2003年12月13日

語学教育の外部委託の陥穽

satou-labo site 内:語学教育の外部委託について 2003.11.12
文責 マーク・ファー(横浜市立大学商学部NS教員)、片山亜紀(横浜市立大学商学部)

・・・・・これらの企業はあくまで利益追求を第一とする営利団体であるため、次のような問題点があることを指摘したい。(ここでは例としてW社を挙げる。それは関東ではこの会社が最大手だからである。しかし他の語学学校―たとえばベルリッツやECC―も同様の問題を抱えていることを申し添えておく。)・・・・・
語学教育の外部委託について

2003/11/12

1.横浜市立大学改革案では、学生に「国際的に通用する技能の育成」を求めている。そこでは「外国語をコミュニケーションの道具として使いこなす力」および「自分の考えを論理的に、根拠を示して書き、発表し、討論する力」などが必要だとされている。しかし、ここで求められている<アカデミック・コミュニケーション>のためにどのような外国語教育が妥当かという点については、まだあまり話し合われていない。

2.今後、具体的なカリキュラム作成の段階で、語学教育の一部を外部機関(語学学校など)に委託するという選択肢が出てくることが考えられる。というのも、こうした動きは一部の他大学で始まっていることだからだ。しかし外部機関の内部事情を知っている者にとってみれば、これは何よりも学生にとって望ましい選択肢ではない。

3.これらの外部機関は、語学カリキュラムを丸ごと大学に提示し、大学側と年度単位の契約を結び、ネイティブ・スピーカーを派遣してくるのが通例である。しかしこれらの企業はあくまで利益追求を第一とする営利団体であるため、次のような問題点があることを指摘したい。(ここでは例としてW社を挙げる。それは関東ではこの会社が最大手だからである。しかし他の語学学校―たとえばベルリッツやECC―も同様の問題を抱えていることを申し添えておく。)

(1)学位のない人材を語学教師に採用している。

W社の教師募集広告を見れば分かるように(別紙[1]参照)[i]、W社で語学教師になるには修士号の必要がないばかりか、学土号の必要すらない。さらに、どんな学歴であろうと給料は一律である―これでは優秀な人材を集められるはずもない。(現在横浜市立大学では、NS教員の応募資格として修士号取得者であることを挙げており、しかも自分の研究分野をもつ人が望ましいとしている。)

(2)教師に十分なトレーニングを受けさせていない。

W社の「大学プログラム」の日程表によれば(別紙[2]参照)[ii]、採用された教師は成田空港到着後、3日目と4日目に大学周辺の地理について案内を受け、5日目と6日目に「カリキュラム・トレーニング」を受け、そして8 日目には教壇に立つことになっている。つまり授業の中身について何かしらのトレーニングを受けるのはたった二日だけなのである。

(現在横浜市立大学では、NS教員の採用基準として研究歴だけでなく教歴も重視している。さらに日本語をある程度理解できることも条件にしている。外国人教師の日本語能力は事務室とのコミュニケーションのために不可欠であるだけでなく、教室での語学指導の際にも重要である。逆にまったく日本語を解さない外国人が教師である場合、指示に従わなくなる学生も出てくるだろう。)

(3)教師に長時間授業をさせ、準備や採点のための時間を与えていない。

W社では、週に5日間、毎日7コマまで働いてもらうと定めている。これでは教師は準備にかける時間もなければ、学生に宿題を与えてマークする時間もないのは明らかだ。せいぜい教師にできることと言えば、教室にとにかく行ってシンプルな英会話の練習をするくらいだろう。

(横浜市立大学のNS教員は、単なる「おしやべり」の授業は行っていない。文章を読ませてスピーチやディスカッションをさせる等、中身のある授業展開を行っている。また授業外でもたくさんの課題を与えて学生に練習する機会を提供している。資料として現在進行中の授業の記録を付しておいたが(別紙[3]参照)、この授業ではすでに30ほどの宿題を出して詳細にチェックしている。しかし外部企業に委託したなら、このような授業はまったく望めないことになる。)

4.こうした外部委託をすでに一部導入している大学もあるが、ただし良質の大学のなかには、英語教育の目標を「批判的思考力とアカデミック・リテラシー」と新しく位置づける大学もある。以下に挙げた二大学では、学生は英語で知的な議論をしあい、論文やレポートを書き、英語の文章を要約したり論じたりすることを教えられている。学生―とくに1・2年次の教養課程の学生―にとっては英語を学びながら同時に大学レベルの分析がどういうものかを知ることができ、専門分野の学習に直結させることができるという利点がある。

例1) 慶応大学法学部では、英会話の授業をすべて廃止し、一年次の全学生に「Study Skills in English(学習法と英語)」を教えている。このプログラムの目標は、批判的思考力を高め、読む・話す・聞く・書くの4技能およびプレゼンテーション能力を身につけることである。

例2) 中央大学法学部では、英会話の授業をすべて廃止し、ネイティブ・スピーカー教員の授業でも、日本人の語学教員の授業でも、「アカデミック・リテラシー」を目標とした授業を実施している。このプログラムでは、学生はたんに会話することではなく、何かのトピックについて「論じ合う」ことを求められ、どの授業でも、学生は英語のスキルを総合的に使わねばならない。

こちらの流れこそ、われわれが参考にすべきものではないだろうか。

以上

文責 マーク・ファー(商学部NS教員)、片山亜紀(商学部)

tjst |12月13日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000355.html |大学の骨組みの変更
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