2004年10月12日

転載:「意見広告の会」ニュース No 201 (2004.10.12)

Date: Tue, 12 Oct 2004 19:31:05 +0900

*ニュースの配布申し込み、投稿は、
  qahoujin@magellan.c.u-tokyo.ac.jp まで、お願い致します。
** 目次 **
1 授業料の値上げ始まる。
   国立大授業料自由化で値上げ NHKニュース 10/11 12:28
2 大学財政危機打開をめざす国会内ポスターセッション 首都圏ネット
    5th Circular
3 特殊法人を上回る「蜜の味」 独立行政法人
   北沢栄の「さらばニッポン官僚社会」より
4 真に、かつ、種々の意味で危機を迎える都立大
4−1 都立大総長声明の意味  やさしいFAQより
4−2 首都大学「遅滞生じ危機的状況」
    都立大学長が異例の声明 各分野の課題列挙 「東京新聞」記事
*4−2は4−1に含まれています。
**
1 授業料の値上げ始まる。
国立大授業料自由化で値上げ NHKニュース 10/11 12:28

国立大学の授業料は、昨年度まで文部科学省がすべての大学で一律に決めてきました
が、今年4月に法人化されてからは、各大学がこれまでの10パーセントの値上げを上
限に自由に決められるようになりました。今年度、授業料を変えた大学はありませんで
したが、東京農工大学は、来年度新たに設置を予定している専門職大学院の授業料を国
立大学としては初めて値上げし、上限の57万2800円とすることを決めました。こ
の大学院は、企業に勤める技術者などを対象に、製品の欠陥などを減らし企業に大きな
損失を与えないようにする危機管理のあり方を教えるもので、東京農工大学の宮田清蔵
学長は「企業経験のある実務者を多く教員として招く予定で、質の高い教育を提供する
ため授業料を値上げすることにした」と話しています。これについて、文部科学省は「
法人化のメリットを生かして大学の特色を打ち出そうというもので、今後、授業料を独
自に設定する国立大学が増えてくると思う」としています。



2 大学財政危機打開をめざす国会内ポスターセッション
5th Circular
   「法人化にあたって新たに発生した経費」の推計方法
2004年10月12日
国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

4th Circularで「法人化にあたって新たに発生した経費」(法人化経費)を把握して、全国総計を求め、それを補正予算要求に組み込む方針を提示しました。そもそも法人化経費は国から別途用意されるべきものでした。ところが、各大学に配分された運営費交付金の中で措置されたために各大学における予算を実質的に減少させ、その減少率が学科レベルの現場では増幅されて教育研究活動に深刻な影響を与える要因の一つとなっています。こうした事態は、「運営費交付金等の算定に当たっては、・・・法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること。」(参議院文教科学委員会附帯決議第12項)に明白に違反しています。そこで、各大学において法人化経費を把握することをお願いしたのです。予算情報が十分開示されておらず、法人化経費が把握できない場合は、2nd Circularのワークシート1(WS1)http://www.shutoken-net.jp/040911_1ws1.htmlの第2項を用いて、推計してください。

ワークシート1(WS1)の2項「法人化に伴う費用」の見積もり方式とその根拠

1.各大学における「恒常的法人化経費」の算出方式

[手順1] 当該大学の教職員数Aの東京大学の教職員数(7559名)に対する比を計算する。
     a=A/7559(有効数字4桁まで計算)

[手順2] 当該大学の総支出額Bの東京大学の総支出額(2144億円)に対する比を計算する

     b=B/7559(有効数字4桁まで計算)

[手順3] 次式により、各費用の算出を行う(単位億円)。ただし小数点以下3桁目を四
捨五入する。

<3-1> コンピュータ・システム・サポート経費(人事,財務会計,病院管理会計)
X1=0.70×b(億円) ; ただしX1 <0.05の場合はX1=0.05とする。

<3-2> 職員研修費用(労務・人事管理, 会計基準等・衛生管理者研修等)
X2=0.18×a(億円) ; ただしX2<0.03の場合はX2=0.03とする。

<3-3> 職員採用試験実施経費(募集要項・問題作成等)
X3=0.26×a(億円) ; ただしX3<0.03の場合はX3=0.03とする。

<3-4> 銀行手数料(振込手数料,ファームバンキング利用料等)
     X4=0.96×b(億円) ; ただしX4<0.05の場合はX4=0.05とする。

<3-5> 保険料(雇用保険,労災保険,児童手当拠出金,火災保険,自動車保険,損害賠償責任
保険等)
     X5=12.91×a(億円) ; ただしX5<0.03の場合はX5=0.03とする。

<3-6> 法定監査人費用等(弁護士・会計士等費用)
X6=1.18×a(億円) ; ただしX6<0.03の場合はX6=0.03とする。

<3-7> 役員人件費
X7=0.2×役員数

<3-8> 労働安全衛生法見合いの維持費
X8=0.75×a(億円) ; ただしX8<0.03の場合はX8=0.03とする。
[手順4] 次式により、総費用Tの算出を行う(億円)。
T=X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7+X8

2.上記の算出方式の根拠
 上記<3-1>〜<3-8>項の各費用の算出は、極めて困難である。その理由は、

(i) 法人化1年目のため、正確な値が分からず、他のデータ等から予測しなければなら
ないため,

(ii) 上記予測に必要な信頼に足る詳細なデータが公開されていないため,
等である。一方、東京大学においては、法人化前に上記費用の詳細な予測が行われてお
り、そのデータは利用可能である。
そこで本算出方式においては、各大学におけるおおよその費用を見積もるため、入手可
能な「教職員数」および「総支出額」のみを用い、東京大学の試算額との比を用いて計
算を行うことを考えた。
まず「総支出額」と深い関わりを持つと考えられる<3-1>,<3-4>の項目については、当
該大学と東京大学の「総支出額」の割合に東京大学の予測経費を掛けることにより、算
出を行った。ただし計算結果が500万円を下回る場合は、その項目の経費は500万円とし
た。これは経費規模が小さくても、最低必要な額があると判断したためである。
同様に、「教職員数」と深い関わりを持つと考えられる<3-2>,<3-3>,<3-5>,<3- 6>
,<3-8>の項目については、当該大学と東京大学の「教職員数」の割合に東京大学の予
測経費を掛けることにより、算出を行った。ただし計算結果が300万円を下回る場合は
、その項目の経費は300万円とした。これは教職員数が少なくても、最低必要な額があ
ると判断したためである。

また項目<3-7>については、役員1名あたり0.2億円の経費とした。
以上のようにして各項目に対する必要経費を見積もり、その合計を取ることにより総経
費の見積額を算出した。

[註] 上記の計算において、もし「総支出額」が不明もしくは信頼性に欠ける場合は、
その代わりに「教職員数」を用いて計算を行っても、その違いは僅かであると考えられ
る。いくつかの大学の試算では、その食い違いは1割程度であった。

3.その他

上で算出した費用は、法人化に伴い恒常的に必要となった費用の見積もりである。しか
し上記以外にも、大学法人が負担しなければならなくなる可能性のある費用として、次
のものが考えられる。
() 共済組合負担金
() 借入金償還額
これらの費用については、平成16年度は手当されたが、平成17年度以降は未定であり、
もし手当されない場合には、おおよそ次の額がさらに必要となる。
() 共済組合負担金 : 63.5×a(億円)
() 借入金償還額  : (大学により異なる)



3 北沢栄の 「さらばニッポン官僚社会」より (許可を得て転載)
第75章 特殊法人を上回る「蜜の味」 独立行政法人
http://www.the-naguri.com/kita/kita77.html
(2004年8月26日)

 独立行政法人(独法)はいま、特殊法人以上に「官の聖域」と化している。職員の平均年収が国家公務員よりも多く、天下り比率も特殊法人より高いのだ。昨年10月以降、特殊法人・認可法人から移行した独法に、その傾向が著しい。だが、これら独法の人件費は、「運営費交付金」を名目に補助金で、つまり国民の税金や保険料など特別財源で賄われている。現在、107法人に上る独法の巨額の人件費に、「国民のカネ」が惜しげもなくバラまかれているのだ。

国家公務員より高い給与

 総務省は7月末、独法95法人の役員報酬と職員の給与水準を公表した。それによれば、2003年度の常勤役員報酬(平均)は、理事長など法人の長が1842万4000円、理事が15 95万7000円、監事が1401万円だった。

 常勤職員の給与水準はどんなか。年齢構成に合わせた昨年度の比較(ラスパイレス指数)でみると、国家公務員行政職の「100」に対し事務・技術職員が107.4、研究職員10 2.3。いずれも国家公務員の給与を上回る。すなわち事務E技術職員2万3262人(平均年齢42.7歳)の年間給与額の平均が728万4000円、研究職員8377人(平均年齢44.0歳)が同899万5000円だ。

 だが、各法人にかなりのバラつきがあり、この平均値を10ポイント超上回る給与突出の法人が実に33法人に上る。その原因は、「法人の自律性の尊重の下、国家公務員や民間企業の給与、法人の業績等を考慮しつつ、各法人がそれぞれ支給基準を定めること」(総務省)とされているためだ。
 今夏の賞与も、特殊法人同様、国家公務員(2.1カ月分)のを業績に関係なく上乗せさせた2.19カ月分で決着している。給与、賞与とも、独法の方が国家公務員より優遇されている形だ。

給与約4割高の独法も

 調査対象とされた95法人中、職員の給与が最も高いのが農畜産業振興機構(農林水産省所管)。国家公務員の給与を36.4%も上回る。
 同機構は昨年10月、特殊法人の農畜産業振興事業団と認可法人の野菜供給安定基金が統合され、発足した。畜産物・生糸・砂糖・野菜の価格安定化のため、指定乳製品や指定食肉の売渡し、加工原料乳や肉用子牛の生産者への補助金交付などの業務を行う。
 同機構のホームページに掲載された公開情報によると、03年度の年間換算報酬額(推計)は、理事長が2054万8000円、副理事長(1人)が1895万7000円、総括理事が2人で計3569万9000円、理事4人が計6750万2000円、監事2人が計2910万3000円。

 理事長の場合、全報酬のうち賞与が565万7000円、調整手当が158万4000円を占め、賞与と手当の比重が高い。役員の報酬体系の特色は、理事長と副理事長以下との格差が、民間の役員の格差に比べずっと小さいことだ。多くの独法にみられるように、とかく目立つ理事長の報酬は抑えて副理事長以下に厚くする「高原型体系」になっている。
 常勤職員の場合も高原型に支給され、計182人の平均年齢43.6歳の平均年間給与額は諸手当と賞与が押し上げて960万6000円。在外職員は9人(平均年齢40.6歳)で、平均13 47万6000円の「高待遇」だ。
 同職員の給与水準は、独法全体の水準と比べても独法平均を100として127.4。3割近くも高い。こうしたべらぼうな給与設定ができるのも、所管省庁と総務省のチェック機能が甘いためだ。双方とも第三者チェック機関の独立行政法人評価委員会を設けているが、十分機能していない。

給与は底上げの「高原型」

 国家公務員に比べて職員給与を4割近くも高給にしている理由について、農畜産業振興機構の総務部は、二つの理由を挙げる。

 一つは、BSE(狂牛病)や鳥インフルエンザのような事態に緊急対応ができる管理職の割合が役所より高く、大卒と大学院卒も同様の高比率で全従業員の8割を占めること。

 二つめは、本部(東京)に機能が集中しているうえ、公務員住宅を持たない住宅事情から調整・住宅・通勤各手当が公務員よりかかる。

 以上の「特殊事情」から、給与の高め設定はやむを得ない、というのだ。だが、こうした「特殊事情」はなにも同機構に固有のものでない。何より重要な点は、機構は自らの財源(収入)で給与水準を決定しているのではないことだ。国民の税金で、自らを養っているのだという見地から給与水準を決めなければならないはずだ。

 職員給与が国家公務員より3割以上高い独法は、ほかにも日本貿易振興機構(旧日本貿易振興会=JETRO)と理化学研究所がある。31.1%高い日本貿易振興機構の場合、役員報酬は理事長が03年度に2136万9000円、理事が1人当たり1682万9000円、監事同1 473万1000円の水準。理事長と理事の報酬格差が500万円弱と比較的小さい。他方、職員570人(平均年齢38.4歳)の年間平均給与額は774万円。役員に比べ職員の給与が、相対的に高い。

 職員の給与が国家公務員より29.9%高い福祉医療機構の場合、理事長の03年度の年間報酬は2063万8000円。理事4人が計6816万1000円、常勤監事1人が1452万7000円、非常勤監事1人が477万5000円。

 ここでも、理事長の報酬を抑えた分、理事報酬が高めに設定され、職員給与も高水準だ。このような高原型の給与体系で、独法は運営されているのである。

在職2年で1000万円近い退職金

 もう一つ、退職金の支給実態はどんなか。特殊法人の場合、見直し実施前の02年3月までは、総裁が任期たったの4年で2326万円、理事長が1787万円も貰って批判を浴びた。政府は独法に対しても昨年12月に、役員の退職金の支給率の基準を決め、業績の範囲内に収めるよう、遅ればせながら閣議決定している。

 総務省によれば、03年度に退職した独法常勤役員の退職金の支給状況は、理事長など法人の長4人に対し計2535万7000円(単純平均633万9000円)、理事17人に1億1403万円(単純平均670万8000円)、監事1人に674万3000円だった。

 金額それ自体は小型化しているが、問題は在職期間だ。水産総合研究センター(農水省所管)の理事長の場合(ことし1月退職)、在職期間わずか2年10カ月なのに962万900 0円の退職金が支給された。大学入試センター(文部科学省所管)の理事長のケース(昨年11月退職)では、在職期間が前者より少ない2年8カ月だが、退職金は991万円に上った。

 理事に対しても、在職2年余りなのに理事長並みに退職金を900万円超支給している独法が3法人あった。退職金も「高原型」といえる。その典型例は、農業・生物系特定産業技術研究機構(農水省所管)。在職期間2年6カ月の理事(昨年9月退職)に948万4000 円支給している。これらはすべて「国民のカネ」から賄われているのだから、「お手盛り」というほかない。

「国民のカネ」が、このような人件費に一体、総額でどのくらい費やされたのか―。

「隠れた国民負担」約6千億円

 「隠れた国民負担」と言うべき、こうした独法の役職員の人件費は、95法人の「最広義の人件費」(03年度)でみると、総額5817億8017万円に上る。「最広義人件費」とは、「給与、報酬等支給総額」に、退職手当引当金繰入額(当該年度のネットの繰入額。同引当金を取り崩した場合には、その額を控除)、法定福利厚生費、共済組合等の負担金の額および非常勤職員や臨時職員に支給した給与(手当)の合計額である。

 法人別でみると、同人件費のトップは、雇用・能力開発機構(厚生労働省所管)。61 9億7195万円に上る。次いで国立印刷局(財務省所管)の498億8899万円、産業技術総合研究所(経済産業省所管)の421億5158万円が続く。

 最大の「人件費ガズラー(大食い者)」の雇用・能力開発機構は、ことし3月に特殊法人から移行した。スパウザ小田原や中野サンプラザといった、雇用保険の積立金を使って建設した勤労者福祉施設は計2070。それらがことごとく不採算のため廃止を余儀なくされ、超安値で売却されて波紋を投げたのは記憶に新しい。

 官業の大失敗にもかかわらず、「特殊法人」の看板を「独立行政法人」に付け替えて存続し、いまなお役職員の人件費向けに巨額の公費を貪っているのだ。この間、官業の破綻と公費の壮大な浪費に対し、官僚は何一つ責任を取っていない。

 だが、独法の問題は「補助金を使った高い給与と疑問符の付いた仕事の内容」ばかりでない。経営を担う常勤役員の大部分が、所管官庁や特殊法人の出身者で占められていることだ。

役員全員が天下りの法人も

 独法の数は04年7月末現在で、107法人。これに独法の仕組みを取り入れた国立大学法人の89を加えると、実質196法人に上る。

 これらの独法は、大学法人を除けば、二つに大別できる。研究所など国の直属機関から分離され、01年4月に設立された第一期生の独法と、のちに特殊法人・認可法人が衣替えした独法だ。

 後者は、小泉内閣が閣議決定した01年12月の「特殊法人等整理合理化計画」により、特殊法人と認可法人(当時計163法人)は「廃止・民営化」する以外は基本的に独立行政法人化する方針に基づき、昨年10月以降独法化されていったものだ。

 だが、この独法の後発グループは、先の雇用・能力開発機構のように事実上、特殊法人などからの「看板の付け替え」に終わっている。いや、特殊法人時代よりも給与を引き上げ、天下りを増やしている例が多い。業務の自律性が認められていることをいいことに、独法の多くは自分勝手に運営している、と言うほかない。

 常勤役員中の官僚出身者比率をみると、特殊法人と認可法人から改組された独法では特殊法人を上回り、約7割に上っている。小泉政権の天下り抑制方針は、官僚に軽く見られ、事実上無視されているのだ。

 農畜産業振興機構を取り上げてみよう。役員10人全員が、前任の農水省と特殊法人、認可法人の元幹部だ。山本徹理事長は、林野庁長官から同事業団理事長を経て就任している。菱沼毅副理事長は元九州農政局長。独法全体が、蜜を吸い集める「官の巣」に化しているのだ。

 「改革」を看板にする小泉政権が、官僚に丸投げしてできた「改革の鬼子」をどう処置するかが、いま問われる。

北沢 栄(きたざわ・さかえ) ジャーナリスト・著作家。現在、情報発信・翻訳会社
などを経営する傍ら、金融・行財政の構造改革について研究。近著に 『官僚社会主義
 日本を食い物にする自己増殖システム』(朝日選書)、『公益法人』(岩波書店)、
『再生か荒廃か グローバルスタンダードの21世紀』(全日法規)、『銀行小説 バベ
ルの階段』(総合法令)、『金融小説 ダンテスからの伝言』(全日法規)。翻訳書に
『リンカーンの三分間』(共同通信)など。



4−1(含む4−2) 都立大総長声明の意味
2004年10月7日に発表された都立大総長声明は,どんな意味を持つのでしょうか? 次

ポーカス博士
まず,茂木総長声明「新大学設置認可答申を受けて──現状評価と課題──」 と, 10
月8日の東京新聞(朝刊,多摩版)の記事を読んでもらおう。個々の論点は,読めば分
かることばかりなので敢えて解説はしないが,後で2つの点から今回の声明の意味を考
えてみたい。


首都大学「遅滞生じ危機的状況」
都立大学長が異例の声明 各分野の課題列挙

 都立四大学を統合して来春開学する首都大学東京について、都立大学の茂木俊彦学長
は七日、開学準備や新学部の内容など幅広い分野の課題を列挙する声明を学内で公表し
た。首都大は先月末に文部科学相から設置認可を受けたばかり。統合対象大学のトップ
によるこの時期の声明は異例ともいえ、都立大教員らの反発の根深さが浮き彫りになっ
た格好だ。
 声明は、首都大について「解決を急ぐべき多くの課題がある」と指摘し、「さまざま
な面で著しい遅滞が生じており、危機的状況と言っても過言ではない」と準備の遅れを
懸念している。
 また、首都大が新たに設置する「都市教養学部」について、「理念が不明確で組織構
成に無理がある」と批判。他大学での受講を単位に認める「単位バンクシステム」につ
いても「大学間で教育資源が開放される兆候がない現状では、現行制度の拡充から始め
ることが現実的」としている。
 茂木学長は、首都大の授業や研究の体制などを検討する教学準備会議のメンバー。都
大学管理本部は「指摘内容はいずれも現在検討中のものばかり。開学準備が遅れている
ことはない」と反論している。


まず,今回の総長声明が「全学のみなさんへ」というタイトルになっていることに注目
したい。この声明は,都立大学の学生・院生,教職員全員に向けて発せられたことにな
っている。なるほど,総長として,設置認可が降りた今,どのような現状があり,どの
ような課題が残されているのかを総括したと言えるわけだ。都立大学総長は,現在の都
立大教員の代表だ。それはつまり,「都立大教員」の代表であるばかりか,300人余り
の「首大就任予定教員」の代表であることも意味している。だから都立大の現状を憂い
ながらも,「首大」の準備をしている教員の努力をねぎらうことになり,「首大」設置
準備が著しく遅れていることを指摘して,現状の問題点が早期に解決されるように願う
ことになる。 就任承諾書を300人余りの教員が出したのは事実であり,「首大設置認可
」は降りてしまった。そんな状況で,総長が現状(status quo)を分析し,その現状をど
のように改善できるかを学内のすべての人達に対して訴えた のだ。しかし,これは方
向が違う。現状分析をして改善策を出すといっても,改善策を実行に移す主体は,都立
大の教員ではなく,大学管理本部の役人と,管理本部よりの一部の教員なのだ。指摘し
た課題を解決できるのは,大学の中の人間ではない。それなのになぜ,「全学のみなさ
んへ」なのか?
 これは,わし個人の解釈じゃが,管理本部宛に声明を出すことは,今や無意味だと総
長は考えたのではないか。
(1) これまで管理本部宛に声明を出しても,まともに答えが返ってきたことはない。
(2) 一年前とは違い,総長は大学管理本部で開かれる「教学準備会議」や「経営準備室
運営会議」のメンバーとなっている。
(3) 世間一般に向けての声明という形を取ると,管理本部がまた大問題にする。

次に,東京新聞の記事の最後の部分に注目したい。 「都大学管理本部は『指摘内容は
いずれも現在検討中のものばかり。開学準備が遅れていることはない』と反論している
。」 もし本当にこのように大学管理本部が答えたとしたら,馬脚を現したと言わねば
ならない。つまり,「指摘内容は現在(10月7日)検討中」だから「開学準備が遅れて
いることはない」と言っているのだが,これは,大学管理運営の常識からすると,大間
違いだ。つまり, 「指摘内容は現在(10月7日)検討中」=「開学準備が遅れている」
というのが,総長が挙げた問題点に関して,大学教員が考える常識なのだ。 10月中旬
といったら,もう次年度の計画はほとんど決定しており,具体的にその計画実現のため
に作業がある程度進んでいる時期なのだ。しかし,「単位バンク」1つとっても,都立
大の学部長,研究科長を入れた会議は9月末に第1回が開かれたばかりで,これから検
討しましょう,という段階だ。具体的作業というよりは,まだまだ机上の議論なのだ。
総長声明にある基礎教育センターしかり。あれをやるこれをやる,と言いながら,具体
的に実施することを念頭に置いたら,決めなけらばならないことが山積していて,すで
に来年4月開校に向けて実行に移しておかないといけないことがあるのに分かっていな
い。だから,首都大学「遅滞生じ危機的状況」という東京新聞のタイトルは真実を伝え
ている。本当に,管理本部では未解決,未定の問題が山積みなのだが,本当に大学運営
がどういうものかを知らない役人達は,事態を甘く見ているのだ。繰り返して言うが,
たとえ設置審が認可答申を出し,文部科学省が認可しても,4月から問題なく「首大」
がスタートできるという保障は何一つないのだ。まあ,考えてみれば当然だ。大学管理
本部といっても,これまでひとつの大学を一から設計したことはないし,大学の内部の
運営などこれまで手をつけたことがないのだから,どの時期にどの程度の仕事をこなし
ているか,なんてなーんにも分かっていないのだ。ここにきて,管理本部の一部のお役
人は,事態の深刻さに気づき初めているらしい。急遽,いろいろな委員会に協力する教
員の数を増やしたり,学部長予定者だけではどうしようもないから,「設立準備主査」
なんていう名前で,元となる学部の代表者を正式に取り込んでいこうとしている(「主
査」なんて,どこかで聞いたことのある名前だな)。 さて,総長の投げたボールは,
誰がどのように取るのだろうか?投げっ放しとか,誰もボールを取らないということが
あってはならない!

tjst |10月12日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000630.html |意見広告の会ニュース
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分類「 意見広告の会ニュース」の記事より

転載:「意見広告の会」ニュース210(2004.10.31) - 11/06
転載:「意見広告の会」ニュース209(2004.10.30) - 10/30
「意見広告の会」ニュース208(2004.10.28) - 10/28
転載:「意見広告の会」ニュース207[2004.10.26] - 10/26
転載:「意見広告の会」ニュース206(2004.10.24) - 10/24
転載「意見広告の会」ニュース205[2004.10.21] - 10/21
転載「意見広告の会」ニュース204 [2004.10.19] - 10/19
転載:「意見広告の会」ニュース No 203[2004.10.17] - 10/17
転載:「意見広告の会」ニュース202 [2004.10.14] - 10/14
「意見広告の会」ニュース200 2004.10.08 - 10/09
「意見広告の会」ニュース199 (2004.10.06) - 10/06
「意見広告の会」ニュース 198(2004.10.02) - 10/03
「意見広告の会」ニュース196 (2004.9.27) - 10/03
「意見広告の会」ニュース195 2004.9.25 - 9/25
「意見広告の会」ニュース194 - 9/24
[AcNet Letter 71] 東京都立大学評議会見解2004.3.9 - 3/13
フランスにおける科学者・研究者たちの闘い――「研究を救おう!」をめぐる三週間の動き - 2/04
「意見広告の会」ニュース87 - 1/19
意見広告の会ニュース83号 - 1/14
法人化に賛成した国立大学長への謝罪と損害賠償の要求 - 12/27
「意見広告の会」ニュース77 - 12/27
抗議辞職した都立大四教授支持声明 - 12/24
「意見広告の会」ニュース71(2003.12.13) - 12/13
「意見広告の会」ニュース 70 (2003.12.12) - 12/13