[amp 08-06-17] 一般理事会の延期、他

Date: Tue, 17 Jun 2008

立命館学園教職員のみなさま

  先週土曜日の一般理事会と評議員会は延期[1]され、予定されてい
  た記者会見も中止されたそうですが、同日に朝日[2]は「数年がか
  りの経費節減で賄い、学費値上げや学部新設延期などの対応は取
  らない」「近く全学的なプロジェクトチームを設置し、秋までに
  具体的な経費節減計画をまとめる」という「関係者」の方針を伝
  えています。常任理事会で議論されたことではないようですので、
  幹部周辺が考えている対策と推測されますが、今回の「補助金カッ
  ト」が、学校法人としてあるまじき学園運営に対する行政処分で
  あったという認識が感じられない対策です。

 少なくとも40億円は必要という学部新設は予定通り行うという
  ことですから、補助金カットによる穴を埋めるために削減を計画
  している「経費」は経常的経費となることが予測されます。「経
  常費補助金」が削減されたから経常費を削減する、というお得意
  の強弁が連想されますが、経常費補助金を事業展開に充当してき
  た以上、経常的経費の削減は許されないことで、事業展開予算を
  まず削減しなければなりません。そのためには、学内合意が得ら
  れないまま常任理事会の「責任」で一昨年に強引に策定した「中
  期計画」を白紙に戻し、経営優先教学軽視という烙印が消えるま
  で新規事業は凍結すること以外の選択肢はないようです。それだ
  けでなく、経営サイドの暴走への歯止めとなる具体的制度を導入
  し、また、今回のような逸脱が再発しないよう、教学的見地から
  の十分な検討の機会を担保するシステムを導入し、経営と教学の
  バランスを適正なものに戻す姿勢を学内外に鮮明に示すことが学
  園の急務です。現幹部にその意思があるとは全く感じられない朝
  日の記事[2]が正しいのであれば、その意思を持つ新しい幹部を持
  たなければ先はない、といえるほどの学園危機と感じられます。

  先週の常任理事会で、ある幹部から、いまの立命の財政規模では
  15億円程度の損失で引責辞職などありえない、という趣旨の発
  言があったことが伝わっています。「たかが15億円」という考
  えには、現在の立命幹部の気質と意識の危うさが余すところなく
  露呈されているように感じられます。この十数年の学園規模拡大
  過程では覇気のようなものとしてポジティブに機能した可能性も
  あると認めつつも、そのような気質や意識の下で、現在の学園規
  模に求められる品格が形成できるのかどうか。これまで先延ばし
  にしてきた、一朝一夕ではできない品格形成の地味な努力を重ね
  ることを通してしか、今回の件、そしてこの2−3年の諸々の事
  件で失なった地を回復することはできないと思います。

  今週は衣笠では法学部と国際関係学部で臨時教授会、BKCでは理工
  学部教員会議(旧教授会)、生命科学・薬学部合同教員会議が開
  催されます。検証委員会報告で欠如している3月26日前後の事
  実経過、特に(この件について相談役が直接指図していたと伝え
  聞く)常務会[6]や常任理事会でどういう議論があったか等、転籍
  募集延長の判断はどこが行ったか等について各学部長から事実確
  認することが最低限必要なのではないでしょうか。

  事後承諾とはいえ教授会の責任も社会的には当然問われる[5]ので、
  上のような事実確認をふまえて、学外からの批判にどう答えるか
  も各教授会は審議すべきように思います。

  入試や転籍の公平性等の重大な教学的問題点は、教授会による十
  分な吟味の機会があれば検出できた可能性が高いと思います。今
  後は、常任理事会で決定し教授会で事後承認する、というプロセ
  スは一切認めない決意を各教授会が表明することがまず必要と感
  じます。

  その上で、さらに、教学機関に十分な審議の機会を与えればほぼ
  避けられた逸脱が招いた学園への有形無形の重大な損害について
  社会的常識と調和する責任を学園幹部に問うことと、同種のこと
  が今後は起こらないようにするために効果ある制度変更や政策変
  更を、教学に責任ある審議機関として発信することが求められて
  います。

目次

 1─ 京都新聞6/14:立命館、転籍問題で理事会を延期、役員
 2─  朝日6.14:立命館大「特別転籍」問題 学生向け説明会で学長謝罪へ
 3─  考える会ニュース9号 (2008.6.10) 「編集後記」より
 4─  立命館大学経済学部教授会有志声明 08.6.10
 5─ 特別転籍問題について月曜会6/16での討議の紹介
 6─ ゆにおん No51(08.6.17) :常務会体制の見直しと、人心一新を求める

 ┌1───
 │京都新聞6/14:立命館、転籍問題で理事会を延期、役員
   処分案見直しへ
   http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008061400120&genre=C4&area=K00

 「立命館大の生命科学部新入生の「特別転籍」問題で、学校法人立
   命館は14日、同日午後に予定していた理事会と評議員会の延期
   を決めた。検証委員会の報告を受けて処分と学園の今後の対応を
   決める予定だったが、法人役員の減給などの処分案を全面的に見
   直す。

   長田豊臣理事長が同日午前、開催延期を決め、関係者に通知した。
   処分と対応については、改めて常任理事会などで検討する。検証
   委員会を開く予定はないという。

   特別転籍について、検証委員会は9日に「(学生の)教学条件改
   善より私学助成金基準を優先した」「法令に基づかずに行われて
   いた」などと特別転籍の問題点を指摘する報告をまとめた。立命
   館は、常任理事会などで処分と対応を検討。長田理事長を給与5
   0%カット6カ月、川口清史総長を同4カ月などとする役員25
   人の処分案を決めた。

   処分案と報告書について、教職員と学生は「私学助成金のカット
   は理事会の重大な責任」と厳しく批判。13日に立命館大や立命
   館アジア太平洋大(大分県)などで抗議集会を開き、執行部退任
   を求める決議を行った。」

 ┌2───
 │朝日新聞08.6.14
   立命館大「特別転籍」問題 学生向け説明会で学長謝罪へ
   http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200806140056.html

  「立命館大が国からの補助金減額を心配し、入学者が大幅に多かっ
   た学部で「特別転籍」を募っていた問題で、大学は今月中にも学
   生向け説明会を開き、川口清史学長が謝罪する方針を決めた。今
   年度の補助金を25%(約15億円)カットされるが、学費値上
   げなどで学生側に転嫁しないことも伝える。

   関係者によると、補助金の減収分は、今年度に自己資金を取り崩
   すほか、数年がかりの経費節減で賄い、学費値上げや学部新設延
   期などの対応は取らない。保護者や卒業生らにも資料を送るなど
   して説明するという。近く全学的なプロジェクトチームを設置し、
   秋までに具体的な経費節減計画をまとめる。

   幹部は「15億円はとても重い額だが、大学の責任を学生に転嫁
   することはできない」と話した。」

 ┌3───
 │考える会ニュース9号 (2008.6.10) 「編集後記」より

  「(前略)6月6日(金)午前9時から部課長会議、10時45分
  から大学協議会が開催されました。

  補助金削減25%や「99年転学部マニュアル」報道(毎日新聞
  6月5日夕刊)が新聞・テレビで報道された直後にひらかれる全
  学的会議です。学園トップが教職員にどんな説明をするか注目さ
  れていました。にもかかわらず、大学協議会には、説明用の資料
  すら用意されていなかったどころか、何らの説明もなしに何事も
  なかったかのように通常議事を進めようとしていたという。大協
  委員からの質問に対し、川口総長は「今はその用意がないので、
  説明できる段階ではない」と答弁、それに対して何人かの委員か
  ら批判の声が上り、総長はしぶしぶ次回には説明したい、大協で
  も議論しますと答えざるを得なかったという。

  他方、1時間半前に開催した部課長会議には、文部科学省の報道
  発表文、総長談話と6月4・5日の新聞報道の切り抜き、「6月
  4日総長コメントをより詳しく整理した文章」などが用意され、
  肥塚副総長や関係部次長が経過説明をしたという。

  同一法人でありながら、教学の最高の機関で説明もしないで、部
  課長会議では資料まで用意して説明される。この違いは何なので
  しょうか?しかも、その午後3時過ぎにホットメール学園広報で
  「より詳しく整理した総長コメント」であったものが、大学協議
  会、常任理事会の討議にも諮られないまま、長田理事長名が追加
  され、総長との連名になって配信されました。(後略)」


 ┌4───
 │立命館大学経済学部教授会有志声明 08.6.10

  経常費補助金15億円(25%)減額という事態を招いた
   立命館首脳部の退陣を求める

   生命科学部の「特別転籍」問題に関して、文部科学省は、教学上
   の合理的な理由はなく、私学助成金の不交付を回避することが目
   的であったとする見解を示した。これを受けて日本私立学校振興・
   共済事業団は本学の管理運営が適切を欠いていたとして、私学経
   常費補助金の25%(15億円)の減額を決定した。

  今回の「特別転籍」は、教授会などの教学機関の議を経ずに常任
   理事会が決定したものであり、従って経営的判断からこの決定を
   行った常任理事会及び法人の代表である長田豊臣理事長の責任は
   極めて大きいと言わなければならない。

   また文科省は、今回の責任は立命館大学だけに止まらず法人全体
   に及ぶとして、アジア太平洋大学への補助金も含めた総額からの
   減額を行った。「法人ぐるみ」を裏付けるものとして、99年度
   の常任理事会の申し合わせも指摘されている。そうであるとすれ
   ば、この時期に法人のトップであった川本八郎前理事長の責任も
   問われなければならない。

   「特別転籍」の決定には教学機関の責任者である川口清史総長も
   深く関与している。自らも出席した3月26日の常任理事会での
   決定に従って、教学的な理由を挙げながら転籍を実行し、目標数
   に達しないとして手続きの延長まで行った責任は総長に帰される
   べきである。

   こうした責任の重大性に鑑みて、私たち経済学部教授会有志は、
   長田理事長、川本前理事長(現相談役)、川口総長のすみやかな
   退陣を求める。特に長田、川本の両氏は総額1億6千万円の「退
   任慰労金」を返還して辞職すべきである。

   また今回の事態は、数年来著しく強化されてきた理事長を頂点と
   するトップ・ダウン型ガバナンスのひとつの帰結でもある。この
   点について、今後批判的な検討を加え、全学の叡智を結集して管
   理運営の民主的かつ合理的なありかたを構想する必要がある。

   私たちは、今回の事態を克服して、「自由と清新」「平和と民主
   主義」の理念を掲げる立命館を、その理念に相応しく再生するた
   めに努力する決意である。                 

                                       2008年6月10日

┌5───
│[ml-cm-bkcmf 810] 特別転籍問題について月曜会での討議の紹介
  Date: Tue, 17 Jun 2008 12:36:30 +0900 (JST)

 「昨日夕刻に月曜会は、23回目の例会を開き、今回の「特別転籍問
   題」の責任問題について、大要つぎのような討論を行いました。
   以下は、討論のなかみを世話人の藤岡(経済学部)の文責でまと
   めたものです。参加者は10名でした。

   1)今次の「特別転籍」問題は、文部科学省の指摘にもあるよう
   に、私学助成の補助金の獲得や学部新設申請の必要などを、入学
   試験の公平さを保ち、学部教授会が判定するべき、学部生にふさ
   わしい基礎学力審査よりも優先させたものであり、あってはなら
   ないものであった。今回のような措置を放置しておくと、経済的
   寄付の額で入試の合否判定を左右させるといった事態にもつなが
   りかねないという意見も出された。

   2)今回の不祥事は、教学的配慮よりも、財政的利益のほうを優
   先し、教授会の教学権や「学びの共同体」としての大学自治のし
   くみを空洞化させようとしてきた、最近の学園トップ層の推進す
   る大学改造戦略のなかから生まれてきたものであり、このような
   路線の産物が、「反社会的行為」として、きびしく指弾されたこ
   とを重視する必要がある。

   3)学校教育法は、大学の教学権の担い手として教授会が重要な
   役割をはたすように期待していることを深く理解する必要がある。
   大学を自動車にたとえるとすると、理事会というのは、財政的利
   益を追求するという意味で「エンジン」にあたる。学部長会議や
   総長はマネーの運動を教学優先の方向へと誘導する「ハンドル」
   にあたる。それにたいして、教授会というのは、「ブレーキ」な
   いし「カーナビ装置」にあたるものである。今回の事件は、エン
   ジン部分だけを野放図に肥大化させた学園が、ハンドルやブレー
   キが適切に作動しない状態のままに暴走しつつあることを明白に
   示すこととなった。

   4)今回のような不祥事の再発を防止する最良の方策は、教授会
   の教学の権利を尊重し、発展させる立場にたつこと、学園の民主
   的な運営を回復することにある。今次の不祥事をひきおこした相
   談役・理事長・総長・常務会メンバーの総退陣を求めるとともに、
   2度とこのような事態を招かないように、この際、学園のなかで
   のハンドルやブレーキ・カーナビ装置を内実化していかねばなら
   ない。わが学園にたいする補助金が15億円も突然、削減された
   わけであるから、新学部づくりをはじめたとした「中期計画」の
   実行を当面、凍結するとともに、財政の暴走を許さず、全構成員
   の利益と教学優先の原則を確立していく必要がある。そのために
   は学部長会議の確立、総長選挙制度の改革、リコール制、評議員
   会制度や大学協議会制度の拡充強化などが求められる。

   5)他方で、教授会構成員としてのわれわれは、いかに常務会や
   財政当局の暴走があったとはいえ、教授会の場で、特別転籍制度
   を問題視し、これを廃止していくうえで、効果的な行動をとるこ
   とができなかった弱点があったことを率直に認めねばならない。
   この点での不明を社会と学生にわびるとともに、教授会に期待さ
   れている役割を果たしていくことを決意する。また会合のなかで
   は、多くの参加者から、「ブレーキ役」を十分に果たせなかった
   謝罪の意思を明確にする意味をこめて、教授会有志から自発的な
   献金を募り、学生の教学的活動を支援する基金を設立すべきだと
   いう意見が出された。こんご具体化を検討していくことにした
   い。」

┌6───
│ゆにおん No51(08.6.17) :常務会体制の見直しと、人心一新を求める
  https://j-union.com/-/rits-union/file/html/open/08unionNo51.pdf

「学部長理事を中心とする暫定常任理事会による選挙管理体制を構
  成し、学園の総意のもとに新しい指導部を選出する学園再生の運
  動を起こすことを真剣に検討するように全学に呼びかけます。」

 ーーー

 「3.「常務会」による学園運営がそもそも問題です。教学中心の
  学園運営を阻害してきた常務会体制を見直す必要があります。」

 『今回の一連の問題の処理の際に、常任理事会の前に「常務会」で
   打ち合わせがされた事実があります。これは例規にもない組織が
   実権を握っており、例規に明記された「常任理事会」の機能を損
   なうものです。ところが、例の検証委員会の事実経過の検証にお
   いては、事実上の最高の方針決定を行っている「常務会」がいつ
   何を議論し、どのような方針を決定しているか完全に隠されてお
   り、その議事録さえ示されていません。』

   (中略)

  『「改革の哲学」で川本相談役は、「社長(理事長)、支店長(学
   部長)」という「持論」を開陳しています。そのことが、今回の
   特別転籍の手続きにも、見事に現れたといえます。教授会は置い
   ているが、大学にとって「重要な事項」の審議が実質的な意味を
   持たされていない状態があれば、それは「運営の適切性を欠いて
   いる」ものであり、法令違反とさえ言えます。教授会の代表者で
   ある学部長理事が参加する常任理事会よりも、実質的な権限にお
   いて「常務会」が上に立っているならば、「常務会」が教学機関
   の「重要な審議」を阻害していると言えます。

   今日の常務会体制は、正規の規程にもなく指導者の恣意的判断で
   つくられたたもので、廃止すべきです。したがって、相談役の意
   向、理事長、総長の指名で選ばれた常務会メンバーはいったん辞
   任し、学部長理事を中心に構成される「暫定常任理事会」におい
   て新しく暫定的に作られる指導体制にその権限を委譲すべきです。』

┌───────
│¶は発信人註