[amp 08-06-13] 転籍検証委員会報告、他

立命館学園教職員のみなさま

「特別転籍に関する検証委員会」が14頁の報告書[1]をまとめまし
  た。京都新聞でも報道[1a]されましたが、7名中5名が常任理事
  (筆頭副総長を含む常務理事3名・学部長2名)で委員会開催は
  5/14,6/4,6/9 の3回のみだそうです。ヒアリング等の実地調査の
  記載はないので、記録だけに基づく「検証」のようです。

    「実施の背景」の節では「大学全体の合意または理解のなかで、
      特別転籍は実施されてきたことが認められる」とあり、「管
      理運営の観点」の節では、教授会権限を上層部に委譲すれば
      問題はなくなる、学内文書が外部に流れたことは問題だ、と
      いう趣旨のことも記載されています。

 今週の教授会では、法・文・産社・国関・経済・経営の各学部で
  議論され意見表明の準備が進んでいるようですが、文学部では
  「文学部教員団一同」の名で、ほぼ全教員による声明がすでに出
  され、学園幹部が自ら出処進退を明らかにすべき、ということも
  要求しています[1b]。組合主催の本日の春闘決起集会[2]では、諸
  学部の教員声明等が紹介されるようです。

  明日6/14(土曜)は一般理事会と臨時評議員会が開催されます。
  幹部減給処分の「推測」が昨日報道されましたが、流動的です。
  http://university.main.jp/blog6/archives/2008/06/post_188.html
  今回の問題では、学園のバックボーンとなっている「株式会社」
  路線と決別する意思を立命館が社会に対し明確に表明できるかど
  うか、が注視されているように思います。処分問題も、今学内外
  で求められている路線変更の決意表明の文脈の中に明確に位置づ
  けられなければ、処分はしたが何も変わらない、ということにな
  りかねません。

 ゆにおん[2a]によれば2006年度の基本金組み入れ額は111 億円だ
  そうで、06年度の補助金86億円を上まわっています。「補助金が
  そっくり余剰額となって、法人の蓄積基金に回るようになってい
  る」ということになります。補助金制度の主要な趣旨ともいえる
  学費軽減は無視され、事業展開のみに補助金が振り向けられてき
  たことになります。経常費補助金25%+施設設備関係補助金全額
  (総計約20億円)のカットは学費値下げへの可能性を一時的には
  狭めるものですが、補助金を学費値下げに割く考えがない学園幹
  部と、結果的にはそれを容認してきたことになる「立命社会」に
  とって猛省の機会とも言えます。

  数日前に発行された、立命館の民主主義を考える会第二回フォー
  ラムの記録[4]では、「株式会社」路線を走るに到った経緯の一端
  が明らかにされていると同時に、学校法人にふさわし方向への軌
  道修正に必要な種々の知見が提示されています。井上純一氏(元
  学生担当常務理事)は、職員のみに配布されたという相談役の
  「改革の哲学」(総務部発行)で語られている「哲学」を分析し、
  「株式会社」路線と決別する方向性と、それを現実とするのに不
  可欠な制度変更(理事長のリコール制導入など)を提示されてい
  ます。

┌───
│目次

  1─ 特別転籍に関する検証委員会報告 2008.6.9(月)

  2─ 春闘決起集会 08.6.13(金)19時より

  3─ 文科省報道発表 08.6.4

  4─ 立命館の民主主義を考える会 第2回フォーラム(08.4.12)報告集より
    井上純一氏(元学生担当常務理事)「哲学」が語れても哲学は語れない

 ┌1───
 │特別転籍に関する検証委員会報告 2008.6.9
   https://j-union.com/-/rits-union/file/html/open/kensyo-report.pdf

   ──1a──
   京都新聞 08/6/12 助成金交付を優先 立命大転籍 教授会の審議不十分
   http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080612-00000000-kyt-l26

 「立命館大が生命科学部の新入生に他学部への「特別転籍」を募集
   した問題で、学校法人立命館が設置した検証委員会の報告書骨子
   が11日、明らかになった。「(学生の)教学条件改善より私学
   助成金基準を優先した」と問題点を指摘しているが、「法人執行
   部の責任が明確でない」と教職員から強い批判が出ている。

   立命館は14日に臨時理事会を開き、検証委員会の報告を受け、
   法人としての見解と責任者の処分を決める。立命館教職員組合は
   「検証が不十分」などとして、13日に京都や滋賀など全国5カ
   所で集会を開き、執行部の責任を追及する。

   報告書骨子は大学の教授会で10日に報告された。転籍募集の動
   機を「(新学部などの)設置認可申請の障害を避け、私学助成金
   の不交付を回避することにあった」と断定。「入学試験の透明性・
   公平性から問題」などとし、転籍募集に当たり教授会での審議が
   不十分だった点などについては、法令などにのっとっていないと
   も指摘した。

   また、「立命館大学が置かれた社会的立場からして厳しく責めら
   れるべき」としたが、転籍募集を執行部がどのような場で検討し、
   誰が責任を負うべきかには触れていない。

   教学担当の中村正・常務理事は「報告書全文では、執行部がどう
   判断していたか明記している。14日の見解発表だけにとどめず、
   特に学生などへの責任については今後、教授会でオープンに議論
   する」としている。

   委員会は委員長の広島大教授、弁護士のほか、法人副総長、大学
   学部長ら5人の計7人で構成。転籍募集にかかわった執行部が含
   まれ、「公正な検証がなされていない」との批判も出ている。」

   ──1b──
   文学部教員団一同「特別転籍問題等に関する声明」08.6.10 より
   https://j-union.com/-/rits-union/file/html/open/ketsugi-lt.pdf

(¶一部のみ転載)

  「文学部では、6 月10 日の教授会冒頭において、標記の件に関し
   て、学部長の報告を受け、最優先課題として1 時間程度集中論議
   を行った。更に、教授会終了後、教員団集会を引き続き開催し、
   30 分程度の継続論議を経て、全会一致により文学部教員団声明
   の採択に至った。なお、参加した教員は69 名であった。」

 「今回の事態は、「故意または重大な過失により、法人に損害を
   与えたとき」「法人の名誉または信用を著しく傷つけたとき」
   「職務上の義務に著しく違反したとき」という懲戒事由に明らか
   に該当する。これは、現在の学校法人立命館寄附行為に定める解
   任事由にも該当する。よって、学校法人理事者のトップに立つ理
   事長、総長、相談役は、自ら出処進退を明らかにすべきである。」



 ┌2───
 │6月13日(金)19時 春闘決起集会
   衣笠至徳館401・BKCコア第4・朱雀502・APU 第5会議室・慶祥

  ゆにおんNo50(08.6.12) 特別転籍問題の理事会説明と春闘団交速報
  https://j-union.com/-/rits-union/file/html/open/08unionNo50.pdf

  ──2a──
 「経常費補助金25%(15 億円)減額と私学助成運動に関する
   組合見解」より
   https://j-union.com/-/rits-union/file/html/open/08unionNo49.pdf

  「立命館学園の財政構造は、基本的に学納金で教育研究経費と人
    件費を賄う構造になっています。したがって、補助金はほぼ全
    額基本金に組み入れられるようになっています。例えば、06 年
    度は、補助金は86 億円で、基本金組み入れ額は111 億円となっ
    ています。因みに大学事業の余剰額(企業で言う経常収益)で
    ある帰属収入ー消費支出は134 億円ですから、補助金がそっく
    り余剰額となって、法人の蓄積基金に回るようになっていま
    す。」

 ┌3───
 │文科省報道発表 08.6.4
   https://j-union.com/-/rits-union/file/html/open/kensyo-shiryo.pdf より

  報道発表
                     平成20年6月4日
                     文部科学省

  立命館大学生命科学部における入学直後の転学部措置について

  1. 事案の概要

   学校法人立命館が設置する立命館大学生命科学部では、平成20年度の入試
    において、予想より多くの学生が入学手続きをしたため、平成20年3月26
    日の時点で、入学定員280名に対して315名(1.48倍)の学生が入学
    する見込みとなりました。
     このため、立命館大学は生命科学部の新入生に対し、他学部への転籍を希望
    する学生(25名)を募集し、8名が転籍しました。
     なお、平成20年度は、入学者数が入学定員の1.40倍以上の学部につい
    ては、私立大学等経常補助金が不交付となります。

  2.文部科学省としての見解

  (1)  入学直後の転学部が、教学条件の改善よりも大学等の設置認可や私学助
        成において不利とならないようにすることを目的として実施したと考えら
        れること。

    (2) 入学直後の転学部について募集要項等を明記せず、定員超過となっている
        特定の学部のみを対象とし、入学直後、極めて短期間(5日間)に実施し
        たなど入学者選抜の透明性、公平性を欠くこと。

      以上のような理由から、立命館大学において実施された入学直後の転学部に
    は、教育上の合理的な理由があったと判断できず、また、学校法人としての管
    理運営も適正を欠いていると判断し、本日、その旨を学校法人立命館に伝達し
    ました。

   ※ この事実認定等を踏まえ、日本私立学校振興・共済事業団においては、
       学校法人立命館にかかる平成20年度私立大学等経常経費補助金を25%減
       額することを決定しました。

                 (お問い合わせ)
                文部科学省 高等教育局
                     私学部 私学助成課長    白間竜一郎
                           専門官    助川  隆
                           助成第一係長 西村 敏信

  
 ┌4───
 │立命館の民主主義を考える会 第2回フォーラム報告集より
   http://rits-democracy.blogspot.com/2008/06/2.html

  【問題提起1】井上 純一(元学生担当常務理事・「考える会」世
   話人)「哲学」が語れても哲学は語れない ー何のためのガバナ
   ンス?ー

 「相談役は冊子『改革の哲学』(総務部発行)で「哲学」を語っ
    ておられます。それは職員の手には渡ったようですが、何故か
    教員には配られていません。何故なんでしょうね。私は今日の
    報告の参考に、この冊子を読ませてもらいましたが、相談役ら
    しく少々荒っぽい乱暴な中身なので、多分教員には読ませたく
    なかったのでは、と邪推すらしたくなりました。ぜひお読みく
    ださい。必読文献です。良いところも悪いところも文句なしに
    でています。」

  「したがって大学の組織と運営も、教職員の力を結集して学生の
    自立・発展を目指すというのが、立命館大学のあり方でした。
    立命館学園の教職員の歴史を振り返るなら、教職員は、このた
    めに教学の改革、学費論議など、教授会をはじめ諸会議等で、
    学生の実態とからめて、厳しい議論と教学改革を積み重ねる努
    力をしてきました。同時にそのことによって「行政に忙しい」
    という声に示されてきたように、他大学にないほどの教職員の
    「疲労感」(教員にとっては研究時間が十分に保証されない等)
    を軽減する民主的で合理的な制度を願う声も強くなりました。
    それは時として立命館方式の全面的な否定になる様相すら含ん
    でいました。私たちの課題は、教職員の「疲労感」を真剣に取
    り上げ、それを解決する具体的な制度を皆で考えださなければ
    ならない場面に直面しています。しかもその制度が、民主的な
    意思形成と民主的な手続き・執行を実現するような形で。」


  「これに対して「改革の哲学」の具体化は、何をもたらしている
    でしょう。学生組織の弱体化・学生の多様化という名のもとで
    の全学協議会を軽視する動き。理事長の意向が強く働き学生・
    教職員の意向が反映されない総長選挙制度(総長候補者の選出
    も選挙人の選出も理事長の差配が極めて強い制度)。教授会を
    常任理事会の上位下達の組織にするために学部長理事のリーダー
    シップの強調(理事会の方針を通すのが学部長のリーダーシッ
    プだとする思想)。理事長・総長による任命理事(もしくは理
    事でない常任理事会メンバー)の大幅増加による学部長理事の
    常任理事会内での比率低下・発言力の減殺による上意下達の容
    易化。理事長・総長という従来の二頭立てトップに代わって理
    事長トップの明確化(前理事長からの就任打診があった時に、
    長田理事長は「総長であったものが理事長を引き受けるのが適
    切」だと考えたと述べています。UNITAS)これらのことが、
    「改革の哲学」の具体化になっています。そこには、大学運営
    の根幹が、重大な変更を受けていることがみてとれます。

    こうした「改革」の問題について、ここでは一つだけ極めて重
    要なものを指摘しておこうと思います。それは、総長と並んで、
    否それ以上に理事長の選出の民主化が極めて重要となっている
    ことです。理事長の権限は、この間の「改革」の中で驚くほど
    独裁的に振舞えるほど強化されてきています。それに対して
    「責任」を問う仕組みは皆無です。理事長選出の民主的手続き、
    選出過程の透明化、そしてリコール手続き(株式会社ですら役
    員は株主総会で罷免できる)、役員定年制など、学園の代表の
    選出と罷免について、学園の教職員の意思が反映されるような
    制度の整備が決定的に重要になっています。新しい大学改革は
    ここに踏み込まなければ、教学(教育の理念)と経営(株式会
    社の論理)の矛盾は亀裂を深め、教学は経営に従属することに
    なるのではと危惧しています。」

 「「改革の哲学」では結局、教育や研究の「哲学的」目標は、大学
    の規模でありW 大学やK 大学(具体的な校名をだして大学の関
    係者から嘲笑を浴びる下品さと自己卑下の轍を私は踏みたくな
    い)に追いつくことで(しかも何を追いつくかは不明である)
    あり、外部資金の獲得の多さであり、トップの人事権による外
    部資金獲得のための人材呼び寄せであり、「市場化という時代
    の要請に応える新たな挑戦」(川口総長。ただし総長の言明は、
    相談役や理事長とはニュアンスが異なり、「立命館民主主義の
    伝統を誇り」だとしている)になっています。具体的にわかり
    やすく示したいということなのでしょうが、ここには大学の哲
    学そのものが見失われています。そこには大学は「何を何のた
    めに教え研究するのか」がありません。それは、本来それぞれ
    の大学の理念として掲げられています。それが大学の哲学です。
    「何のために」どのような学生を育てW 大学・K 大学に追いつ
    き、社会的貢献をするのか、わかりません。そこでは「何を何
    のために」教育し研究するのかの自問が一切ありません。ただ
    数値的な序列による目標が無批判的に(かつて「情勢と切り結
    ぶ」とよく使用されていた言葉はなくなっています)並んでい
    るにすぎません。哲学とは倫理も含めて問いただされるもので
    もあるので、ガバナンスの哲学は「『何を何のために』への自
    問」がなければ、その統治組織は単なる官僚機構に堕し、統治
    者は支配を自己目的として楽しむ「精神なき享楽人」(Max
    Weber)であるにすぎません。」

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│¶は発信人註