2004年01月19日

「意見広告の会」ニュース87

Date: Sun, 18 Jan 2004 02:27:42 +0900
「意見広告の会」ニュース87

*「ニュース」の配布申し込み、投稿は
  qahoujin@magellan.c.u-tokyo.ac.jp に、お願い致します。

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目次
1 首都圏ネットの声明  (重要な声明です)
2 非常勤講師が削減されているーー各大学の状況
3 東大佐々木総長の寄稿 「日経」1/10

 *2について、各大学の状況をお知らせ下さい。

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1 国立大学法人4月移行の凍結を求めて、国会要請
2004年1月17日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

○国立大学法人法案は、与党の強行採決によって昨年の通常国会会期末ぎりぎりに成立し、昨年10月1日施行された。しかし、施行後、国会審議の過程で鋭く指摘された問題点が次々と現実化し、運営費交付金等の問題で国立大学法人法成立の前提さえ崩壊する状況となっている。こうした事態は、政府、文科省、財務省等行政府が国会における審議経過、政府側答弁、衆参両院における附帯決議等をことごとく無視したために生じたものであり、国権の最高機関である国会としては、絶対に容認できるものではないはずである。

○国立大学協会が昨年12月11日臨時総会を開催し、このまま事態が推移するならば各学長は初代学長の指名を返上せざるを得ないとの決意を表明するという異例の事態になっている。そして、1月10日の日本経済新聞が報道したように、国大協会長である佐々木東大総長が「四月を期してスムーズに法人化が行えるという見通しを持つ学長たちがどの程度いるのか、心もとない限りである。」と認めざるを得ない状況なのである。私達は、法成立の前提が崩壊し、さらに準備が出来ない以上、国立大学法人法制を構成する「整備法」附則第1条を当面凍結し、4月1日の国立大学法人移行を延期することが必要であると考える。その上で、国立大学法人法制全体について国会で徹底的に再検討を行うことが事態打開の最善の道である。

○国立大学法人法反対首都圏ネットワークは、16日、国会各会派の文部科学関係委員に対して、来る19日からの通常国会において国立大学法人移行凍結のために尽力するよう申し入れ活動を行った。以下に、要請活動に際して持参したメモランダム(一部修正)を示す。各方面での議論の参考になれば幸いである。

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国立大学法人移行凍結についてのメモランダム

2004年1月16日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

1.凍結の根拠

 法案成立の前提となっていた下記の3条件が崩壊しようとしている現在、立法府としては、行政府が法成立の前提となっていた事項を実現するまで法を凍結すべきである。

(1)運営費交付金
【法成立時】
運営費交付金は国の義務的経費とされ、通常の交付金と同様の収支差額補填方式で算出することとなっていた。
【現在】
運営費交付金は総額決定方式に変更され、効率化・経営係数等導入によって逓減される算定ルールに切り替えられようとしている。また、裁量的経費への移行が企図されている。

【解説】
運営費交付金が国の義務的経費であることを示す根拠として、以下のような主張がなされていた。
・「国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法)第3条によって学校教育法第2条第1項が改正され、国立大学法人を国と同義のものと位置づけている。従って、国立大学の設置者は国とみなされる。
・学校教育法第5条は経費の設置者義務を明記しており、国立大学に必要な経費の準備は国の義務というこれまでの仕組みはかわらない。

これは、遠山文部科学大臣(当時)の答弁「法人化後も国として必要な財源措置を行うことといたしておりまして、国を設置者とすると提言することによって法人化後も国立大学に対する国の責任を明示しようとした検討会議の最終報告の趣旨は実現されているものと考えております。」(2003年6月26日参議院文教科学委員会)によって確認されています。また、松田総務省行政管理局長の答弁「国が設立する法人、かつ財源措置が国によって義務づけられている、そういう法人でございます」(同前)でも国の義務が明示されている。

【資料】
◎国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)
第3条 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。
第2条第1項中「国」の下に「(国立大学法人法第2条第1項に規定する国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む。以下同じ。)」を加える。

◎学校教育法
第5条 学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定のある場合を除いては、その学校の経費を負担する。

(2)中期目標・中期計画
【法成立時】
中期目標・中期計画の作成主体が大学であることが確認されており(衆議院附帯決議第4項、同参議院第5項)、大学の自主性確保については、国会審議においてくりかえし政府側がそれを保証する旨答弁したところである。

【現在】
2003年12月18日開催の国立大学法人評価委員会第2回総会
(www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/gijiroku/001/03121901/002.htm)
によって「達成状況を示すための指標(数値指標を含む)」の設定が部局ごとにも求められる事態になっている。このような修正要求を文部科学大臣が認め、各大学に指示する事態となれば、国会答弁ならびに附帯決議に明瞭に反する。

(3)適法的移行
【法成立時】
文部科学省は04年4月1日までにはすべて準備が整い、適法的に移行できると答弁している。
【現在】
労働基準法に基づく就業規則(関連規程を含む)と労使協定、労働安全衛生法に基づく労働環境整備など法人移行に必要な法定事項について3月31日までに準備が完了する目途はほとんど全ての大学で立っていない。また、法人化後における管理運営・財務会計の設計など、法人の基本的骨格に関することがらについて、ほとんどすべての大学で学内議論がようやく始まったに過ぎない。このような現状は、「万事にわたって膨大な史上最大の仕組みの見直し作業を大学に求める一方で、制度の確定に必要なルールの実質的な決定が遅れ、時間面でのリソースが絶望的にひっ迫していることにある。(中略)総じて、学生を含めると数十万人に上る関係者がいるこの膨大な改革を行うにしては移行過程全体の責任体制は非常にぜい弱であり、それこそ薄氷を踏む思いであると言わざるを得ない。四月を期してスムーズに法人化が行えるという見通しを持つ学長たちがどの程度いるのか、心もとない限りである。」(日本経済新聞1月10日)という佐々木東大総長の言葉に端的にあらわれている。

2.凍結の必要性
(1)上記の前提条件1が崩壊したまま、国立大学法人へ移行し、かつ国立学校特別会計システムが廃止されるならば、国立大学の財政は破綻する。
(2)前提条件2が無視されたまま、中期目標・中期計画の策定がなされるならば、大学の自主性が無視され、法人法精神ならびに附帯決議に背反する事態が生じる。
(3)現状では、労働基準法、労働安全衛生法等に規定される諸条件が04年4月1日までに整備される状況ではない。

3.凍結すべき条項
 上記のことから、本年4月1日に国立大学が国立大学法人へ移行することを当面凍結することが最も適切な措置であると考えられる。4月1日移行は国立大学法人法には規定されておらず、「国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」附則第1条によっている。従って、同条を国会による議決があるまで凍結するという最小限の措置によって、最悪の事態を回避することが可能となる。

【資料】
◎国立大学法人法
第3条
別表第1に規定する国立大学法人及び別表第2に規定する大学共同利用機関法人は、準用通則法第17条の規定にかかわらず、整備法第2条の規定の施行の時に成立する。
2  前項の規定により成立した国立大学法人等は、準用通則法第十六条の規定にかかわらず、国立大学法人等の成立後遅滞なく、政令で定めるところにより、その設立の登記をしなければならない。

◎国立大学法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)
第2条 次に掲げる法律は、廃止する。
1 国立学校設置法(昭和二十四年法律第百五十号)
2 国立学校特別会計法(昭和三十九年法律第五十五号)
附則
第1条:この法律は、平成十六年四月一日から施行する。

4.凍結解除条件
凍結解除は法成立の前提条件確保が確認される時とする。具体的には、
(1)運営費交付金が国の義務的経費と位置づけられ、かつその算出にあたっては収支差額補填方式が採用されること
(2)中期目標・中期計画策定にあたって大学の自主性確保が確認されること
(3)労働基準法、労働安全衛生法等、国立大学法人に適用されるべき法律に照らして準備が可能であると判断されること

なお、国立学校特別会計は年度単位で執行されているので、凍結期間は最低1年となろう。


2 非常勤講師の削減 (各大学の情報をお知らせ下さい−−事務局)

(1)佐賀大学
 佐賀大学では再来年度(05年度)から3割削減ということになっています.来年度はなんとか現状維持でやりくりするとはいいながら,それでも少し削減になりそうです.3割削減に向けて,学科から提出する書類に3段階の必要度ランクを付けさせられました.

教授会での学部長の説明では,「空き定員がなくなったので,その分非常勤の必要度も減ったはずだから」というものです.ではなぜこの時期全国一斉に空き定員解消が起こったのか,と質問しましたら,法人化移行の時点での現員数が(その後のいろんな予算の)基礎になるので,各大学とも急いでそうしたのだ,という説明でした.これは調べればすぐに分かるとは思いますが,それほど埋められたとも思えないのですが・・・

(2)岐阜大学
 当大学では以下のように成りつつあり,学部内で非常勤講師担当科目を担当する教員を捜しています。また,学内他学部から派遣される非常勤講師の手当はなくなることになります。
 なお、来年度以降、非常勤講師の予算が50%削減となるとの情報が入りました。
 これを受けて
 (1)来年度以降の新カリキュラムの非常勤講師担当科目については、廃止も含め、早急に再検討する。
 (2)来年度(平成16年度)の旧カリキュラム(来年度2年生以上)は、例年通りの非常勤講師採用予定で行うものとする。なお、必要な経費は、農学部(あるいは全学)にお願いする。
 (3)さ来年(平成17年度)以降の旧カリキュラムについては、隔年開講や担当者変更について今年の6月までを目途に見直し作業に入る。


3 佐々木東大総長の寄稿
秒読み国立大学法人化の課題(1) 
“新人事制度作り難題”(日本経済新聞、1月10日号、「教育」欄)

遅すぎるルール決定
時間不足で不安募る現場

四月からの国立大学法人化は秒読み段階。準備状況や法人化後の課題を現職の大学学長に寄稿してもらった。初回は国立大学協会会長も務める佐々木毅東京大学総長。

ある所で国立大学の学長たちが、「四月に果たして給料が本当に職員の手元に届くのだろうか。そうしたことを考えると、眠れなくなることがある」と話をしていたのを耳にしたことがある。国立大学の法人化についての世間の抽象論とは別に、現場はこうした極めて具体的で現実的な不安に悩まされている。

 問題の所在は極めてはっきりしている。すなわち、人事制度を非公務員型に変えることを含め、万事にわたって膨大な史上最大の仕組みの見直し作業を大学に求める一方で、制度の確定に必要なルールの実質的な決定が遅れ、時間面でのリソースが絶望的にひっ迫していることにある。

 年末に報道された運営費交付金算定ルールをめぐる国立大学協会と文部科学省とのやりとりは、財務面でのリソース問題を浮き彫りにし、事態をさらに厄介なものにした。

 総じて、学生を含めると数十万人に上る関係者がいるこの膨大な改革を行うにしては移行過程全体の責任体制は非常にぜい弱であり、それこそ薄氷を踏む思いであると言わざるを得ない。四月を期してスムーズに法人化が行えるという見通しを持つ学長たちがどの程度いるのか、心もとない限りである。

 残された三カ月において処理しなければならない課題は山積している。
理事や監事、それに経営協識会の学外メンバーの選出はかなり進んでいるようである。しかし、中期計画についてどのような修正が求められることになるのか、年次計画がどのようなものになるのかなど、なお十分に明らかでない。

包括できぬほど多種多様な活動

 大学側の準備にそくしていえば、どこの大学においても残された最大の課題は人事制度の新しい仕組みの創出である。

 周知のように大学では実に多種多様な研究教育活動が行われ、大きな病院を抱えている大学も少なくない。こうした中で非公務員型の採用を踏まえ、複雑な活動実態を包括できるような就業規則を新たに定め、併せて人事管理や給与体系の今後のあり方を構想するというのは難事中の難事である。

 その際、退職金制度という重要な要素は外部的与件として存在している。しかも、四月の法人発足に当たっては関係者の必要な同意を得られるようにしなければならないのである。大学においてはこれまで教官と事務官との二元的な人事体制をとってきたが、この作業は人事制度全体を管理する体制も人材もないところでの作業であるから一層難しいことになる。

 例えば、法人化以後においてはこれまでの定員という概念はなくなることになっているが、これを自由化として専ら受け止め勝手気ままな人事政策をとるならば、やがて、人事管理体制そのものが崩壊し、学内の人事は無秩序化を免れないであろう。しかしながら、他方で旧態依然とした態度で万事対応しようとするならば法人化が与えてくれた貴重な新たな挑戦の機会を自ら放棄することになろう。

 およそ管理がリソースの確定とその有効な活用を念頭に置くものである以上、明確な共通の学内原則を確定しつつ学長や部局長の裁量の余地を拡大するのが当面の取り得る処方せんである。

 いずれにせよ、この肝心な人事制度についての見通しが立たなければ、四月からの法人の長としての任を果たせないということで、その役目を返上することを考えなければなるまい。

事務官の職務意識改革必要

法人化に伴う国立大学の研究教育面での変化についてはここでは立ち入ることを控えたい。なぜならば、研究と教育に従事する教官団の活動が法人化によって一変するといったことはあり得ないからである。

 むしろ、法人化によって大きな影響を受け、その帰趨(きすう)を決めるのは事務官集団である。これまで国立大学は研究教育の担い手たちと、それを支えつつも同時にコントロールする事務官集団との複合的組織であった。後者は最終的には中央の官僚制と結びついていた。

 法人化は制度的に大学全体を研究教育活動中心に組織化し直すことを趣旨としている。つまり、事務官集団を中央官僚制の末端として位置付けるのでなく、研究教育のサポーティング・スタッフとして可能な限り位置付けること、それとともに日常的な管理事務を可能な限り学内で規制緩和し、見直すことがそこに含まれている。

 したがって、事務官にはどの領域で研究教育をサポートする役目を果たすかについての明確な目標と意識改革が求められることになる。そして日本の大学に決定的に欠けているのが良質なサポーティング・スタッフの存在であることは周知の事実であり、この改革は研究教育の改善にとっても決定的に重要である。

求められる立法者機能

 しかしながら、官僚制的体質からの解放は大学法人が研究教育の今後のあり方について自ら識見と洞察力を備えなければならないことを同時に含意している。大学の執行部がこうした能力を備えるためには、それに必要な精査・助言機関を学外者の参加をも含む形で自ら作り上げるといった準備が当然求められる。

 学長のリーダーシップなるものが学術的精査なしに、突然思いつき的に登場するというような事態は、法人化の姿として到底望ましいとは考えられない。

 こうした根本問題の処理を含め、日常的案件の処理とは違ったいわゆる立法者機能をどこまで実現できるか、残された時間は極めて少ない。 

tjst |1月19日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000476.html |意見広告の会ニュース
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