖最高裁判事への公開書簡より

[藤田宙靖氏への公開書簡] 最高裁判事ご就任にあたってのお願い(2002.10.6)より

・・・・・ 日本の司法は、行政に対する「禅譲の精神」を背景とする消極主義により違憲立法審査の使命を半世紀にわたり事実上放棄したまま今日に到り、憲法の止処ない形骸化に「不作為に」手を貸してきた、と指摘する人が少なくありません。行政府が立法府と司法府を実質的に支配する状況がこれ以上続くことは日本の将来にとって好ましいことでしょうか。藤田様には、学術セクタを代表して、時代を越えた価値を担い、消極主義による司法の形骸化に歯止めをかけて頂けるものと期待しております。行政と長年に亙り深い関係を持ってこられた藤田様には、行政と十分な距離を取ることは容易なことではないと察しますが、2000年の司法制度改革審議会ヒアリングでの発表「司法の行政に対するチェック機能の強化」(*6)で表明されている問題意識に立って、憲法を活性化させる判決の数々によって日本社会を勇気付てくださることを祈っています。

藤田氏は橋本内閣の行革会議に参加し、独立行政法人制度の設計において重要な役割を果たした。1999年6月の「ジュリスト論文」で国立大学社会の世論に強い影響を与え、国立大学の独立行政法人化の流れを作った。上は、昨年、最高裁判事に就任する藤田氏に送付した公開電子書簡。2002年3月の調査検討会議最終報告の「新しい国立大学法人像について」の内容について専門家としての意見表明を要請したものであったが、第一回の公開質問状の時 とは異なり、今回は回答はなかった。

藤田氏が裁判長として担当した事件:ネパール人の無期確定へ 「東電OL殺害事件」 (共同通信)

ネパール人の無期確定へ 「東電OL殺害事件」

 東京都渋谷区で東京電力の女性社員=当時(39)=が殺害され現金を奪われた「東電OL殺害事件」で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は21日までに、強盗殺人罪に問われたネパール人の元飲食店従業員ゴビンダ・プラサド・マイナリ被告(37)の上告を棄却する決定をした。
 決定に関与したのは4人の裁判官で全員一致の意見。1審の無罪判決を破棄し、無期懲役とした2審判決が確定する。決定は20日付。
 被告と犯行を結びつける直接証拠がなく、被告側は一貫して無実を主張。1、2審判決は「状況証拠の評価」が結論を左右した。2審判決でさえ「未解明な点はある」と指摘したが、最高裁の判断は示されず、疑問点を残しての決着となった。

関連サイト:
ゴビンダ裁判から日本が見える
ネパール人勾留決定問題に関する奈良弁護士会長声明2002.7.11
人種差別、排外主義に対する国連の会議(World Conference Against Racism and Xenophobia)に向けてのNGO会議「ゴビンダさんに正義を求める運動支援の決議文」2001.4
無実のゴビンダさんを支える会:ゴビンダさんに無罪判決を求める声明 2001.3.25
「無実のゴビンダさんを支える会」の結成集会へのゴビンダさんからの手紙2001.3.25

・・・・・最高裁判所が正しい判断を下し、私を祖国に帰してくれるよう、皆さん、私に力を与えて下さい。・・・・・

「共謀罪新設は監視社会体制を正当化」

JANJAN 2003.10.29: 政治・日弁連シンポジウム・共謀罪(処罰の早期化)の問題性を指摘より

・・・・・新屋達之(立正大学)さんは、共謀罪新設による「近代刑事手続原則の変容」の方がむしろ問題であることを指摘した。共謀の事実を立証するためは、‐攷擁欷遏↓刑事免責、1L捜査官、いとり捜査の明文化、ゼ柴眦霙亜↓写真撮影・録画・監視の強化、Д如璽申言僉Ε如璽身羈咫∪己学的同一性確認、等々が不可欠となり、実際に手続きとして取り入れられることになるという。たしかに恐ろしい。警察による監視社会体制が法的に正当化されることになるというのである。・・・・・
Posted by tjst at 11月02日
URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000269.html
他の分類:司法改革

「裁判員制度と刑事訴訟法との非整合性」

JANJAN 2003.5.26より

・・・・・
裁判員制度…国民の司法参加を謳い、司法改革の柱とされており、2004年通常国会へ提出されるといわれている。「一般国民の健全な社会常識を反映させる」「国民に公共性を意識させる」等々の理由が挙げている。理由からも明らかなように、被告の人権を確保する裁判(刑事訴訟法)とはまったく相容れない発想。現在でも刑事手続きには数多くの問題があるにもかかわらず、裁判の基本である人権保障という観点を根本から大転換されるもの。裁判員は、無作為に選ばれ、拒否できない。対象事件は、重大事件に限られている等々問題点が多い。日弁連は、同制度に賛同し、積極的に巨額の費用を費やし、全国で推進キャンペーンを繰り広げている。また、裁判員に「偏見」を抱かせないために、報道や裁判批判などへの規制も、実しやかに検討されている。・・・・・

北海道新聞社説2003.10.30より

・・・・・これまでの論議には市民のための改革という認識が欠けているように思える。裁判員の数を抑えたり、厳しい守秘義務を課したりするのは、裁判の運営への参加を求めながら、実はあまり信頼を置いていないということではないか。・・・・・

この社説は広い裁判員制度の最近の具体案について種々の問題点を指摘してはいるが、JANJAN 記事にあるような裁判員制度導入自身が内包する危険性を指摘する報道は余りないような気がするが、どうか。

Posted by tjst at 11月02日
URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000268.html
他の分類:司法改革

2003年10月29日

2003年10月21日

「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」パブリックコメント5,134通

転載:「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」についての意見募集結果

司法制度改革推進本部事務局2003.10


当事務局において実施した標記の意見募集(平成15 年7月29 日から同年9月1日まで実施)に対しては、5,134 件の意見が寄せられた。

本資料は、寄せられた意見の中から、弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いに関連する部分を引用したものである。なお、意見内容を引用するに当たっては、誤字と思われる字を修正した上、要約し又は部分引用にとどめるなどした。また、同趣旨の意見については、代表的なものを引用している。

410の意見を羅列しただけの資料。本当に意見を尊重するつもりがあるのであれば、意見を整理すべきであろう。5134通もの意見を410に集約する作業はどのようにして行われたのか、そういうことも公表しなければならないはずだ。また、

(363)ヒアリングや公聴会を行うべきである。

というような意見は、別扱いにすべきではないのか?

Posted by tjst at 10月21日
URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000236.html
他の分類:司法改革

2003年10月02日

国対個人訴訟における片面的敗訴者負担に経団連が反対

司法制度改革-司法アクセス検討会(第18回2003.9.19)議事概要


「日本経済団体連合会、経営法友会の意見を紹介したい。これらの団体では片面的敗訴者負担に反対している。当事者を外観から強者、弱者に分けて議論をするのはどうかということである。その前に、両面的敗訴者負担についてどのような範囲のものを適用除外とするかの検討をすべきではないかということである。」

2003年09月20日

司法修習生の給費制を貸与制に移行するための法案を次期通常国会に提出

ーー司法改革推進本部事務局方針

法曹養成検討会(第19回2003-09-09)議事概要 より

(□:座長、■:事務局)

■ 今後、司法試験合格者、司法修習生の増加が図られる中で、給費制を維
持することについては極めて困難な問題が存在すると考えられる。一方で、
法科大学院への財政支援、特に文部科学省の予算要求の結論が年末までに出
る。また、次期通常国会において、公的弁護制度、司法ネット、裁判員制度
など近い将来相当規模の財政措置が必要になると思われる事項について、国
会で御審議いただくことになる。このような状況にあることから、事務局の
作業スケジュールとしては、司法修習生の給費制を貸与制に移行するための
法案を次期通常国会に提出するべく、準備を行いたいと考えている。もちろ
ん、関係機関に協議に応じていただいた上で具体的な制度設計をして話を詰
めていくことや、この検討会でも御議論いただくということは大前提である
が、スケジュールとしては、次期通常国会に向けて準備を行いたいと考えて
いる。

□ 貸与制のビジョンを示すために、事務局で具体的に検討していただくこ
ととしたい。もちろん、事務局の案が国民的観点から見て問題があるようで
あれば、この場で修正について検討するし、最終的には国会で決定されるこ
とになる。検討会で意見がまとまらないから先送りだというのはいかがなも
のか。当然貸与制になるという趣旨ではなく、選択肢の一つとして貸与制も
視野に入れて制度設計しなければならないということである。事務局におい
て具体的に検討していただいた上で、その具体的な検討の内容についてこの
場で更に御議論いただくということとしたい。法曹三者それぞれの立場も分
かるが、社会的に納得の得られる案ができるように、御協力いただきたい。

Posted by tjst at 09月20日
URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000154.html
他の分類:司法改革

2003年08月30日

「行政訴訟などでの片面的敗訴者負担制度を検討すべき」

司法改革推進会議 第17回会合 平成15年7月23日配布資料
弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いに関する議論の概要(第16 回検討会まで)
より

「○ 行政・企業と個人とでは力に差があるので、敗訴者負担制度を導入すること
が公正とは言えない。シック・ハウス症候群の例では、敗訴しても訴え続けた
人達がいたおかげでルールが作られるようになった。個別的に検討し、分野に
よっては片面的敗訴者負担制度の導入が検討されてもよい。

○ 司法制度改革審議会意見では、弁護士は社会生活上の医師になることが期
待されている。被告側も、社会生活上の医師である弁護士へのアクセスを必要
としている。弁護士報酬の負担という問題を考える際の基本的な原理は公平で
ある。したがって、弁護士報酬の負担は、各自負担か敗訴者負担にすべきであっ
て、片面的敗訴者負担制度は公平ではない。

○ 行政訴訟などでの片面的敗訴者負担制度を検討すべきである。

○ 行政の情報開示、国民からの意見聴取も不十分で、行政訴訟になる種がま
かれている。行政訴訟では、片面的敗訴者負担制度にすべきである。

○ 片面的敗訴者負担制度の制度にするには、それなりのべースが必要である。

○ 敗訴者負担制度を入れるとすれば、片面的敗訴者負担制度を入れるべき。
全部に入れるということではなくて、一定の分野でということである。」

「○ 事務局には弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入に賛成する意見は来ていな
いそうである。裁判官ネットワークのホーム・ページを見ていたら、弁護士報
酬の敗訴者負担制度が導入されたら困るという意見が1 つ書き込まれていた。
書き込みをしたのは精神的な病気を患ったことのある方のようである。このよ
うな権利を侵害されやすい立場の人達のことを考えないといけない。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担については様々な意見があるが、意見が分かれる
のは、それぞれの人の実体験が異なるからだろう。

○ 敗訴者負担制度の導入に反対の人が、負けた場合は億単位の額を負担をさ
せられると言っているのを聞いた。そんな大きな額の負担になるとは思わない。

○ 敗訴者負担に賛成の意見も反対の意見もあっていい。しかし、この国の裁
判の骨格を議論するときには、敗訴者負担に反対の意見も汲み取っていかなけ
ればならない。

○ 敗訴者負担に反対の立場の方の意見を聴くと、現状肯定であり、現状より
後退になる敗訴者負担制度には異議があるという意見が大半である。

○ 現状でよい。明治の民事訴訟法制定以来やってきた。司法制度改革審議会
意見で指摘されている、弁護士への報酬を理由に訴訟を回避する人も聞いたこ
とはないし、アンケート調査でも、80 パーセント以上の人がそうではないと
いう結果だった。

○ 今までこの制度でやってきたし、原告がそれを理由に諦めることはないと
いうことか。現在の裁判での弁護士への報酬の位置付けをベースに議論してい
るのか。

○ 勝敗とかお金とかではなく、トラブルをはっきりさせてほしいということ
で裁判が起こされている。イギリスでは、ハイ・コートという上級裁判所では
敗訴者負担で、カウンティー・コートでは各自負担。経済活動をしている人と
そうでない人の考え方は違う。普通に生活している人の感覚を捉えるべき。」

ーーーーーーーーーー
全文

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/access/dai17/17siryou4.pdf
弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いに関する議論の概要(第16 回検討会まで)

第1 弁護士報酬の敗訴者負担の制度を導入する根拠

○ 司法も、当事者が議論を戦わせ、裁判官が判断するという構造が、建築での
コラボレーションと同じ。勝った負けたというのは違和感がある。シックハウ
ス病の例では、裁判で負けた例が積み重なって、ホルムアルデヒドの測定義務
ができた。問題が司法の場に出ることによって政策ができていく。相手方は行
政や企業で、負けた場合に相手方の弁護士費用を負担するのは考えられない。
問題提起は、最初は個人対行政・企業である。

○ 近年目覚しい変化をとげた分野では司法も立法も変化に追いついていない。
我が国は諸外国に比べて訴訟が多くない。その原因の一つとして、司法が世の
中の動きに適合してこなかったことが考えられる。我が国の発展のためにも、
司法へのアクセスのハードルは低くしてほしい。

○ 弁護士報酬の一部をプロセスに必要不可欠な費用と認めるかどうか。まず、
弁護士報酬の一部をどう位置付けるかが問題。訴訟を促進するとか、抑制する
とか、チャンスをそぐといった議論に行く前に、弁護士報酬の位置付けを考え
るべき。弁護士という社会的資源を両当事者が平等に活用する権利、チャンス
がある。弁護士という資源へのアクセスを最初から制約して裁判に臨むより、
利用可能な資源を有効に両者が使いつつ、ことを進めるのが有益。その上で、
敗者も勝者も、どこまでを自分の責任で負担できるのかという議論が必要。裁
判というプロセスに勝敗の概念を持ち込むことに違和感を覚えるという意見は
理解できる。しかし、裁判に投入できる資源にどのようなものがあって、その
資源を活用することにどれだけのメリットがあるか、それを全部判断して、判
決の時点で遡ってそのプロセスの中でかかった費用を考えるべき。

○ 政策の形成に役立つ訴訟ができなくなるという点に関しては、敗訴者負担の
問題ではなく、別の訴訟補助措置などを本来検討すべき。ただ、このような検
討には時間がかかるので、敗訴者負担の中で検討していかなければならないと
思うが、敗訴者負担制度導入の根拠は、訴訟で勝った者が権利を実現するため
に生じた費用を負けた者から回収することができるようにするという、フェア
ーな原則で当たり前のこと。消費者の立場に立っても、例えば、20 万円の裁
判を起こしたいが弁護士報酬がかかるので裁判を諦めて泣き寝入りするという
場合でも、勝訴する確率が51%以上あれば、勝訴すれば相手方から弁護士報
酬を回収できるのだからということになって、訴訟へのアクセシビリティを増
す効果がある。これが1,000 億円の訴訟となれば、弁護士費用がいくらかかろ
うとも弁護士に頼んで訴訟をしなければならないと思うので、アクセスという
面からはあまり影響がないのかもしれないが、比較的に少額の請求では、勝っ
たときは弁護士費用を相手方から取れるということによって、訴訟が容易にな
る効果がある。

○ 請求額と弁護士に支払う報酬の額とを比べて、これだけ費用がかかるのなら
裁判はやめようという人もいるだろう。身に覚えのない請求をされて裁判では
っきりさせたくても、裁判で勝っても弁護士報酬を払わなければならないのな
ら、裁判はやめて相手と話し合って決着をつけてしまおうという場合もあるの
ではないか。正々堂々と闘って、負けた場合は負けた者が弁護士報酬を負担す
るというのはフェアーな原則である。この原則を貫いたときに、どういう場合
にどういう不都合が生じるかを議論すべき。

○ 弁護士の報酬を訴訟に必要な費用と認めるという点について、かつては、必
ずしも必要とは言えないということだったのだろうが、現在では、弁護士への
報酬は訴訟に必要な費用だ。

○ 弁護士への報酬は、訴訟に一般的に必要な費用だからということだろう。フ
ランスでは、弁護士報酬の一部は訴訟費用として敗訴者が負担し、謝礼の部分
の負担をどうするかを裁判官の判断に委ねている。裁判官の判断によっては、
謝礼の部分は各自負担ということもあり得る。

○ 敗訴者負担で押し切っていいことにはならないものもあるし、一方で、訴え
られた方は、勝訴しても経済的利益は何も得られないのに弁護士報酬を負担す
るのは不公平だという議論もある。具体的事件類型を前提に議論すべき。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担制度の取扱いを考えるに当たっては、裁判所へのア
クセスの拡充という観点の他、不当な訴えを起こされた被告の立場という観点
からの検討も必要。こういう立場の人の声なき声に耳を傾けることも重要。

○ 司法へのアクセスを推進するための制度でなければならない。司法制度改革
推進本部に届けられている要望の中に弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入を求
める意見はない。導入反対の意見が多数ある。弁護士への報酬を自分で負担し
なければならないという理由で訴訟を回避せざるを得なかった人がいるのか。

○ 弁護士への報酬が負担になって訴訟を回避したという人はどのくらいいるの
か。訴訟を回避したのだから数字には表れないのだが、そのあたりをどう判断
するのか。弁護士から話を聞くと、裁判で勝っても相手にお金がないから無駄
だという理由で裁判を諦めるケースが圧倒的に多いと言う。裁判は勝つか負け
るかは分からない。明白な事実なら争いにならない。白、黒、灰色とあって、
灰色の部分が多い。白なのにお金のことで諦めた人がどのくらいいるのか。

○ 本人訴訟をしている人と話すと、弁護士に払うお金がないから弁護士を頼
ま、ず裁判に負けるかもしれないが本人訴訟をしているという話をよく耳にす
る。根拠があって弁護士費用も取れるということになれば違ってくるのではな
いか。根強い反対論があることは承知している。反対論に相当な根拠があるこ
とも知っている。制度を導入するとどういう問題があるかをよく議論して、や
はり問題があるということになったら全体的な考え方も修正しなければならな
いことになるかもしれないが、議論は先に進むべきだ。、

○ 訴訟促進になるかどうか萎縮的効果があるかどうかがメルクマールになる。
弁護士報酬について各自負担だから裁判をやめるという人はいない。勝ったと
きは取れるんですかという質問はある。裁判を始めるときには不安を感じる人
が多い。そういう時に、負けたら2 人分の弁護士報酬を負担しなければならな
くなるという話をしたら、裁判を諦めてしまうだろう。日本弁護士連合会が、
消費者生活相談センターの専門相談員のところに来た人と弁護士会の法律相談
センターに来た人を対象にアンケート調査をした結果、完全に勝訴又はほぼ勝
訴という事案で、弁護士報酬の各自負担を理由に訴訟を回避するかどうかとい
う質問に対して、回避するという回答は10 人に1 人くらいだった。

○ 司法制度改革審議会意見を独自に解釈して実現を遅らせるのはよくないとい
う大勢の意見の中で、日本弁護士連合会が、弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い
の問題については、司法制度改革審議会意見を否定するがごとき決議をしてい
ることに不満を感じる。司法制度改革審議会意見の実現が我々の使命である。

○ 司法制度改革審議会意見は、かなり微妙な調整の上にできたものだ。それに
対して意見を述べることはあっていい。日本弁護士連合会の決議は一般的な導
入に反対しているのであり、理由の中にも、司法へのアクセスを抑制するおそ
れがある、裁判の人権保障機能、法創造機能を損なうということが書かれてい
る。

○ 司法へのアクセスの促進が唯一の判断基準だというのが日本弁護士連合会の
意見だが、公平・公正という視点は何ものにも勝る判断基準ではないか。約14
パーセントの人が、訴訟に勝つ確率が極めて高いにもかかわらず、自分で弁護
士に報酬を支払わなければならないなら裁判はできないと回答している。弁護
士報酬を各自負担としていることの提訴萎縮的効果がこれだけ大きい。法の創
造機能が議論されているが、最終的に勝訴することによって法が創造されるの
なら、敗訴者負担制度の導入をなぜ躊躇するのか。裁判には、裁判に勝ちたい
という当事者の意欲と弁護士の能力が必要であるはずで、最初から、裁判に負
けるかもしれない、負けると相手の弁護士費用を払わなければいけないから訴
訟をやめようかという姿勢で正義を実現しようというのはおかしい。

○ 弁護士にとっては今どうなっているのかが重要。それは実務に携っている弁
護士としては当然だが、原理原則論はどうかという検討もしていただきたい。

○ 不当提訴、不当応訴に対しては、同じ訴訟手続の中で解決が図られた方がよ
く、別訴を起こせというのはアクセスの拡充と逆行する。

○ 最高裁判所の判例によれば、不当提訴・不当応訴に対して不法行為責任が認
められる要件は厳しい。そのために、多くの人が泣き寝入りになっているかも
しれない。別訴で不当性を主張立証しないと弁護士費用を回収できないという
のが公平だとは思えない。別訴で不法行為責任を追及する場合は、弁護士に支
払った報酬全額が賠償の対象となるが、司法制度改革審議会意見が導入を提言
しているのは一部負担である。一部負担の制度を導入することによって公平が
確保される面がある。全ての訴訟に敗訴者負担制度を導入すべきだとまでは思
っていないが、一定の場合には、敗訴者負担制度を導入することが公平だ。

○ 裁判とは何か、弁護士費用の必要性についてどう考えるか、21 世紀の司法
に何が必要か、という視点で、骨格の議論をする必要がある。弁護士報酬の敗
訴者負担制度は、本当に理不尽な制度なのか。弊害があるとされる部分は、社
会運動の一環として裁判をしている部分が多い。制度論をはっきりさせて、ム
ーブメントが働きかけられる部分はどこかを議論すべき。片面的敗訴者負担制
度の議論もあったが、先走った話だ。政策形成型訴訟については他からの費用
援助をするという制度論もあり得るが、骨格の部分に関して、敗訴者負担制度
は制度として理不尽なのかどうかを議論した方がいい。もっとも、制度として
敗訴者負担制度は理不尽かどうかという議論はこれまでにされていて、一応理
不尽な制度ではないというところに到達した司法制度改革審議会意見を受け
て、この検討会は議論を進めている。片面的敗訴者負担制度は、少し距離を置
いて、後で考えるべき。

○ アクセスの拡充は確かに制度導入の理由の1 つだが、原告側からのアクセス
のみを考えることがアクセスの拡充だとは思わない。被告側からのアクセス、
つまり、訴えられた側にも良質な司法サービスをという視点も加味して考慮す
べきである。訴訟費用を用意できない当事者のための訴訟救助制度、法律扶助
制度は原告のみでなく被告も対象としている。民事訴訟では、被告が法廷に出
頭しなければ基本的には敗訴してしまうため、敗訴したくなければ被告は訴訟
に対応しなければならない。このように応訴を余儀なくされる被告をいかに保
護するかが民事訴訟法の課題であり、それは、例えば、裁判所の管轄を定める
場面では、被告の住所地を管轄とするという規定が置かれているように、被告
が司法にアクセスしやすいようにという配慮がされている。このような配慮を
した上で、民事訴訟法は、当事者を対等に扱うことにしている。原告の立場だ
けを強調して、原告の視点からのアクセスだけを考えることが適当だとは思わ
ない。

○ 一般法の領域と個別法の領域は区別して議論をしてはどうか。消費者関係の
分野の議論を一般法の議論の際にするのはどうか。

○ 司法は国民にとって縁遠い存在である。弁護士も含めて縁遠い。利用しにく
く、開かれていないように見える司法の在り方を今議論している。こういう骨
格だということが決まっているなら、こういう検討会を設ける意義はない。司
法制度改革審議会意見で既に決まっているということだが、それならばなぜ、
敗訴者負担についての意見を問う人が多いのかよく分からない。

○ 司法制度改革審議会意見を前提とすると、敗訴者負担制度を一切導入しない
という結論はあり得ないのではないか。弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入す
ることが問題だと言われるが、それは、この分野に導入したら問題であるとい
う議論。本人限りで裁判ができる前提であれば、弁護士の関与が必要でないの
に弁護士を頼んだのだからという理由で、各自負担が合理的である。しかし、

現在はそうは言えない裁判をするのに弁護士の持つ知見が必要不可欠だから、
言わば弁護士は司法インフラの一部だから、その報酬の一部は、訴訟費用と同
じように、勝訴した方が敗訴した方から回収するという議論ではないか。

○ 弁護士の知見が必要不可欠だから弁護士報酬の一部を敗訴者の負担にすべき
との意見が、論理必然ではない。弁護士への費用が必要不可欠であるとして、
誰が負担するのが司法へのアクセスの拡充になるのかという議論が介在しなけ
ればいけない。敗訴者負担制度の導入の根拠として、公平を度外視していいと
は思わないが、アクセスの拡充が中心。公平を図ることが目的ではない。

○ 裁判は何をする場かという点に関する考え方に違いがあるために意見が分か
れる。社会問題が全て裁判を通じて解決されるべきで、司法が世の中を正しい
方向に導くとは考えていない。実効的かどうかという問題はあるが、社会問題
を解決するためのチャンネルは、司法以外にもある。何でも訴訟で解決すると
いう社会が良い社会だとは思えない。そういうことになれば失うものも多い。
司法に全ての問題の解決を期待すべきではない。

○ 現状では、立法、行政、司法のチェック・アンド・バランスが十分に機能し
ていない。司法はもう少し大きくなっても良い。

○ 現在、訴訟費用については敗訴者負担制度が公平であるとされている。弁護
士報酬の負担の問題を考える場合に、訴訟費用については公平の原理から敗訴
者負担の原則が採用されていることとの関係をどう考えるのか。これまでは、
当事者が自分の都合で弁護士に訴訟追行を依頼して報酬を払うのだから、それ
を訴訟費用に入れるのは適当でないという考え方が採用されていたが、今はそ
ういう状況ではない。司法制度改革審議会意見は、弁護士を社会生活上の医師

と位置付け、弁護士に支払う報酬は必要な費用だという位置付けをしている。
訴訟費用の負担原則をも考慮すると、骨格論としては、弁護士報酬の一部を敗
訴した当事者が負担するという制度は十分に骨格として成り立ち得る。

○ 我が国では2 割司法という現状があることを考慮すべき。我が国の司法は諸
外国に比べて貧弱である。不当な訴えの被告にされた方々の問題はある。そう
いう状況に置かれた場合に、訴訟に伴う出費を相手から回収したい気持ちは分
かる。しかし、頼りがいのある司法をと言われ、規制緩和により今後はもっと
司法の利用が増えなければならないときに、敗訴者負担制度を導入するという
のはどうか。敗訴者負担制度の導入により、本来司法の場に持ち込まれるべき
ものが持ち込まれないという現象を招くのではないか。2 割司法のままでいい
のか。弁護士の報酬に対しても、消費者は、弁護士に依頼するといくらかかる
のか分からない。理論的にこうだからということで敗訴者負担を導入していい
のか。

○ アメリカの少額請求に関する論文によると、少額の請求の場合、訴訟をため
らう人は4 人に1 人程度の割合だ。訴訟をためらう理由については、47 パー
セントがコストだと回答した。参考になる。

○ 訴訟に勝った場合に相手から取れればいいが、例えば離婚訴訟では、提訴す
る段階では勝つかどうかは分からないこともあり、勝っても相手から回収でき
ないケースもある。

○ 制度導入の根拠がはっきりしない。どのような場合に制度を導入するといい
のかという視点での検討も必要。

○ 原告、被告両方の立場で考える必要がある。多様な状況を考えないといけな
い。

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第2 敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方

○ 弁護士報酬敗訴者負担制度を導入する範囲と導入しない範囲は、同時に議論
すべき。提訴を促進する場合と萎縮する場合について、具体的な事案を念頭に
議論すべき。

○ 和解する場合は、費用も各自負担ということがある。当事者が対等ではなく、
環境とか個人の生命に関わりそうな事件の場合は、一律に敗訴者の負担ではな
くて各自の負担とするというような制度はないのか。そもそも、各自負担では
不都合な理由は何か。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入に対する消極論が、制度を導入すると不
都合があると指摘している訴訟は、民事訴訟全般ではない。萎縮的効果があり
そうな訴訟はどのようなパターンの訴訟か、そういうパターンの訴訟に敗訴者
負担制度を導入しないことにどのような理屈が立てられるか、を検討していく
べき。

○ 制度の導入に伴う弊害もあると指摘されているので、弊害について研究して
いくべきである。訴訟の類型で分ける考え方と、当事者の属性で分ける考え方、
例えば商人間の訴訟、私人間の訴訟、行政を相手とする訴訟、商人と私人との
間の訴訟、そういうことも1つの考え方となる。

○ 政策形成型訴訟は条文上は定義不可能だろう。当事者の属性という話があっ
たが、個人企業でも株式会社、有限会社になっている場合があり、難しい問題
である。

○ いわゆる政策形成訴訟に関して、政策の形成に役立つ訴訟では、原告だけが
政策形成に役に立っているわけではない点に留意する必要がある。原告が訴訟
の場で理屈を立て、被告の側も専門家である弁護士を雇って理屈を立て、それ
らを訴訟の場で闘わせることによって、あるべき規律の在り方が浮かび上がっ
てくる。そして、それが法制定に結びつく場合もある。被告側も、反論する中
で政策形成に役立っている。被告の役割、特に、被告が依頼した弁護士の役割
を正当に評価すべき。

○ 政策形成訴訟では、原告に提訴をためらわせることが一番の問題。原告に提
訴を促す活動が重要である。相手の弁護士の費用も負担する可能性があると説
明して、原告を提訴に導くことは不可能である。政策形成訴訟における被告の
弁護士の役割を評価すべきだという視点には疑問がある。

○ 敗訴者負担制度を導入しない範囲に関して、政策形成型訴訟というくくり方
はやめた方がいい。誰が政策形成型訴訟だと判断するのかという問題がある。
当事者の主観もバラバラである。敗訴者負担制度を導入しない範囲を考えるに
は、定型的に力に差がある当事者間の訴訟、少額訴訟のようにそもそも弁護士
の関与が予定されていない訴訟などを拾いあげていく手法がよい。

○ 敗訴者に負担させるべき額について議論して、それでもなお、敗訴者負担
制度を導入すると弊害がある、公平でないという部分を議論した方が議論が見
えやすい。確かに、当事者間の地位に差がある場合はあり、それに対応するた
め、に例えば労働関係の分野や消費者関係の分野などで特別法が制定されてい
る。このような現行法秩序を考慮しつつ、何が公平かを検討していくべき。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入しない範囲の検討に当たって、対等でな
い者の間を規律している特別法の思想を、弁護士報酬の敗訴者負担の取扱いに
当たっても考慮すべき。

○ 日本弁護士連合会の意見の中に、こういう類型の訴訟ではどうかといった各
論の検討に有益なヒントが示されている。

○ 3 月10 日の日本弁護士連合会の意見に沿って考えたい。敗訴者負担制度を
導入しない範囲として、行政訴訟、労働関係訴訟、個人の権利・利益の侵害に
関する訴訟、人事訴訟などが考えられる。個人の権利・利益の侵害に関する訴
訟とは、具体的には、医療過誤訴訟、消費者契約に関する訴訟、公害訴訟、薬
害訴訟、環境訴訟などである。

○ 敗訴者負担制度を導入しない範囲について、訴訟類型別に議論していくこと
に賛成。

○ 行政訴訟の場合、指定代理人制度がある。また、公権力行使のチェックとい
う意味もある。国民にとっては、行政訴訟は、公権力行使の適法性を争う唯一
最大の手段である。このあたりに政策的配慮をするかどうかということではな
いか。

○ 労働関係訴訟では、使用者と労働者の間の訴訟、使用者と組合の間の訴訟、
組合間の訴訟という3 つのパターンがある。各パターンごとに検討する必要が
ある。

○ 使用者と労働者の間の訴訟は、敗訴者負担制度を導入しない典型例ではな
いか。力に差がある。以前は、組合が労働者の訴訟を支援することもあったが、
最近は、未組織の労働者が当事者となるケースも増えている。一方、使用者と
組合との間の訴訟については、組合がそれなりのバーゲニング・パワーを持っ
ているという前提なので、必ずしも敗訴者負担を導入しない範囲としなくても
よい。

○ 不当労働行為を理由とする訴訟では、少数組合が当事者になることもあるの
で、使用者と組合との間の訴訟も、敗訴者負担を導入しない範囲にするべきで
ある。

○ 男女共同参画に反する場合、昇進や賃金の差別の問題なら、使用者と労働者
の間の問題に入る。

○ 最近は、未払賃金の支払を請求する訴訟も増えており、労働者が勝つことも
多い。その場合、労働者が自分の弁護士の報酬を負担するのは酷な気もする。

○ 雇用関係にあるという主張をして、地位確認と未払賃金の支払を請求する場
合もある。個別的労使関係の訴訟には敗訴者負担制度を導入しないという形で
整理した方がいい。

○ 人事訴訟では離婚訴訟が多い。離婚は破綻主義になっており、勝ち負けとい
う感じではない。訴訟の勝敗が分からないため、それなら10 年別居するとい
う人もいる。ドイツでも、離婚訴訟は敗訴者負担制度が適用されない。フラン
スでも同様である。

○ リソースの偏在のない個人間の訴訟は、敗訴者負担を導入しない範囲にしな
くてもいい。敗訴者負担を導入する範囲、しない範囲に振り分ける理由につい
ては、まず、基本的な原理を示す必要がある。実態から入ってしまうと収拾が
つかなくなる。まず、原理原則を示して、敗訴者負担制度を導入するものとし
ないものに分けた後、実態も考慮して、最初の振り分けがいいのかどうか考え
るべき。

○ 離婚の場合、訴訟の前の調停にすらたどり着けない人も多い。安心して裁判
を起こせる環境を確保する必要がある。全てが裁判で解決されるのがいいとは
思わないが、訴訟にたどり着けないケースが少なくないという現状が問題。だ
から、司法へのアクセスをよくして、気楽に裁判所に駆け込めるように検討し
ている。

○ 外国では、訴訟をしないと離婚できず、我が国のように協議離婚という制度
がない場合もあることは考慮する必要がある。人事訴訟の場合は、労働訴訟の
ように当事者間に力の差があるという理由で説明するのは難しい。何か別の方
法での説明を考える必要がある。

○ 原理をはっきりさせるべきという意見に賛成である。労働訴訟では、当事者
間にバーゲニング・パワーに差があるという考え方は一つの原理ではないか。
離婚訴訟の場合、当事者間にバーゲニング・パワーの差はないだろう。離婚は
調停前置であり、調停でまとまらなくて初めて訴訟になるが、子供をどうする
かとか慰謝料でもめるケースが多い。子供をどうするかというあたりを考える
と、公益という観点がメルクマールになりうる。

○ ドメスティック・バイオレンスの問題や薬害の問題なども検討すべき。

○ 敗訴者負担制度を導入するのは大企業間の訴訟だけでよい。

○ 公害訴訟は、事業者対個人の訴訟である。自動車事故の場合は、事業者対個
人もあれば個人対個人もある。どちらの場合もアクセスの阻害になるので敗訴
者負担を導入すべきでない。

○ 公害などの場合、事業者対個人の訴訟になる。公害、薬害、環境といった訴

訟は新しいタイプの訴訟で勝てるかどうか分からないところで提訴している。
負けたら2 人分の弁護士費用を払うことになるなら裁判にならなかった。イタ
イイタイ病、水俣病などがきっかけとなって提訴の気運が高まり、裁判に勝ち、
環境権という言葉なども出てきた。個人の救済と法創造的機能という両方の側
面がある。このような訴訟では、敗訴者負担だと裁判にならない。敗訴者負担
は導入しない事案とすべきである。

○ 交通事故の裁判になるのは、加害者が任意保険に入っていないために裁判を
起こさざるを得ないとか、過失割合、後遺症で争うケースが多い。前者では、
勝っても取れるかどうか分からない。後者は、勝つかどうか分からない。この
場合、相手が個人か事業者かで差はない。裁判を起こすかどうかというところ
で影響するのが敗訴者負担である。そういう意味では、敗訴者負担を導入すべ
きでない。

○ 交通事故の場合、原告が勝つと弁護士報酬が損害の一部として認められるの
が判例であるが、原告が負けた場合も考える必要がある。自動車保険の任意保
険で、弁護士報酬をカバーする特約が一般的になっている。交通事故を起こし
たときの法律問題については、弁護士が関与して解決するということが社会に
承認されているとすると、弁護士報酬の一部について、訴訟費用に近いものと
して扱うことが世の中に承認されるのに最も近い訴訟類型であるとも考えられ
る。公害の事件と交通事故の事件とは違う。

○ 公害、薬害訴訟は勝ってきている訴訟ではないか。提訴の際に躊躇すると
い、う話は分かるが勝訴すれば弁護士報酬を相手から取れるということになれ
ば、提訴促進になる場合もある。

○ 公害、環境、薬害は、負けが続いてやっと勝つ。環境権、眺望権、日照権は
裁判を通じて形成された。このような事件は、提訴する時に勝つかどうか分か
らないし、証拠があるのかどうかも分からない。

○ 公害訴訟は、四日市公害訴訟を初め、比較的に勝訴率が高い。敗訴者負担に
なれば、より多くの原告を集めることができたのではないか。

○ 交通事故に関して、弁護士報酬が損害の一部として判例上認められている部
分については、判例が敗訴者負担を認めているが、これを覆す必要はない。し
かし、交通事故でも、難しい事件はある。訴えを起こして負けた方に責任がな
い場合もある。今までの制度を変えるのだから、慎重でなければならない。

○ 公害では、多くの犠牲の下に裁判に勝てるようになって、法律も整備されて
きた。公害訴訟に敗訴者負担制度を導入することは考えられない。

○ 民事の普通の事件を前提とすると、勝つか負けるか分からないという事件は
少ない。公害訴訟の場合は、訴え提起の必要性、正当性があるという事情があ
る。そのような事情がなくて、勝つか負けるか分からないと言うだけでは、弁
護士報酬を負担させない十分な理由にはならない。公害訴訟では、訴え提起の
必要性、正当性がどこにあるかを検討すべき。現に被害を受けていて、誰かが
悪いことは明らかだが、証拠収集には苦労が伴う訴訟であれば、立証が十分で
なかった、被告を誤った、という結果になっても、被害の大きさ、被害がある
こと自体間違いはないという事実を考慮して、弁護士報酬を敗訴者に負担させ
ないということになる。勝つか負けるか分からないということだけではなく、
そのような状況であっても訴えを提起すべきであるという根拠を探すべき。

○ 政策形成だからという理由がよいのかどうかは慎重に考えるべきである。公
害訴訟であっても、政策形成という理由は、重要ではあるが決定的ではないの
で、取り上げるべきではない。最初に最高裁で認容判決が出た後に起こされた
訴訟のような場合は、かなり勝訴の確率は高くなっている。勝つかどうか分か
らないということを理由にしてしまうと、後発の訴訟を救うことができなくな
る。むしろ、生命・身体の被害は他の権利侵害よりも保護の必要性が高いから、
人身損害は敗訴者負担にはしない、各自負担で行くという説明になる。

○ 勝敗の見込みが提訴萎縮効につながる。もう1 つは、同じような被害者全
体に利益をもたらすので裁判を起こした人だけが敗訴者負担というのはどうか。
司法アクセスに寄与しないことが現実的な理由である。

○ 公害訴訟に関して言うと、全体として見れば、被害者側が勝訴している。た
だ、やや高めの額を請求することもあって、全額認容ではないことが多い。と
もかく、公害訴訟は勝つから敗訴者負担にしない範囲にしなくていいというこ
とにはならない。

○ 人身損害の場合は、完全な回復が必要だ。弁護士報酬が各自負担だと、その
分だけ減額され、これは問題。判例で弁護士報酬を相手から回収できる部分が
あるが、原告が勝った場合だけという一方的なもので、しかも不法行為に限ら
れている。本来、弁護士報酬を勝った方が回収するのを判例で代替している部
分もある。判例があるから各自負担でいいとは言い切れない。人身損害一般に
ついては、確かに、最初に訴えを提起する場合には勇気がいるが、因果関係な
どが解明されて勝てるようになってきても敗訴者負担でなくてよいのか。

○ 交通事故の例で、怪我をして訴えたが審理をしてみると過失がなかったとい
う場合、理不尽に訴えを起こされて勝訴したが弁護士報酬を負担しなければな
らない被告のことをどう考えるのか。

○ 公害訴訟は、事業者対個人の訴訟である。自動車事故の場合は、事業者対個
人もあれば個人対個人もある。どちらの場合もアクセスの阻害になるので敗訴
者負担を導入すべきでない。

○ 消費者契約法に事業者と消費者の定義規定があるので、事業者と消費者の間
の事件という分け方をしてはどうか。仲裁法案でもこの考え方を採用して仲裁
合意を排除できることとしている。消費者訴訟には、敗訴者負担は導入すべき
でない。提訴萎縮につながる。

○ 信販会社が立替払いをして、消費者に立替金を請求する事件の中で、被告が
詐欺にあったから払いたくないという事件は、普通の事件。このような訴訟で
被告が勝った場合に、被告は自分の弁護士報酬は取れなくていいのか。

○ 消費者が被告になる場合も沢山あるが、勝訴するとは限らない。サラ金業者
は裁判通告をし、利息制限法の問題などはあるが借金をしたこと自体は間違い
ないという弱みがある。応訴せずに支払ってしまおうということになりかねな
い。被告になる場合も考えても、敗訴者負担を導入すべきでない。

○ 構造的な力の格差があるから敗訴者負担を導入しないという理由になる。原
告であろうが、被告であろうが、役割分担にかかわらず、同じ規律でいくべき。

○ 格差が根拠になるのではないか。個人とグループ、個人と行政というように
大きなところと小さなところが戦うときは、知識や情報の差がある。大企業間
ならそのような問題はない。そういうところは両面的負担でやればいい。

○ 論拠が大切だという意見に賛成。理論上の問題もあるし、政策的な問題もあ
る。情報格差は、どちらかと言えば政策的な理由だ。理論上は、当事者間の公
平から言えば敗訴者負担もあり得るが、情報格差を考慮して導入しないという
結論もあり得る。ただし、情報格差が絶対的な理由とは言えない。情報格差を
補充するために、訴訟手続を改善するという方法もあり得るし、経済力の差に
は、法律扶助という制度がある。他の周辺的な制度で補充するということもあ
る。周辺的な制度も考慮して結論を出すべき。

○ 裁判に臨む際に、理想としては、当事者間に格差がないのがよいが、現実に
は格差がある。格差を少なくするために、法律の専門家がいる。裁判の理想型
を考える中で、格差をどのように認めるのか。格差がないところで裁判を受け
る権利があって、格差をなくすために必要な資源として弁護士が必要不可欠に
なってきているのが現状。格差についても、どのような格差なのかを厳密に議
論すべき。

○ 格差は個人間でもある。お金持ちもいれば、そうでない人もいる。情報だけ
ではなくて、立場の違いなどもある。

○ 今の裁判は理想型ではない。格差のないところで裁判を受けるということ自
体がそうではない。格差は、弁護士だけでは埋めることができない。制度的な
ものが必要である。証拠開示が必要である。証拠の偏在の問題もある。格差の
あるところに裁判が始まる。色々な制度保障が必要だが、それがないところで
どうするかという問題で、理論的にはどちらも成り立つ。弁護士費用を誰が負
担するのかは、政策の問題だ。政策の問題として考えると、今、弁護士報酬の
敗訴者負担を導入するのは問題で、司法へのアクセスの拡充と言われているこ
とも考えるべき。

○ 消費者には情報がない。景表法が少し踏み出せるかどうかというのが現状。

○ 情報格差を理由にするのはどうか。情報格差は、周辺の制度で対応できる。
社会的なリソースの差が理由になり得る。リソースの違いが、消費者契約法の
採用している考え方。動員できるリソースの違いがあるから各自負担の方がい
いということになる。アメリカ型のディスカバリーが導入されれば、情報格差
はほとんどなくなってしまうだろうが、それでも、弁護士報酬の負担について
は、別の問題として考えるべき。

○ 消費者訴訟では、消費者が訴える例は少なく、業者が訴える例が多い。訴
えられた消費者が勝訴して、業者にお金を払わなくて済んだものの、自分が依
頼した弁護士への報酬の支払が残ってしまうのは気の毒。

○ 消費者が原告となる訴訟も増えている。先物取引、原野商法など、敗訴が続
いたものも法創造につながった。訪問販売法などの取締法規は後からできたこ
とを考えると、各自負担がよい。

○ アメリカには片面的敗訴者負担の制度がある。いろいろな負担の在り方が
あっていい。

○ 片面的敗訴者負担制度は合理性がない。被告の弁護士の役割は重要であり、
敗訴者負担制度の導入か、現在のままかのどちらかになる。原告に資力がない
場合は、法律扶助の問題。弁護士報酬を訴訟に必要な費用と認めて当事者間で
負担するという問題は、対立当事者間の利害調整の問題である。そういう場面
に、公益性という理由を持ち出して良いのか疑問。敗訴者負担制度を前提とす
ると、本来、勝訴者は敗訴者から弁護士報酬を回収できるのに、公益的訴訟で
あるという理由で回収ができないのは説明がつかない。勝訴者に、公益のため
にあなたは犠牲になりなさいと言っているのと同じ。本来は外部財源の問題と
位置付けるべきであって、当事者の利害調整の問題の中で解決するのはかなり
難しい。公益だからという理由で、勝訴当事者の権利が奪われるのは、理由説
明が難しい。

○ 当事者が対等とは言えないことを考慮すべき。萎縮するのは困窮者である。
資力のある者、国、地方公共団体には、萎縮的効果は考えられない。イギリス
では、公益的訴訟の費用を公共財で負担する制度がある。アメリカは、法律扶
助が貧弱なので、片面的敗訴者負担という負担制度を設けたのだろう。

○ 外国の例では、当事者双方に敗訴者負担制度が適用される場合と、当事者一
方にのみ敗訴者負担制度が適用される場合とがある。実際にこういう制度がど
う機能しているか調べるのもいい。

○ アメリカは、日本と同じく弁護士報酬は各自負担が原則であり、参考になる。
PL 訴訟では、原告である消費者が証拠を集めるのが難しく、こういう分野で
は片面的敗訴者負担制度を導入を検討したい。

○ 行政・企業と個人とでは力に差があるので、敗訴者負担制度を導入すること
が公正とは言えない。シック・ハウス症候群の例では、敗訴しても訴え続けた
人達がいたおかげでルールが作られるようになった。個別的に検討し、分野に
よっては片面的敗訴者負担制度の導入が検討されてもよい。

○ 司法制度改革審議会意見では、弁護士は社会生活上の医師になることが期
待されている。被告側も、社会生活上の医師である弁護士へのアクセスを必要
としている。弁護士報酬の負担という問題を考える際の基本的な原理は公平で
ある。したがって、弁護士報酬の負担は、各自負担か敗訴者負担にすべきであっ
て、片面的敗訴者負担制度は公平ではない。

○ 行政訴訟などでの片面的敗訴者負担制度を検討すべきである。

○ 行政の情報開示、国民からの意見聴取も不十分で、行政訴訟になる種がま
かれている。行政訴訟では、片面的敗訴者負担制度にすべきである。

○ 片面的敗訴者負担制度の制度にするには、それなりのべースが必要である。

○ 敗訴者負担制度を入れるとすれば、片面的敗訴者負担制度を入れるべき。
全部に入れるということではなくて、一定の分野でということである。

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第3 敗訴者に負担させるべき額の定め方

○ 敗訴した当事者の与り知らないところで契約で決まる弁護士報酬の全額を敗
訴の当事者の負担とするのは合理的ではないので、敗訴者に負担させるべき額
としては、何らかの客観的な基準でその上限を画していくべき。上限を画すだ
けで、裁量に委ねるのか、固定額にするのかは課題である。

○ 敗訴者が負担すべき額の定め方は、合理的で予測可能な、しかも訴訟提起を
抑止させない額の定め方はどうすべきかという視点で議論してはどうか。外国
では敗訴者負担制度が採用されているために訴訟提起が抑制されているという
が、外国で敗訴者の負担とされる弁護士報酬の額は、タイム・チャージで決め
られているなど予測可能性の点で問題がある側面がある。司法制度改革審議会
意見で言われている敗訴者負担制度は、外国の例にある制度とはその点で異な
る。

○ 合理的な額が重要だが、今後、弁護士報酬は多様化する。法律扶助協会の支
出基準もどうなるか分からない。

○ 現在でも、弁護士報酬の額はかなりバラバラで、今後も、弁護士報酬の額が
一定の額に集約されることはないだろう。割り切って考える必要がある。

○ 敗訴者に負担させるべき額の定め方について、上限額を定めてその範囲内
で、裁判所が決めるという考え方があるがこれは予測可能性の点で問題があろ
う。この訴訟の目的の価額又は請求認容額を基礎として定める一定の割合とす
る考え方がよい。法律扶助協会の支出基準による着手金の額が、額の定め方の
上で参考になる。控え目な額を設定すべきだ。

○ 上限額を定めてその範囲内で裁判所が決めるという方法に問題があるとの意
見に賛成。訴額を基準に考えるのがよい。

○ 訴額を基準にすべきという意見に賛成。法律扶助協会の支出基準によると、
金銭請求事件の着手金の上限は22 万円とされているが、敗訴者に負担させる
額の上限をこの額にするのかどうかは、検討の必要がある。

○ 敗訴者に負担させる額については常識的なところで上限を設けた方がいい。
法律扶助協会の支出基準のうち、金銭請求事件の着手金の上限額である22 万
円を上限にしていい。また、全てを裁判所の裁量で決めるのはともかく、裁量
の余地は若干残した方がいい。

○ 一部勝訴の場合、訴訟費用の負担割合は認容額の割合と比例する傾向が強
いが、常に比例するというわけではない。事案に応じて柔軟な対応ができる制
度になっている。認容額が請求額の5 割に満たない場合でも、訴訟費用は全額
被告の負担とされる場合もある。仮に、弁護士報酬を訴訟費用のように扱うと
して、一部勝訴の場合にどうすべきかは、検討すべき問題だ。

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第4 訴訟救助、法律扶助など他の制度との関連

○ 負ける確率の方が高いが将来の役に立つことを考えて訴訟をするべきだと
いう類型の訴訟としてどのような訴訟があるのか、考えていかなければならな
いが、個別の実体法で考えていくべきなのか、難しい問題。法律扶助とも密接
に関連する。

○ 司法制度改革審議会意見では、弁護士報酬という言葉が使われているが、
有償の訴訟代理は弁護士以外にも広がっており、弁護士に限定するのか、広く
有償の訴訟代理人一般に広げるのかも検討すべき。

○ 訴訟保険の検討も重要。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担制度が導入されているドイツでは、団体訴訟の権
利も認められ、法律扶助が充実し、行政訴訟では片面的な敗訴者負担制度が導
入されている。事件の背景事情に対してきめ細かに対応できる環境を整備しな
いまま敗訴者負担を導入すると問題が出てくる。法律は、かかわる人たちがお
互いに共同作業をして問題点が明らかになる。片方の大きな力だけでは完全に
解決はできない。まず、きめ細かな環境整備が必要。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入はしない方がいい。現状では、法律扶
助制度が十分機能していないし、訴訟費用保険も不十分である。また、日本で
は、濫訴が多くて困っているという事情はない。このような状況の下で導入す
ると大きな社会的弊害を生む。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担制度に反対する人の中には、現在この制度を導入
するのは時期尚早であると説明する人が多いが、いつになったら導入していい
ことになるのかよく分からない。敗訴者が敗訴した段階で勝訴者のある部分を
負担するのが正当であるという議論は今は正当でなく、将来のある時点以降は
正当になるという理屈が分からない。今と将来のある時点とで180 度方針が変
わるような印象。そのような連続性のない説明が行われている。

○ 国民一人一人を大切にしていくには、団体訴訟が認められていたり、個人
がアクセスしやすい状況ができているのが基本。国や大企業を相手に訴訟をす
る場合、情報が一方に偏在している。これをそのままにしていては、法は成り
立たない。司法に敗訴者負担は似合わない。そもそも、裁判は勝ち負けを決め
る場ではない。

○ ヨーロッパ諸国の多くは、公平の理念から弁護士報酬の敗訴者負担原則を
採用している。もっとも、いかなる事件もそれでうまくいっているわけではな
く、問題点も指摘されている。特に、大規模な被害であって原因究明が困難な
薬害訴訟や公害訴訟のようなものや政策形成訴訟については議論がある。この
ような問題提起を受けて、法律扶助を優先的にするとか訴訟費用保険でカバー
すべきだという議論もされている。敗訴者負担か各自負担かという割り切りで
解決できる問題ではない。

○ 司法制度改革審議会意見では、「訴訟を利用しやすくする見地」とあるの
で、訴訟を利用しやすくする観点を基本に考えていくべきだ。当事者の経済力
の差や、証拠の偏在といった事情も考慮されるべきだし、法律扶助、訴訟費用
保険等の関連する制度も考えるべきだ。

○ 医療過誤という特殊な分野だからかもしれないが、フロリダでは、1 度敗
訴者負担制度が導入されたものの、問題があるということで制度を廃止したと
いう話もあり、イギリスでは、敗訴者負担制度があるために、経済的に優位に
ある者が有利に和解を進めるという問題もある。どちらが弁護士報酬を負担す
るかで紛争になり、上訴になるケースもある。フランスやドイツでは、敗訴者
負担制度が導入されているものの弊害を緩和する措置がある。弊害や片面的敗
訴者負担制度などの世界の動向にも目を配って、慎重にやっていかないといけ
ない。今回の目的は、国民一般の司法へのアクセスを推進することであって、
法律の専門的知識を持っている人だけのアクセスを推進することではない。国
民一般に使い勝手のいい制度になる必要。

○ 司法へのアクセスを拡充するための検討をする点ではコンセンサスができ
ている。問題は、弁護士報酬の負担の在り方について、どういう制度にしたら
司法へのアクセスが拡充されるかである。諸外国にはいろいろな制度があるが、
どういう司法制度か、弁護士がどういう訴訟活動をしているか、といった要素
によっても影響を受ける。我が国においてどうなのかを具体的事例に則して考
えないといけない。一般化して議論できる問題ではない。不都合な点をどう解
決するかを議論することも考えられる。

○ 法律扶助のような例では、訴訟に勝った場合に弁護士報酬の一部を相手か
ら取れるというのは、大きな意味を持つ。

○ 法律扶助の対象は、勝訴の見込みがないとは言えないという要件である。
弁護士報酬の敗訴者負担が入ると、勝つ見込みのある事件に絞って扶助するこ
とになりかねない。

○ 民訴費用制度等研究会の報告では、弁護士報酬の敗訴者負担制度は、イン
フラが整った段階で本格的検討が行われるべきだという趣旨のことが書かれて
いる。現在、インフラは整っているか。現状は変わっていない。法の支配とい
う観点から考える必要がある。裁判所は、国民にとって身近な存在ではない。
裁判所には法解釈を通じて法秩序を創造する役割も期待されているが、後ろ向
きの判断が多い。権利保護保険の発達も十分でない。慎重な検討が必要だ。

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第5 弁護士報酬の負担の在り方

○ 敗訴者負担制度は、いろいろな立場の人の意見を聴いて慎重に検討しない
と決められない問題である。他の店が原価を割るような値段で商品を売るため、
経営が苦しくなっている中小企業の人の話を聞いたことがある。独占禁止法上
の差止請求をしようと思っても、多額の担保提供が必要となる。資料を集めよ
うと思っても、企業秘密でできない。裁判を起そうにもお金がない。儲けてい
る人を困らせようと思って差止請求をする場合は問題だが、そういう意図が無
くて生活に関わる問題を抱え、お金も情報もなく、その上相手の弁護士報酬の
一部の負担まではとてもという話である。法秩序を形成するための裁判を萎縮
させるのは社会の発展には良くない。いろいろな人の意見を聴くためにヒアリ
ングをしてはどうか。

○ 敗訴者負担制度についての国民の理解に関連して、幅広く意見を集めたい。

○ 委員を通じて国民の意見を検討会に伝える方法もあるが、不正確に伝えては
いけないし、面識のある方の範囲にも限界があるので、ヒアリングをしてはど
うか。社会保障の問題で意見のある方、医療過誤訴訟に関係した人、環境問題
に取り組んでいる方、消費者など多様な方が考えられる。もちろん、裁判を起
す前に、お金がかかるということでやめてしまった方もいるだろう。

○ 検討会の席上にいろいろな意見が配布され、そういう形で意見をいただいて
いる。文書で直接的に意見をいただくことは可能だ。

○ 倒産法、会社法など、利害関係者がはっきりしている法律の場合は利害関係
者に意見を聴きやすいが、利用者が特定の方に限られず、国民全体が潜在的利
用者である民事訴訟について法改正をする場合、特定の方をピックアップして
意見をいただくという方法はとりにくい。この検討会には様々な立場の方が委
員として参加しておられるので,各委員に様々な分野からの声を検討会に伝え
るパイプ役になっていただいてはどうか。

○ 消費者問題については、裁判が利用者の期待に応えていない。製造物責任、
医療過誤、薬害、商工ローン、労働問題その他いろいろな訴訟を起こしたり、
起こそうと考えている人の話を聞いてみると、敗訴者負担が導入されるとどう
なるかわからないと悲鳴をあげている。多くの人の痛みを実際に感じていく必
要がある。諸外国には導入している例もあるが、諸外国の現状がどうなってい
るか最近調査された専門家の生の声を聞いてみたい。この問題は、いろいろな
人の声をしっかり聞くことが大事。

○ 全ての消費者が弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入することに反対してい
るわけではない。

○ 苦しい問題を抱えて裁判を起こしている人や裁判を起こそうとしている人
の話を聞いたが、敗訴者負担が導入されたら大変なことになると言っている。
そういう声に耳を傾ける必要がある。

○ 敗訴者負担があれば裁判を起こしたいという人は組織化されにくいので情
報が流れてこないことを、認識しておくべき。敗訴者負担を導入した方がいい
という人は、他にもたくさんいるはずである。特に、企業間の訴訟を考えれば、
公平負担は当然。請求としておよそ理由がない事例で訴えられた方が組織を作っ
て世の中に意見を述べることは考えられない。しかし、こういう事例では、訴
えられた方は勝訴しても何も得るところはなく、弁護士に事件を依頼していれ
ば弁護士報酬を支払わなければならない。こういう立場の人の意見を引き出す
のは難しい。

○ 事務局には弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入に賛成する意見は来ていな
いそうである。裁判官ネットワークのホーム・ページを見ていたら、弁護士報
酬の敗訴者負担制度が導入されたら困るという意見が1 つ書き込まれていた。
書き込みをしたのは精神的な病気を患ったことのある方のようである。このよ
うな権利を侵害されやすい立場の人達のことを考えないといけない。

○ 弁護士報酬の敗訴者負担については様々な意見があるが、意見が分かれる
のは、それぞれの人の実体験が異なるからだろう。

○ 敗訴者負担制度の導入に反対の人が、負けた場合は億単位の額を負担をさ
せられると言っているのを聞いた。そんな大きな額の負担になるとは思わない。

○ 敗訴者負担に賛成の意見も反対の意見もあっていい。しかし、この国の裁
判の骨格を議論するときには、敗訴者負担に反対の意見も汲み取っていかなけ
ればならない。

○ 敗訴者負担に反対の立場の方の意見を聴くと、現状肯定であり、現状より
後退になる敗訴者負担制度には異議があるという意見が大半である。

○ 現状でよい。明治の民事訴訟法制定以来やってきた。司法制度改革審議会
意見で指摘されている、弁護士への報酬を理由に訴訟を回避する人も聞いたこ
とはないし、アンケート調査でも、80 パーセント以上の人がそうではないと
いう結果だった。

○ 今までこの制度でやってきたし、原告がそれを理由に諦めることはないと
いうことか。現在の裁判での弁護士への報酬の位置付けをベースに議論してい
るのか。

○ 勝敗とかお金とかではなく、トラブルをはっきりさせてほしいということ
で裁判が起こされている。イギリスでは、ハイ・コートという上級裁判所では
敗訴者負担で、カウンティー・コートでは各自負担。経済活動をしている人と
そうでない人の考え方は違う。普通に生活している人の感覚を捉えるべき。