==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
加藤紘一氏講演会へのコメント 2000.1.18

加藤紘一氏講演会へのコメント

辻下 徹(理学研究科)
==> 講演のリライト(2000.10.15)
1996年から5カ年の17兆円の政府研究開発投資計画により、ブレークスルーが確かにあったという。しかし、重要な点は、億単位の研究費によってブレークスルーが生まれたのではなく、貧弱ではあるが経常研究費によって長年に亘って、曖昧模糊としたアイディアを育んできたからこそ、多額な研究費を生かせてブレークスルーが可能となったのだ、と複数の研究者が証言していることだ。

政府が現在目指しているように、経常的研究費をなくし競争的研究費へ全移行するようなことをしてしまえば、決まったことを人海戦術でやるような研究は確かに伸びるだろうが、ブレークスルーなど生まれるとは思えない。経常研究費をなくす政策は、生活を賭して競争する環境を作れば研究効率が上がるという素朴な発想から来る誤策であり、夢を育くみ冒険を可能にする安定した研究空間を滅ぼし「科学技術立国」なるものすら空洞化させてしまうものでしかない。

なお、もう一点補足させてもらうと、(闘技場的意味での)競争的環境への耐性と、研究者としての卓越性とは、人間的な素質としては独立している(どころか私の観察では負の相関さえある)ので、独立行政法人化は、研究者を闘技場的環境への耐性力でまず篩いにかけ、その後で研究能力で篩いにかけるという、損な政策であると言える。 政財界諸氏は目を醒ましてほしい。