2003年12月25日

横浜市立大学でも役所が踏み絵を用意

8月に、東京都の役所が、石原都知事の改革案に協力することを約束する文書への署名を各教員に個別に要求した。同じことを横浜市が市立大学で行った。都立大学の場合は全学で問題となり学長が抗議し、ほぼ全員がボイコットしたが、横浜市立大学では学長が役所に取り込まれてしまっているので心配であるが、12月17日に教職員組合が警告し、学長に要望書を出している。

以下は、横浜市立大学教員有志から横浜市大学改革推進本部本部長への緊急抗議声明(2003.12.23)

緊急抗議声明

横浜市大学改革推進本部
本部長 前田正子殿
2003年12月23日
横浜市立大学教員有志

 去る12月17日、貴職は「市立大学教員の皆様へ」と題する文書を私どもに直接配布されました。その文書には大学が市に対して提出した「横浜市立大学の新たな大学像について(以下、大学像と略)」とこれを受けて市が発表した「市立大学改革案に対する設置者の基本的な考え方」に沿って新しい大学づくりに参加・協力する教員を募集する旨が記載されています。しかしながら、この文書の意図するところには、憲法に保障された学問の自由と基本的人権の観点から看過できない重大な問題が含まれています。

 まず第一にこの文書は、これからの大学における教育・研究の内容を大学自身ではなく外部組織である設置者が決定するということを公言しているという点です。これは憲法で保障された「学問の自由」と、それを担保する「大学の自治」を根底から否定するものであると言わざるを得ません。

 第二に、この文書が持つ「踏み絵」的性格です。文書では12月24日までに参加・協力を申し出ること、また、期限後についても随時受けつけることとし、10名程度からなる「プロジェクト部会」のメンバーに採用された者の名前以外の応募者の名前は公表しないとしています。これは、これからの大学づくりを「大学像」に賛成するものとそうでない者とを選別することにより、賛成するもののみにより、市主導で大学の研究教育の内容を決定しようとするものです。多くの人から、そして、直接の現場である現教員から広く意見を聞くことがよい大学を作るために必要なことは、7月に大学主催で行われたシンポジウムで清成法政大学理事長が強調したことでした。また、各教授会の決議等で示されているように、市大教員の大部分は新たな大学像に反対の意見を持っています。一方で、これからの大学改革に向けては自分の経験や専門知識を生かしたいと考えています。教員個人個人に取って、この文書はまさに”踏み絵”です。

私たちは横浜市立大学を心から愛し、今大学が置かれている現状を憂い、よりよい大学ができることを真に望むものです。改革自体に反対し、現状を維持すればそれでよい、と考えているものでは決してありません。大学を愛すればこそ貴職が示された民主主義の原則に反するやり方に断固反対するものです。

即刻、「コース案等検討プロジェクト部会参加者申し込み書」を白紙撤回することを要求します。

 大学構成員一人一人の意見を尊重し、市民に対しても白日晴天のもとで大学改革が行われるのであれば、私たちは改革の主体としてその努力をいささかも惜しむものでないことを申し添えます。


横浜市立大学学長 小川恵一殿
2003年12月24日
横浜市立大学教員組合
執行委員長 藤山嘉夫

小川学長は、大学の自主性・自立性を守るべく、態度を今こそ鮮明にすべきである
 
12月17日、横浜市大学改革推進本部は「市立大学教員の皆様へ」を教員に配布した。横浜市の横浜市立大学改革推進本部に「コース案等検討プロジェクト部会」を設置し、これに教員が参加することを呼びかけ、「参加申込書」を添付している。「部会」員の構成の内3名は学長推薦とし、また、大学改革推進本部が選考する「公募」4名程度については、選考にあたっては学長の意見を聞くものとされている。このような形での学長の関与を前提とする「プロジェクト部会」の設置にもかかわらず、学長が評議会において「今日初めて聞いた」と発言しているように、学長への事前相談もないままに17日の評議会でこのことが報告された。このような推進本部のやり方自体が、行政権力が大学の自立性を不当に侵害・介入する異常な事態である。学長は、このような不当な介入に対して即刻に抗議すべき立場にあるにも拘わらず、この点を曖昧にしていることは極めて遺憾である。

また、「プロジェクト部会」が案を作りそれを「横浜市としての意志決定を行ないます」としていることは、本来大学が自主的自立的に具体化すべき教育・研究の構想を、学外の設置者が決定することになる。これは、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行なわれるべきものである」とする教育基本法第10条に違反する。文部科学省が、法人化に際しては「大学の教育・研究の自主性を配慮しているかを、細に渡って聴取する」とし、「大学の自主性・自律性に十分に配慮されておらず、また、大学関係者と合意を得られずに地方公共団体から一方的に申請されたものであれば認可できない。審議された経過についても、聴取したい」(全大教と文部科学省との公立大学法人化問題での会見。2003年11月13日)としているのもこのことを根拠としている。

さらに、「参加申込書」には、「平成15年12月1日発表の『市立大学改革案に対する設置者の基本的な考え方』に沿って、新しい大学づくりに参加・協力します」と記されている。「申込」に際してこのような前提を立てることは、「設置者の基本的な考え方」についての<踏み絵>を教員に対して設定するものとなっている。本「参加申込書」は大学のあり方を根底から破壊する異常な性格のものである。

さらに注意したいことは、「横浜市大学改革推進本部 コース案等検討プロジェクト部会設置要領(要旨)」があくまでも「要旨」であり、「設置要領」自体は公表されていないことである。従って、「要旨」には記載されずに「設置要領」には記載されているはずの内容が全く知らされていないのである。何を課題とするいかなる組織形態であるかを詳細に明確にせぬままに教員に参加を求め、このような組織で改革案の具体化を進めることは、あらゆる恣意的な案の具体化が可能となる余地がある。このことが杞憂ではないであろうことは以下のことからも明確であろう。1)「コース案等検討プロジェクト」とされていてこの「等」の示す内容がいかようにも解釈されうる余地を残している。2)さらにまた、「設置要領(要旨)」の「2 検討内容及び検討体制」においては「国際総合科学部(仮称)を構成するコースや大学院の専攻、コース、文系博士後期課程などについて検討を行ないます」とされているにも拘わらず、「参加申込書」を含む関連書類が医学部、看護短期大学部の教員にも配布されていること。3)「設置要領」それ自体を公表しないいかなる理由がないであろうにも拘わらず、これが公表されていない事実こそその意図が詮索されざるを得ない根拠である。このような不明瞭な組織への教員の参加を求めること自体きわめて不当である。

都立大学総長の茂木俊彦氏は、日本の大学の歴史に後世語り継がれるであろう歴史的文書において次のように述べている。「教員組織は、単に抽象化された員数の集団にすぎないのではない。それは、憲法・教育基本法をはじめとする関係法規に従い、学生ないし都民に対し直接に責任を負って大学教育サービスを提供することを責務とする主体の集団であり、また長年にわたって研究を推進し、今後それをさらに発展させようとする主体の集団である。それゆえ既存大学からの移行、新大学設置を実りあるものにするには、教員がその基本構想の策定から詳細設計にいたるまで、その知識と経験を生かし、自らの責任を自覚しつつ、自由に意見を述べる機会が保障されなければならない」(「大学設置準備体制の速やかな再構築を求める」2003年10月7日)。このように述べて茂木氏は、都の大学管理本部が詳細設計への教員の参加を求めた「同意書」の撤回を管理本部に対して毅然として要求している。

このような態度こそが、今こそ小川学長に求められる大学人としての歴史的な責務であると考える。具体的に以下の事項を小川学長に要望する。

1 横浜市大学改革推進本部に対して「プロジェクト部会設置要領」「プロジェクト部会設置要項(要旨)」「市立大学教員の皆様へ」「参加申込書」の撤回を直ちに要請すること。

2 横浜市大学改革推進本に対して「コース案等検討プロジェクト部会設置要領」そのものの公開を要求すること。

3 「プロジェクト部会」の部会員について、学長の推薦を行なわないこと。

4 「参加申込書」を提出した教員と提出しない教員を不当に差別的な処遇をしないこと。

5 コースやカリキュラム案に関する学内組織を直ちに立ち上げてその具体化を急ぐこと。

6 コースやカリキュラム案の具体化にあたっては、現職の全教員がきちんと位置づけられるように設定すること。

 

tjst |12月25日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000404.html |不当な支配に直面する横浜市立大学
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