2003年12月27日

「意見広告の会」ニュース77

「意見広告の会」ニュース77
Date: Sat, 27 Dec 2003 02:04:23 +0900
From: 「会」事務局CXH02476@nifty.ne.jp
1 法人化に賛成した学長に行動と謝罪と損害賠償を 読者からの手紙
2 自衛隊のイラク派遣に反対する署名
3 「東京都 基本指針」に対する都立大理学部教員のコメント
4 石原知事記者会見
5 都立法科大学院に関する「東京新聞」特集記事

* 事務局より
投稿に際しましては、氏名・所属などの掲載可否を明瞭にお示し下さい。不明の場合は、原則として「所属」掲載・匿名とさせていただきます。

Date: Sat, 27 Dec 2003 02:04:23 +0900

From: 「会」事務局CXH02476@nifty.ne.jp

Subject: 「意見広告の会」ニュース77

「意見広告の会」ニュース77


2 自衛隊のイラク派遣に反対する署名

4 石原知事記者会見


1 法人化に賛成した学長殿 
                                       
                   山口大学事務職員50代係長
 
数千人の意見広告の会や全大教や法人化反対の政党のいろいろの行動が国会での法人化法案に付帯決議を生みました。

微力ですが、私も意見の会に賛成しも数万円の広告費をカンパしました。全国の同志結集で全国紙に数回にわたり、数千万円の経費を掛けて意見を述べました。

付帯決議で、悪化の歯止めがつけられたかに見えましたが、財政面で政府与党・財務省の恒常的な予算削減計画は、財政の停滞状況に導き、大学が財源を集中したほんの一部の分野しか陽が当たらないこととなります。

今までの国立大学では毎年の定員削減計画により大変苦しんだ計画に匹敵する最悪の恒常的な予算削減計画です。

数大学の学長は、国大協で反対の意見を述べられ、危険であることの警鐘を鳴らし続けられたと報道されています。 

法人化に賛成した学長又は、意見を述べなかった学長は、直ちに行動を起こすべきです。現在要望書を提出したとしていますが、この計画が決定されたら、長期にわたり各大学に数億円以上のの減額が予定されていると報道されています。

民間会社なら社長の判断ミスで、組織に多大な損害を与えた場合は、辞職する例もあります。

これは、恒常的な予算削減計画を乗り切るために収入減を授業料等の大幅値あげでカバーするするしか方法がなく、国民に対して国立大学の良さを捨てたに責任もその学長にはあると思います。

この1月に恒常的な予算削減率計画が決定がされたら、学内外の反対を押し切り、賛成した学長として組織に対して謝罪と損害賠償を考えるべきです。

各大学は、恒常的な予算削減計画が決定されると、血のにじむような計画をこの4月から検討しなければなりません。

教職員は、定員削減計画で教職員が減り恒常的な長時間勤務となり体調を崩す教職員も増大しています。この悪夢を恒常的な予算削減計画が更に増幅させることは、間違いありません。

法人化に賛成した学長、及び了解を与えた学長は、行動するべきです。


2 イラクへの自衛隊派遣反対署名

2003年12月26日(金)
大学関係者の皆様

イラク問題に関連して、日本が大きな岐路に立っています。大学界でも主に人文社会科学分野の研究者の方が少なからず市民運動の中心となって活動されておられますが、大学界からの声としてはイラク派遣への危惧は日本社会に十分には届いていないように思います。

そこで、東京都議会と横浜市議会への要請書(*1) 、京都地裁への要望書(*2) と同様の形式でネット署名を行い、問題分析や提案等を含め、メッセージをいただいて、大学界の思いをさらに少しでも日本社会に伝えられれば、と思います。

場所は、http://poll.ac-net.org/3/ です。署名受付窓口はこのページのみです。インターネットによる省力化を活用する短期集中型署名運動ですので、ご理解ください。

(*1) http://poll.ac-net.org/1a/
(*2) http://poll.ac-net.org/2/

辻下 徹

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自衛隊のイラク派遣に反対する研究者の声明への署名の呼びかけ

 現在、小泉政権は自衛隊をイラクに派遣しつつあります。たとえ一国平和主義といわれようとも、第2次世界大戦以後、国家の行為として他国民を殺傷したことがなかったことは、我々日本人の誇りだったはずです。日本はいつから、為政者の思いつきで憲法を無視できる無法国家になったのでしょうか。自衛隊のイラクへの派遣を即刻中止することを政府に要求する呼びかけに賛同してくださるよう、全国の研究者の皆様に訴えます。なお、この署名は1月11日東京で開かれる派兵反対集会において紹介いたします。

呼びかけ人代表 山口二郎 北海道大学

赤井 純治(新潟大学),在田 一則(北海道大学),五十嵐 尤二(新潟大学),池内 了(名古屋大学),伊豆 利彦(元横浜市立大学),出水 薫(九州大学),一楽 重雄(横浜市立大学),一條 眞古人(北海道大学),岩永 定(鳴門教育大学),宇野 忠義(弘前大学),浦辺 徹郎(東京大学),大谷 尚子(茨城大学),大野 裕(名古屋大学),神沼 公三郎(北海道大学),河合 崇欣(名古屋大学) ,北川 勝弘(名古屋大学),栗山 次郎(九州工業大学),小島 純一(茨城大学),小林 邦彦(名古屋大学),小林邦彦(名古屋大学),駒田 聡(京都教育大学),近藤 義臣(群馬大学),後藤仁敏(鶴見大学短期大学部),斎藤 周(群馬大学),佐久間 正(長崎大学),笹沼 弘志(静岡大学),志賀 徳造(東京工業大学),清水 肇(東北大学),庄司 惠雄(お茶の水女子大学),白井 浩子(岡山大学),白井 深雪(東京大学),鈴木恒雄(金沢大学),竹浪 聰(富山大学),田澤 紘一郎(信州大学),谷本盛光(新潟大学),多羅尾 光徳(東京農工大学),塚本 次郎(高知大学),辻下 徹(北海道大学),豊島 耕一(佐賀大学),中川 弘毅(千葉大学),中村 郁(北海道大学),
仲尾 善勝(琉球大学),永井 實(琉球大学),永岑 三千輝(横浜市立大学),根森 健(新潟大学),能條 歩(北海道教育大学),野田隆三郎(元岡山大学),橋本 満(電気通信大学),長谷川 浩司(東北大学),服部 昭仁(北海道大学),浜本 伸治(富山大学),濱田 武士(東京海洋大学),早川 洋行(滋賀大学),福島 和夫(信州大学),藤田詠司(高知大学),藤本 光一郎(東京学芸大学),保谷 徹(東京大学),本田 勝也(信州大学),前田 靖男(東北大学),増子 捷二(北海道大学),間嶋 隆一(横浜国立大学),松田 彊(北海道大学),松尾 孝美(大分大学),松方 冬子(東京大学),三島 徳三(北海道大学),宮本 孝甫(琉球大学),森 英樹(名古屋大学),森本 淳生(京都大学),山形 定(北海道大学),山口 和秀(岡山大学),山根 正気(鹿児島大学),吉岡 直人(横浜市立大学),吉田 正章(九州大学),渡辺 信二(立教大学),渡辺 明日香(北海道大学),渡辺勇一(新潟大学),渡邉 信久(北海道大学)

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自衛隊のイラク派遣に反対する研究者の声明

 現在、小泉政権はアメリカの求めに従って自衛隊をイラクに派遣しようとしている。現地には、イラク特措法でいう安全な場所は存在しないことは明らかであり、また自衛隊はイラク国民の切望する平和や復興のためよりも、アメリカ軍によるイラク支配を支援しに行くことも明白である。このまま自衛隊が派遣されれば、それはアメリカ軍と一体の軍事組織とみなされることは不可避である。そして、自衛隊はアメリカ軍支配に反発するさまざまな勢力による武力攻撃の標的となる危険性はきわめて高い。また、それに対する自衛手段とはいえ、自衛隊が現地の人々を殺傷する可能性も大きい。

日本国憲法制定以来、憲法第9条のもと、国家の行為として他国民を殺傷したことがなかったことこそ、日本人の誇りだったはずである。この誇りがいまや打ち捨てられようとしている。小泉政権は、国民の反対を無視し、国民に対する十分な説明もなしに、憲法を踏みにじろうとしているのである。

 イラクの復興のために日本が協力することは当然であるにしても、それはあくまでイラク人の願いに沿った協力であるべきである。また、イラクの復興は国連を中心とする国際社会の協力によって達成すべきものである。イラクの地に軍靴の足跡をつけるためだけの自衛隊派遣は、真の平和と復興をもたらすことにもつながらない。

 我々は政府の暴挙を座視することはできない。小泉政権による憲法9条の実質的な廃棄を許すことはできない。また、権力保持に汲々とする為政者の都合で自衛隊員を危険にさらすことも看過できない。我々は政府に対し、自衛隊のイラク派遣決定を撤回するよう要求する。

2004年1月

イラク派兵に反対する研究者の会


3 「東京都 産業科学技術振興・基本指針」への都立大理学部教員のコメント

1)「ナノテク」といって、すぐにでも実現しそうな明るい雰囲気がありますが、実はものごとはそう単純ではありません。たしかに我々も公的資金を申請するときは、いかにも実現性がありそうに作文はしますが、それは単に可能性であって、実現性が極めて難しいものが多いことは現場の研究者が一番よく知っています。たとえば、話題性のあるーボン・ナノチューブですが100近い応用例が提案されてきましたが、市場原理を前提としてビジネスとして成立しそうなのは(専門的になりますが)非線形光学素子としての応用くらいではないかと考えています。全国紙に掲載された我々の研究も基礎物性物理以外のなにものでもないのです。

2)そう簡単に実現性がないことは企業がよく知っています。リスクの大きいテーマには思い切って投資していません。政府もこれをよく知っていて、科学技術基本計画(5年間で20兆円を越える公的資金の投入)の予算の約30%はナノテク関係かと思いますが、要するに大学とか公的研究機関のようにリスクを負担できるところに投資できる枠組みを作っているのです。これはもちろん、リスクを負いたくない財界の強い要請が背景にあります。

3)ましてや、リスクを負う余裕のない中小企業の再生のためにナノテクが役立つはずはありません。100の可能性のうち、数項目しかビジネスとして成立しないという現状では、中小企業は乗れる訳がありません。もし東京都が本気にナノテクを推進する気ならば、まずは市場原理を度外視して、基礎研究に投資する(対象は大学や公的研究機関でしょう)姿勢が必要でしょう。

4)これと対照的なのは半導体の計画です。これは国際的にロードマップ(ITRS: International Roadmap for semiconductor)ができていて、2020年頃までには、シリコンを用いたクロック周波数の理論限界15GHzを実現するための、緻密な計画ができています。これはインテルも東芝も富士通もほとんど同じ戦略で、莫大な投資がなされています。どこに困難があり、それを克服するにはどうするか、どれだけの時間がかかるかを見積もったかなり説得力のあるものです。当然といえば当然で各社が数百億単位で投資するからには実現性が問題なのです。

5)バイオテクノロジーは中間的な位置にあります。実現性の見えている場合もありますが、遺伝子が2カ所以上からんで発現する病気や異常などは、組み合わせの数が多すぎて、天文学的数字の実験が必要になってしまいます。製薬メーカなどが一定の投資をおこなっていますが、アメリカの政府の投資、アメリカ製薬会社の投資と比べれば微々たるものです。

6)H2ロケットが失敗するのは、大企業がいわゆる経験ある人間の熟練性にたよるローテクを軽視したからです。たとえば三菱重工業は、20年前にはあった精密な溶接技術をもはやもちあわせていません。ローテクは中小企業の得意分野でしたが、どんどん倒産し大田区などでは悲惨な状態です。

7)以上のような現状を無視した東京都の計画は、中小企業を活性化するどころか、単に箱物をつくる建設業者をうるおすだけになるでしょう。臨海地区にさすがにいまさら箱物を建設できなくなった業者を救うために、ほかの地区で建設をすすめるねらいが見え見えです。南大沢の新しい建物の建設もこのような流れの一環かと見えます。


4 石原都知事記者会見 12/24

新しい大学を東京で、日本に先駆けて作りたいと思っているが、大学関係者にはいろんな人がいて、大体学者さんというのは、理科系の人はそんなこともないだろうけどが、文科系の人は古い発想力のない非常に保守的な人が多くて、そういう人たちが主になって反対している。メディアの大方の諸君も、そっちに加担して石原の足を引っ張れば、なかなか痛快なのかもしれないが、やっぱり、よく物をみて、総体的に判断してもらいたい。

第一段階としては、随分いろいろ批判があるようなので、それに対する今日はその反論に止めまして、年が明けたらもう少し具体的な提案を示し、主にこれからそれをそこで学ぶ学生がどう評価するか、世間がどう評価するかをその批判に待ちたいと思いますけど。

新大学構想に反対し批判的な人たちは、自分たちの言い分をよしとしているが、その人たちの主張を一言にして言えば、現状温存でしかない。保守ですな。悪く言えば保身。現在ある4大学の単なる統合以外の何ものでもない。

たとえば、私がトップダウンで急にこんなことを言い出したという非難もあるが、全然これは筋違いであり、就任以来、ずっと外部監査を入れてきた。それで、都立の大学もその対象で、その監査を受けて、いろいろな不都合な点が指摘されましたが、個々のトリビアルなディテールの問題についての指摘もあったが、それを総じて、外部監査の総合批評の中には、都立の大学は従来の学問縦割りの学部構成では特徴がなくて、その存在意義が問われている。教員にもっとインセンティブを与えるべきと、そういう多くの指摘がされてもきました。それは、とっくに学校当局に取次いで、個々の改善も要求してきました。

また、都立大学の人文学部では、驚くべきことに都立大学を卒業した学生諸君の就職率が、20%にも達していない。この責任は教授にもあるし、学校の事務局にもあり、学校全体にある。卒業生の三分の二は、卒業後の進路すら把握できておらず、社会に貢献する姿勢が見られない。

しかし、彼等の、反対派の案では、外部監査の指摘やこうした点を改善しようという意向は全く感じられない。案もない。さらに、徒弟制度の中で、自由な教育・研究を阻害してきた講座制についても、一向に見直そうとする姿勢もありません。旧弊のある仕組みを守るだけでは、世界のレベルからどんどん取り残されてしまう。国立の大学やその他の大学も、世界の流れを眺めながら、自らの改修改善を図っているんだけど、肝心の都立大学の中で、特に人文系の先生の中には、こうした意向が全くない。

こういう大学の現状に、学生諸君や父兄は果たして満足しているのかどうか。さらに、これをこのまま大温存しようとする、すべてとは言いませんけど、学校側の動きに都民が納得するかどうか、やはり象牙の塔をふみだして、世間の風に身をさらしながら、先生方に考えてもらいたい。

これから作ろうとする新しい大学は、都市問題などの大都市の大学としての現実に立脚した研究を行い、大都市に求められる有能な人材を都立大学こそ育成することで、都民にもわかる形でその成果を還元して行こうと狙いとしているわけです。従って、学部構成も学問体系も学際的で、現代社会に必要な幅広い教養と能力をきっちりと学生に身につけさせた上で社会に送り出そうというつもりでいる。さらに講座制についても、新大学では廃止して、任期制・年棒制を導入する中で、若い先生も自立してのびのびと授業や研究をしてもらうつもりである。

我々はすでに示した構想に基づいて、現在、具体的な肉付けを行っており、来年早々には学生諸君も、楽しくて有意義な大学生活を送ることができるようなメニューや具体的な教育内容を発表して、新大学設立に向けた動きを加速させて行くつもりである。

ちなみに、わかりやすい数字のデータがあるが、都立大学の他の大学、特に私立大学を比べてみると、支出の合計とうちの人件費の比率が、都立大学は59.4%、私立大学では51.6%。教員の数は限られているわけですけど、教員一人あたりの学生の数が都立大学の場合は、これは良いと言う人もいるかもしれないが10.9人、私立大学では35 人。収入に占める補助金の率、主要財源は都民の税金だが、都立大学では72%、私立大学の場合には平均12%。教員一人あたりの学生の数は、これは極端に少ない、都立大学の場合は、4.6人。上智大学は25.4人、ICU人文科学科は15.0人、千葉大学文学部は12人、東北大学文学部は17人。比べて、都立大学は4.6人。これは学生にとって深刻な問題だが、極端に就職率が低くて17.6%。しかもその他に未把握の部分が67.9%。全国の人文系の就職率は大体53%が平均。未把握の部分はわずか6%。それからもっと具体的な小さな例をあげると、ほとんど希望者のない専攻科がある。独文は2人。仏文は0人。ところが独文の教員が18人。仏文の教員が12人。こういった、非常にいびつな数字が示すように、やっぱりこういう大学は経営の視点から合理化されなくてはならない
し、合理化されることで、学生たちが都立の大学で学んで良かったということになると思う。

一部、人文科学系の先生方の反対というのは、自分たちの責任を棚上げにした、本当にただの保守、悪く言えば保身、退嬰的なものでしかないと私は思う。近いうちに、我々が何を具体的に用意しているかということは、年を明けてから具体的に、先生方も含めて、今いる学生諸君、これから受験をする学生諸君、その父兄の方々に、わかりやすく、たぶん強い共感をもっていただけると思う。年を明けてから、具体的に説明をする。

東京新聞

この間の知事の会見で対案を出せば良いという話があったが、実際に対案を作る動きが、都立大学の中であるようだが、それについてはどうか。

知事

だから、具体的な対案を出してくれれば、それは、私たちの方に勉強をさせてもらう。具体的な案がなくて、今言っているように、ただただ保守、現状維持ということでは、これは対案にもならない。

それほど本気で今ある大学を憂いを抱き、行き先を案じているんだったら、ただただこんな形の反対では済まないはず。


5 『東京新聞』2003年12月24日付

特報
『新大学構想』 対立の構図

 石原慎太郎都知事が8月に突然表明した「都立新大学構想」で火が付いた都と都立大の対立は混迷度を増している。強引なトップダウン手法への反発で、法学部の4教員が退職届を出し、来年4月開校する法科大学院の試験日程も延期された。構想内容にも「こんな大学に生徒を進学させられない」と高校側からクレームが続出する始末だ。2005年春に開校予定の新大学の前途は―。(藤原正樹)

 「新しい大学をつくろうと思っている。今の大学で満足しているのは、そこで偉いことをしている人だけ」。こう都立大を批判した石原知事が打ち上げた新構想では、「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命に掲げる。都庁や企業の現場で実学教育を実施し、都市学を基本教養として学ばせるという。

 都が一昨年十一月に制定した「大学改革大綱」では、新都立大を人文、法、経済、理、工、保健科学などの七学部にする方針などを定めたが、新構想はいきなり白紙にした格好だ。

 「大学に何の相談もなく新構想を公にした。都と四大学関係者が、大綱を受けた準備委で二年間検討した改革案を具体化する直前だったのに、努力を無駄にされた。トップダウン手法に怒りを感じる」

 十月七日、都に抗議声明を出した同大の茂木俊彦総長の憤りは増す一方だ。

 茂木総長の抗議声明に対し、都大学管理本部は他の都立の三大学学長の「生き残りには痛みを伴う。新構想に賛同して積極的に取り組む」という共同声明を発表した。都立大は孤立する形になったが、茂木総長は「廃止される短大を除いた二大学はほとんどそのままの内容で存続でき、痛みがないから賛同しているだけ」と切って捨てる。

■『準備委案は時代に逆行』 

 新構想を突如表明した理由について都は「準備委案は都立大の温存策で、時代に逆行している。『まったく新しい大学』を目指す大綱の理念からも外れる。新構想は、五月から開いている外部識者検討会で出てきた内容だ」と説明する。

 これに対し茂木総長は「検討会の九割は雑談で新構想の中身はなかった。これは知事周辺で決定した」と反論する。実際、石原知事は今年四月の会見で「大綱は上っ面で、改革のコンセプトはつかめない。理事長候補と直接話を進めている」と明言している。

 茂木総長は、新構想の中身も問題視する。都立大、科学技術大、短期大、保健科学大が統合される新大学では、総長とは別に、知事が理事長を任命して教学と経営を分離した運営を行う。人文、法、経済、理、工の各学部を一つの「都市教養学部」に押し込め、ほかは「都市環境」「システムデザイン」「保健福祉」の四学部に再編される。都市教養学部コースの理念づくりの補強を大手予備校の河合塾に委託するが、「他者に『理念を考えてくれ』と頼む大学が大学と呼べるのか。『授業科目も考えてくれ』と委託している。理解しがたい」と茂木総長は話す。

 現行の教授、助教授、講師という序列は、主従関係を生み出すとして廃止され、教授、准教授、研究員に変更される。任期制が導入され、准教授の任期は五年で任期中に教授試験に合格できないと退職させられる。同大の文系教授(48)は「院生は最短で卒業に五年かかる。指導を受けていた准教授が退職すると、人生設計が狂うほどの打撃がある。長年の指導で学生の得意分野を把握した進路指導が必要なのに」と批判する。

 学生にも混乱を招いている。西洋中世史を学ぶ女子大学院生は「新構想で大学院の構成も、まだ決まっていない。専攻課程が消滅する可能性もあるので、退学しようと思う」という。

 新構想に特に危機感を募らすのは、人文学部だ。一九四九年に都内唯一の公立総合大として発足した当初から設置され、現在は同大の看板学部になっている。

■人文学部教員 半分以下に・・・

 同学部長の南雲智教授は「新構想は人文学部つぶしだ」と憤慨する。事実、新構想では都立大全体で三割の教員が削減されるが、人文学部の教員は百三十九人から六十四人と半分以下になる。都大学管理本部は「教員一人当たり十五人程度の学生が妥当な数字だが、人文学部は四・五人しか教えていない。同大平均の十人に比べても突出している。人文学部の削減幅が大きくなるのは当然だ」と説明する。

 石原知事は「民間のコスト感覚で運営して赤字を減らし、学生が満足する理想の大学にする」という。茂木総長も「国公立大で赤字でないところはない」と経営事情の厳しさは認める。だが、同大の入試最難関学部で、競争倍率十二、三倍の人気を誇る同学部をつぶすような構想でその目標達成にも疑問の声が上がる。

 前出の文系教授は「人文学部がなくなる影響は計り知れない。少子化で経営環境がより厳しくなるのに、金看板を外す信じ難い構想」と批判する。

■「赤字どころか存続も難しい」

 「人文学部教員が半減すると、語学など教養課程がだめになる。都は新大学を『都のシンクタンク』に位置づけているが、基礎教養もなく専門的な学問をやらされる学生が使いものになるわけがない。高校進路指導教諭の会合でも『新大学には生徒をやれない』という批判が続出している。赤字を減らすどころか、大学存続も難しい」

 茂木総長は「新構想では教員のアルバイトも原則自由になる。授業に支障が出るのを防ぐため制約を設けるのが常識で、教育の質が低下するのは避けられない」と嘆く。さらに「コスト至上主義では大学がすさんで、よい研究成果が生まれない。経営側から一方的に研究費を削られる恐れもあり、学問の自治が侵される」と危ぐする。

 石原知事が新構想を強引に進める背景について、これに反発し退職届を出した法学部の山口成樹助教授は、十七日の学生説明会で「新構想は都立大の解体宣言で、地方自治史上類をみない野蛮行為だ。過去の継承が必須の学問を完全に断絶することを『新しい』と称する。文科省の大学政策を腰抜けと批判してきた知事の同省への面当てでしかない」と批判した。

 「てっぺん野郎―本人も知らなかった石原慎太郎」の著者、作家の佐野真一氏は「大学側の意向を踏みにじる裏には、石原知事の"エスタブリッシュメント嫌い"がある」と分析する。

 「今回の騒動は、抜き打ち的に発表して、激しい住民反対運動にあった原宿留置場構想と同じパターン。鬼面人を威(おど)す施策を次々に出す背景には、最近思い通りにいかないことが多く、石原ブランドの賞味期限切れへの恐れがある。小泉首相が総裁選で再選され、石原総理待望論も消えた。銀行税でも一敗地にまみれ、横田基地返還のアドバルーンを上げたもののうまくいかない。絶えず日の当たる場所ばかり歩いてきた人間の寂しさを感じる」

tjst |12月27日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000412.html |意見広告の会ニュース
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分類「 意見広告の会ニュース」の記事より

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「意見広告の会」ニュース208(2004.10.28) - 10/28
転載:「意見広告の会」ニュース207[2004.10.26] - 10/26
転載:「意見広告の会」ニュース206(2004.10.24) - 10/24
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