個人情報保護法案の諸問題
14東監収第48号の5
平成14年10月4日
請求人(別紙請求人目録のとおり)代表
* * * * 殿
東村山市監査委員 土 田 惇 士
同 井 上 徹 二
同 小 町 佐 市
住民監査請求に係る結果について(通知)
平成14年8月5日付提出された「東村山市職員措置請求書」に係る監査の
結果は、次のとおりであるので通知します。
記
一 監査の実施
監査に当たっては、請求人の主張する事実の確認と請求の当否を判断する
ため、次のとおり監査を実施した。
1 請求人の証拠の提出及び陳述
請求人に対して、地方自治法第242条第6項に基づき、平成14年9月
2日に証拠の提出及び陳述の機会を与えた。
2 措置請求書の補正
平成14年8月9日の第1回監査委員協議会において、請求内容の一部
に補正する必要が生じたため、同日付で補正するよう通知し、8月12日
に補正文書の提出があった。また同年9月2日の陳述の場においでも一部
に補正する必要が生じたため、その場で補正措置がなされた。
3 請求人の提出証拠
証拠(1)住民基本台帳浩の−部を改正する法律(抜粋)
証拠(2)地方自治法(抜粋)
証拠(3)平成12年東村山市議会12月定例会会議録(抜粋)
証拠(4)岡山請求人の「陳述メモ」
証拠(5)青木請求人の「住基ネット結合中止を求める監査請求への陳述」
証拠(6)篠原請求人の「住民監査請求意見陳述」
証拠(7)住民基本台帳法(抜粋)
証拠(8)2002年8月1日付、明日の教育をつくる会代表佐藤貞子、
13万分の1の会代表篠原勇、保育所『空飛ぷ三輪車』土屋
敬一、秋水園問題を考える市民集団会員後藤進、○○○○○
○○○○○○○○○○○○○○、教育を考える実行委員会代
表篠原勇、東村山・情報公開をすすめる市民の全代表岡山卓
生 から東村山市市長宛の「住民基本台帳ネットワークの稼
動を凍結(延期)する要望書」
証拠(9)13万分の1の会代表篠原勇、東村山・情報公開をすすめる
市民の会代表岡山卓生 作成の「8月5日国民総背番号制が
やって来る!」
証拠(10)社会評論社「私を番号で呼ばないで」(抜粋)
証拠(11)関連新聞記事
以上証拠(1)から(3)は、平成14年8月5日付本件措置請求書に
添付し提出され、証拠(4)から(11)は、同年9月2日の陳述の場にお
いて提出された。
二 請求人の請求及びその要旨
措置請求書に記載されている事項、請求人が提出した証拠書面、請求人の
陳述等を勘案し、請求内容を次のように解した。
監査請求の要旨
1 市長は、改正住民基本台帳法(1999年8月成立)に基づく住民基本台
帳ネッワークシステム(以下住基ネット)の稼動にあたり、東村山市が持つ
東村山市民の住民情報データ(氏名、住所、性別、生年月日)を、東京都を
通し(財)地方自治情報センターにデータ発信した。
2 その結果、今日(2002年8月5日)より、全国のほぽすペての市町村
と、国の特定の行政官庁におけるコンピュータ端末から、東村山市の該住民
情報データが検索できるようになった。
3 そしてその準備と運営のために市長は、予算を計上し、職員を配置した。
4 しかしこの住民情報データは、「東村山市個人情報保護に関する条例」
(以下個人情報保護条例)の第2条で定義され、市として保護に努めなけれ
ばならないとされた(第3条)個人情報にあたる。
5 ところが、
1) 今回の住基ネットの出発にあたり、不可欠な条件とされ(小渕首相発
言)改正住民基本台帳法第30条の33に「情報の保護、安全確保」の
ため「必要な処置を講じなければならない」と定められた点については、
今日になるも個人情報保護法を含め措置は講じられていない。従って、
東村山市から持ち出された、住民情報データは、保護も安全確保もされ
ていない。
2) こうした情報は、現実の社会では値段がつけられ、売買されており、
今回の住基ネットのシステムでは、全国の市町村や国の行政機関の1ヶ
所からでも、すペての情報が流失する危険性があり、これを防ぐことは
実質不可能である。
6 このような実情の中で、住基ネットに情報を流すことは、個人情報の漏え
いを防止することを定めた、東村山市の個人情報保護条例第8条に違反する。
7 また同条例の、個人情報を特定目的のために収集するにあたっては、本人
の同意を得ることを定めた第6条にも違反する。
8 以上、今回の住基ネットへの結合による東村山市民の住民情報データの提
供は、明らかに法令違反であり、地方自治法第242条(住民監査請求)に
基づき、そのための職員配置を含む市の予算支出を直ちに中止し、これまで
の支出の賠償を求めるとのことである。
三 監査の結果
[主 文]
本請求を棄却する。
[理 由]
1 地方自治法第242条に定める住民監査請求の対象となる財務会計上の違
法行為は、直接財務会計法規の違反のみならず、重大かつ明白な瑕疵のある A
行為を前提ないし原因として行われた B 行為(財務会計行為)をも含むもの
であることは、判例(最高裁、昭60.9.12)、学説の認めるところであ
り、請求人主張のとおりである。
2 東村山市個人情報保護に関する条例(昭63.8.11条例第16号以下
「保護条例」という。)第3条は、(実施機関の責務)として「実施機関(注)
は、個人情報の収集・保管及び利用をするに当たっては、市民の基本的人権
を擁護し、あらゆる方策を通じて個人情報の保護に努めなければならない。」
と定め、第8条は、(適正な維持管理)として「実施機関は、個人情報の収集・
保管及び利用を行うときは、次の各号に掲げる事項について必要な措置を講
じ、個人情報について適正な維持管理を行わなければならない。(1)個人情
報は、正確かつ最新なものとすること。(2)個人情報の改ざん・滅失・き損
及び漏えいその他の事故を防止すること。第2項省略」としているが、当市
は、今回、8月5日国の住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネ
ット」という。)の稼働に当たり当市のもつ当市市民の住民情報データを東京
都を通じて(財)地方自治情報センターに発信・接続した。
本件は、この接続行為が上記保護条例第3条及び第8条に定める実施機関
の責務違反となることにより、今後なされる住基ネット接続・運用のために
支出される財務会計上の公金の支出が違法支出となるか否かなのである。
(注)実施機関:市長、教育委員会などの各機関
3 保護条例第3条の「あらゆる方策をもって保護に努めるものとする」の趣
旨を僅かの漏えいをもあってはならないものとすると、全国的住基ネット接
続によって当市市民の個人情報の漏えい等の事故の危険は全国的に広がり、
これを完璧に防止することは困難であることが容易に想像できる。
近時のコンピュータ犯罪や実際の漏えい事件の状況をみると請求人の主張
は、決して杞憂とは言えない。
4 このような状況の中、平成12年12月7日当市市長は、当市市議会にお
いて議員である請求人小倉昌子氏の質問に答え「法律で義務化されたことに
ついては、実施していく必要がある。さまざまな課題は課題として対応して
ゆく。国は個人情報保護施策を確立し個人情報保護に努めることが大事であ
るから市長会を通じて個人情報保護対策を働きかけていく。」としている。
住基ネット接続が法律で義務化されているか否かは議論のあるところであ
るが、この答弁を付度するに、これから国において法令の整備が行われなけ
ればならない課題は残っているが住民基本台帳法の住基ネット関連条項の施
行日到来のあかつきは、住基ネット接続を行いたい。の意思と受け取れる。
5 従って、当市市長は、専ら国が解決すべきものとするも、個人情報保護の課
題が解決していないと認識していながら、今回、住基ネット接続を行ったと
すると、個人情報の漏えい等の危険があるかも知れないが、敢えて未必の故
意をもって全国ネットに接続したこととなり、接続行為自身が当市保護条例
第3条及び第8条に違反する。
6 一方、先行の非財務会計上の行為の泣令違反は、上記1記述のとおり、重
大かつ明白な瑕疵の存在がなければ、後行行為に違法性は承継しないので、
先行行為に重大かつ明白な違法が存在するか否か検討する。
当市保護条例は、その第21条第6項及び第23条において、夫々個人情
報保護運営審議会委員及び業務委託者の職務上の守秘義務違反について罰則
を定めているが、保護条例第3条及び第8条の実施機関の責務(義務)違反
について何らの罰則規定を設けてはいない。だとすれば、第3条及び第8条
は、いわゆる訓示規定(注)であって、この違反をもって行為が無効となる
ことはない。
(注)訓示規定:各種の手続を定める規定のうち、もっぱら裁判所又は行
政庁に対する命令の性質をもち、それに違反してもその行為の効力に
影響がないとされるもの。効力規定・取締規定に対する概念(新版
新法律学辞典〕
7 無効とならない瑕疵であれば、重大かつ明白なものとは言えず、後行行為
の財務会計上の行為に違法性が承継されることはない。
華章、この条例違反は、市長の個人情報保護の政策・姿勢を本件条例を尺
度に、政治的に追求するほかなく住民監査請求の理由とはならない。ただ、違
法の内容・程度を監査して結論としたので、却下でなく棄却とする。
8 なお、請求人は、住基ネット接続が保護条例第6条にも違反すると主張す
るが、本条は当市の個人情報について実施機関に課した収集手続・制限を定め
たものであって、住基ネット接続によって同条違反が生ずるというような性質
のものではない。
9 また、当、不当については、本件は、財務会計上の行為そのものの相対的
当、不当を問題とするものでないから議論の対象としなかった。
以 上
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東 村 山 市 職 員 措 置 請 求
1 請求の要旨
細渕一男東村山市長は、改正住民基本台帳法(1999年8月成立)に基づ
く住民基本台帳ネットワークシステム(以下住基ネット)の稼働にあたり、東
村山市が持つ東村山市民の住民情報データ(氏名、住所、性別、生年月日)を、
東京都を通し(財)地方自治情報センターにデータ発信した。その結果、今日
(2002年8月5日)より、全国のほぽすべての市町村と、国の特定の行政
官庁こおけるコンピュータ端末から、東村山市の該住民情報データが検索でき
るようになった。
そしてその準備と運営のために市長は、予算を計上し、職員を配置した。
しかしこの住民情報データは、「東村山市個人情報保護に関する条例」(以下
個人情報保護条例)の第2条で定義され、市として保護に努めなければならな
いとされた(第3条)個人情報にあたる。
ところが、
1) 今回の住基ネットの出発にあたり、不可欠な条件とされ(小淵首相発言)
改正住民基本台帳法第30条の33に「情報の保護、安全確保」のため
「必要な処置を講じなければならない」と定められた点については、今
日になるも個人情報保護法を含め措置は講じられていない。従って、東
村山市から持ち出された、住民情報データは、保護も安全確保もされて
いない。
2) こうした情報は、現実の社会では値段がつけられ、売買されており、今
回の住基ネットのシステムでは、全国の市町村や国の行政機関の1ヶ所
からでも、すペての情報が流失する危険性があり、これを防ぐことは実
質不可能である。
このような実情の中で、住基ネットに情報を流すことは、個人情報の漏洩を
防止することを定めた、東村山市の個人情報保護条例第8条に違反する。
また同条例の、個人情報を特定目的のために収集するにあたっては、本人の
同意を得ることを定めた第6条にも違反する。
以上、今回の住基ネットへの結合による東村山市民の住民情報データの提供
は、明らかに法令違反であり、地方自治法第242条(住民監査請求)に基づ
き、そのための職員配置を含む市の予算支出は、直ちに中止し、これまでの支
出は賠償することを求める。
2 請求人
請求人代表
* * * * 他 7人
2002年8月5日
東村山市監査委員殿