はじめに
国会で改憲勢力が多数を占めており,世論も徐々に変化を見せるなど,護憲運動はもはや一歩も引けない状況にあります.PKO法から有事法,そして自衛隊の戦場への公然たる派兵という,この国の軍事化のスピードの加速化を見れば,もはや一刻の猶予もないと考えるべきでしょう.政治に不確実な要素はつきものですが,何か改憲に不利に働く要素をぼんやり想像してそれを当てにしたりするわけには行きません.もちろん今から諦めては話になりません.早急に反撃を組織し,この社会の雰囲気を一変させることが必要です.そのような問題意識からの提案です.1.どうしたら改憲阻止ができるか「逆算」しよう
改憲阻止・教基法改悪阻止を達成するのは容易なことではなく,質的にも量的にもこれまでとは格段に異なる運動が要求されると思います.これらの問題で重要なのは,ただ「全力をあげる」というようなことではなく,「目的を実際に達成するためには何が必要か」という「逆算」です.さまざまな分野での努力が必要ですが,ひとつの重要な分野が,大多数の国民に改憲・教基法改悪が何をもたらすかをよく理解してもらうための宣伝活動であることは間違いありません.そしてそのための主要なメディアは今なお従来型のそれ,つまり放送と新聞です.大多数の人々に最も影響を与えているのはこれらのマスメディアだからです.そこで,改憲阻止・教基法改悪阻止のための大規模な従来メディアによるキャンペーンを提案したいと思います.また,最近のインターネット利用の加速化を考えれば,ネット上の広告も視野に入れる必要があると思われます.
もちろんこれまでも多くの人や団体が意見広告運動などに取り組んで来ましたし,また今も取り組んでいます.しかし量的には少なく,体制側(憲法の立場から見ると反体制側)による大量の言説と宣伝にすぐにかき消されてしまうように思われます.そこで,意見広告運動を,多くの人に明確な印象を与える程度の規模と密度で集中的に実施することが重要ではないかと思います.
2.本格的・大規模な広告キャンペーン
数回の新聞の全面広告もそれなりの効果はありますが,宣伝における最も重要な要素はその量です.人々の記憶に定着させ社会的な効果を生むためには,それがある臨界点を超えなければなりません.おそらくこれは広告業界では常識でしょう.このような,いわゆる「1+1が2ではなく3にも5にもなる」という領域,これを物理学では「非線形効果」と言いますが,そこまで行って初めて「広告を打った」と言うに値するのではないでしょうか.そしてここで初めて意見広告は世論形成への「目に見えた力」となることが期待できます.
このような規模の広告を実施するにはもちろんケタ違いの資金が必要です.しかし,もし多くの人がこの方法の「目に見えた力」を確信すれば,この多額の資金を集めることは不可能ではないと思います.そのような金額として100億円を想定して見ました.これは莫大な金額に思われますが,たとえば 10万円×10万人で達成できます.多くの人がこれが可能であると信じることができれば,護憲勢力は100億円の資産家になります.
100億円では,大ざっぱですが,つぎのような規模の広告が可能です.
新聞全国紙全面広告(1千万円) 1,000回 または
テレビ15秒スポット広告(100万円) 1万回 または
ラジオ20秒スポット広告(10万円) 10万回
これだけの規模になると,万人向けの平均的な内容のCMだけでなく,イメージ的な広告や,文章主体の理詰めのものなど,いろいろな考えの人にターゲットを絞った複数の種類の広告が可能になります.
もし一人当たり10万円で憲法改悪阻止が「買える」のなら,これはとても安い買い物ではないでしょうか.そしてそのように考える人が10万人はいても不思議ではないと思います.憲法が,九条の空文化のように,無視され蹂躙されている状況を考えれば,改憲阻止,憲法擁護と言うより,むしろ憲法をあらためて選び取る,そして「発効させる」闘いというべきかも知れません.売買に喩えれば,憲法を100億円で「買い戻す」のです.
3.国立大学独法化阻止のための意見広告運動の経験
このようなことを考えた背景を少し説明いたします.国立大学の教職員有志は,国立大学の独立行政法人化を阻止するべくさまざまな運動に取り組みましたが,最終盤では2ヶ月ほどの間に4回の新聞広告を,約4千万円のお金を集めて,全国紙の半ページや全面に打ちました*.最後の段階では,重要問題にもかかわらず報道しないメディアに代わって,我々が紙面を買い取って報道するという考え,つまり「自主報道」という考えが生み出されました.実は,私はこれに,それまでのどのような集会や署名運動よりもずっと強い手応えを感じました.昨年5月にも成立と見られていた法案が延長国会までずれ込んだのです.
最初の広告は,面積のほとんどが醵金者の名前で埋められ,いくつかのスローガンが小さな字で書かれているというものでした.私は,こんなはずではなかった,これではほとんどお金をドブに捨てるようなものだとがっかりしました.しかし回を重ねるごとに内容は進化し,最後の2回はかなり説得力のある「自主報道」になっており,マスメディアや国会審議に影響を与えたと思われます.
結果的には敗れましたが,もしこの運動が2倍の規模で実施できていたとしたら,あるいは勝てたのではないか,そのような感触を持ちました.
* 国立大学法人法案に反対する意見広告の会
http://www.geocities.jp/houjinka/
最後の広告のhtml 版 http://ac-net.org/dgh/03/701-ikenkoukoku.html
新聞の全国紙に全面広告を出す費用は約1千万円ですが,これは決して高くなく,むしろおそろしく安価であると見るべきです.なぜなら,同じ数を仮にダイレクトメールで届けるとすれば,その40倍,つまり約4億円が必要なのです.つまり,1千万円というのは,意味のある広告活動には「量」が必要であり,したがって経費もそれなりに必要であるという,極めて当たり前の数字に過ぎないのです.
私自身も,独法化阻止運動団体の事務局長として独法化反対に取り組んでいましたが,資金的にはせいぜい数十万円の規模で,数千万などという金額は思いもよりませんでした.ある集会で東大の教員の方が,「身銭を切らなければ本物ではない」というような発言をされ,その方の呼びかけて始まった新聞広告運動ですが,その人自身も短期間に4千万円もの金を集められるとは思っていなかったかも知れません.最後の広告を計画する際には,もはや多くの人からの醵金は難しいだろうから,少数の,多額の出資者が必要だということで,一口50万円もの高額醵金者が募られました.
4.複数のグループによる切磋琢磨
独立行政法人化問題での醵金者の母集団は国立大学関係者で,その人口は15万5千人です.国立大学初まって以来の危機だというので,これだけのお金が集まったのでしょう.しかし憲法改悪は戦後体制始まって以来の全国民的な危機であり,その影響を受けるのは1億2千万の全国民です.九条の持つグローバルな意味を考えれば,地球規模の問題と言っても言い過ぎではないでしょう.仮に国立大の広告運動と同じ人口比でお金が集まるとすれば,4千万円×(1億2千万人÷15万5千人)=310億円が集まってよい計算になります.就業人口の割合などを考慮して3分の1のファクターを掛ければ100億円です.因みにアメリカの大統領予備選挙で,民主党のディーン候補が2003年に集めた金が約4000万ドル(約44億円)と言われています.
もちろんこのような活動は,労働組合などの既存の組織にも求められますが,しかし最も効果的な広告に取り組めるのは,そのためだけに作られた臨時の組織だと思われます.しかし100億円を一括して扱う団体を新たに立ち上げるという提案ではありません.それは困難なだけでなく,いろんな意味でリスクが大きすぎるでしょう.そうではなく,これまで取り組んだ団体や,新しい団体が出来て,それらが互いに競い合い,それによってより効果的なCMが作られるようにするのがいいと思います(今流行の“競争的環境”).資金提供者は,提案される広告の中味を見てどのグループにお金を出すかを決めることが出来ます.これだけの資金規模で初めて許される「贅沢」です.
複数のグループによる多様性と,広告に必要な「繰り返し効果」(同一性)とを両立させるため,統一のロゴマークやキャッチコピーを共有することが望ましいでしょう.もちろんCMの制作に当たっては,すぐれた映像作家の協力を求めることが重要です.優れた作曲家に「護憲ソング」の作曲も委嘱したらいいと思います.醵金者の名前を列挙するようなタイプの広告も,あるいは初期には必要かも知れませんが,問題自体に切り込む,内容豊かで,分かりやすく,そして心を打つ本格的なCMこそが重要です.
広告業界を儲けさせるだけというのはあたりません.メディアのCM枠はだいたい決まっており,いずれにせよ商品代金などでわれわれがそれに相当する金額を払うことになるのです.それならばより意味のあるCMでその枠を埋めた方がいいのではないでしょうか.
先に,憲法を「買い戻す」と言いましたが,もちろんこれだけで改憲阻止が確保されるわけではありません.むしろそのための第一歩と言うべきでしょう.しかし,この程度の事はどうしてもやらなければ勝てないという,そのような「不可欠の第一歩」ではないでしょうか.
5.メディアへの国民の権利
関連して,メディアの公正さの追及も併せて行わなければなりません.民間放送といえども,有限なバンド幅を持つ電波という公共財を使っているのですから,これへの国民のアクセス権を主張することが重要です.その権利には,受け手としてのアクセス権だけでなく,送り手としてのアクセス権もあります.また,ニュースの公正さを要求することで,デモなどを不当に低く扱うことを止めさせれば,それは上の広告と同様の効果を持つことになります.例えば憲法擁護集会のニュースに120秒が使われれば,それは800万円の広告に相当します.
6.参院選向けに前倒しで「10億円計画」を
さて,いつ頃からこの計画を始動すべきかということですが,夏の参院選に向けて,今からでも始める必要があると思います.とりあえず,十分の一の規模の10億円で始めてはどうでしょうか.
「隗より始めよ」とよく言われますが,これをあまり一般化しすぎると,何かアイデアを持っていてもなかなか口に出しにくいということになり,これはマイナスです.だれにでも,また上に述べたように複数の人にこの運動のリーダーになる道は開かれています.「お前も10万円出すか?」との意味であれば,もちろん「隗より始め」ます.しかし,今でも多くの意見広告が出されているので,この運動は「すでに始まっている」とも言えます.
冒頭で「逆算」が重要と述べたことの繰り返しになりますが,要するに本気で改憲を阻止するつもりでやるのか,それとも「頑張った」と言えればそれで満足するのか,という問題なのです.もし前者であれば,ここで述べた提案はそのための必要条件のように思えるのです.
意見広告運動リンク「継続」は意見広告運動を継続中● 意見広告*憲法
市民意見広告運動 継続
イラク攻撃に反対する意見広告の会 予定なし
「有事法制」に反対し、平和憲法を生かそう! 日本キリスト教協議会(NCC)
第九条の会ヒロシマ 継続 2002年の意見広告のページ
有事立法の廃案と司法改革の危険性を訴える意見広告運動
「社会科学研究者は訴える。米国の対イラク先制攻撃に反対します。日本のイラク攻撃加担に反対します。」
イラク攻撃と有事法制に反対する意見広告 市民意見広告運動と同じ
沖縄タイムス労働組合の意見広告
女性の憲法年連絡会
私たちは「日の丸・君が代」の強制に反対します。 千葉県高等学校教職員組合分会ほか
有事法制に反対する君津地域市民連絡会
01年2月24日付『中国新聞』?「広島県内版」
「自衛隊イラク派兵反対・イラク支援」意見広告島根県実行委員会
● 意見広告*平和
8.9平和アピール実行委員会,長崎
特殊法人等労働組合連絡協議会
「米国の対イラク先制攻撃」と「日本のイラク攻撃加担」に反対する「意見広告」
大阪府・箕面市議会議員(無所属・みどりの市民派)
奥村美枝(箕面市民)ほか
「キリスト者の戦争拒否宣言」意見広告
自治労鳥取県本部
自治労九州地連
愛と平和のプロジェクト 継続 (媒体掲載料一覧あり) “質問にお答えします”
錦江湾・鹿児島の海の非核化をめざす意見広告の会
グローバル・ピース・キャンペーン
社民党長野県連合
岐阜県教職員組合
● 意見広告*教育基本法
教育基本法改悪反対・「多彩な意見広告」の会
教育基本法改悪に反対する署名実行委員会
子ども・教育・くらしを守る横浜教職員の会
「日の丸・君が代」強制に反対する意見広告の会
● その他
グリーンピース・ジャパン → その意見広告 / 自衛官ホットライン / フォーラム平和・人権・環境 / 市民の意見30の会 / 人文字 メッセージ NO WAR → ニューヨークタイムズ掲載広告