2003年12月28日

池澤夏樹氏「自衛隊の派遣は大きな間違いであるとぼくは考えます。」

パンドラの時代 No 4 池澤夏樹氏「ロバは撃つべきか」より

・・・・・人を殺せる道具を手にして、疑心暗鬼の状態で、見知らぬ人々の前に立つ。
 日本の兵士はそういう状況の中へ送り込まれようとしています。・・・・・
・・・・・ 日本国憲法の前文と第九条は、国家の運営に暴力を用いないという宣言です。
 第二次大戦で数千万の死体を積み上げたことへの反省、見知らぬ者を殺し、家族を殺され家を焼かれたことへの反省から、日本人は国の運営に暴力を用いないと決めた。

 この宣言は後に少しずつ歪められ、結局のところ日本はまた軍隊を持つことになりました。

・・・・・

 親の体験はなかなか子供には伝わりません。まして孫にとっては遠い話。
 血まみれ焼けこげの死体が目の前に転がっていたなんて、あまり聞きたい話ではない。
 今、世の中は享楽に満ちています。そういう社会を日本人は築いてきた。

 だけど、その先で暴力は待っているのです。

・・・・・

 政治家が軽い言葉をやりとりしたあげく、自分たちは戦乱の地に送り出される。
 殺されるかもしれない。殺すかもしれない。
 どういう時にどう行動すればよいか、基準がない。
 これは戦争なのか、戦争ではないのか、最も大事なこの点があまりに曖昧で、何をやってもやらなくても、後で非難されそう。

 政治家はアメリカの方しか見ていません。具体的な判断は現場に押しつける。いざとなったら逃げる気でいる。
 これは軍隊のありかたとしても不幸なことです。
 シビリアン・コントロールが悪い形で機能している。

・・・・・

人を殺せる道具を手にして、疑心暗鬼の状態で、見知らぬ人々の前に立つ。
 日本の兵士はそういう状況の中へ送り込まれようとしています。

・・・・・

日本人もまた異文化に対して無知で不器用です。
 戦後58年間、われわれはアメリカしか見てきませんでした。
 だから、日本の兵士はアメリカ軍の失敗をそのまま踏襲することになるでしょう。
 イスラムを知らず、武力によって社会を壊された人々の恨みを理解せず、民衆に支えられたレジスタンスの威力を知らないまま、戦地に送られる。
 現地について最も詳しいNGOの人たちの意見を容れる気配もない。

 今、自衛隊が行くことには何の意味もありません。
 イラクの人々の暮らしがよくなるわけではないし、国際社会で日本の評判が上がるわけでもない。
 得るものより失うものの方がずっと多い。

・・・・・

 自衛隊の派遣は大きな間違いであるとぼくは考えます。
(池澤夏樹 2003−12−28)

(・・・・・は引用時に省略した部分)

tjst |12月28日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000422.html |noblesse oblige , イラク戦争 , 荒廃の諸相 , 日本国憲法と教育基本法の改正問題
Comments

分類「 noblesse oblige, イラク戦争, 荒廃の諸相, 日本国憲法と教育基本法の改正問題」の記事より

元防衛庁教育訓練局長「シビリアンコントロールに対する信頼が失われます」 - 12/24
山口二郎氏「イラクへの自衛隊派遣に反対する」 - 12/23
国際政治学者と国際法学者の違い - 12/22
与党自らが情報操作を行わざるを得ない理由 - 12/22
"「自衛隊派遣は仕方の無いこと」そこで思考停止だ" - 12/21
「私たちは日本を歓迎します。しかし断じて「今」ではないのです。」 - 12/21
無関心という「罪」の重さ - 12/21
政府のスポークスマンを演じる記者 - 12/21
イラク特需のための自衛隊派遣か - 12/21
陸自説明会で家族が劣化ウラン弾の影響を懸念 - 12/21
「砂漠地帯に宿営する自衛隊員の被ばくは避けられないのではないか」 - 12/20
「そんな中で日本の首相官邸だけが悲壮感を漂わせ・・・」 - 12/20
「朝日のイラク攻撃反対はニセモノ」 - 12/20
"People are now free to fight for their country's sovereignty and not Saddam" - 12/18
"その都度、人間は安易な処方箋を信じて自壊への道をたどった" - 12/17
「最先端の測定装置で被曝の数値を測り安全度を確認する必要性」 - 12/14
「なぜ、銃撃戦の真最中に戦車に石を投げ付けてくるやつがいるのか」 - 12/14
ブッシュ政権下でのイラク撤兵の可能性 - 12/13
「日米安保条約を尊重すればイラク派兵はできない」 - 12/13
NHK の情報操作:「ようこそ日本人」が「ようこそ自衛隊」に - 12/12
「政治家はこの程度の理屈で、国民を戦争に行かすのか」 - 12/11
サマーワでの被爆問題 - 12/09
「死んでからでは何も言えない」 - 12/07
自衛隊イラク派遣、欧州で「断念」報道相次ぐ - 11/16
元防衛庁教育訓練局長:自衛隊のイラク派遣を行わないことを首相に求める要望書 - 10/29