2003年11月25日

任期制の恣意的運用ーー放送大学1988年

大学教員の任期制を考える引用集 より

任期制と恣意的運用の問題−−放送大学の事例から−−

・・・・・当時の理事長は『この制度は裁判官の採用と同じように形式的なもので、発動することはないから、安心してほしい。先生たちはチューターのような役割で各領域の中心となり、いろいろな先生をお呼びしてよい教材をつくってほしい。任期制にこだわらず、放送大学に骨を埋めるつもりで頑張っていただきたい』とわれわれを説得した。
 公式の場での理事長の説明で納得できる内容なので、任期制についての不安は解消した。それに、筆者は、他の大学はともあれ、放送大学では大学の性質上、緩やかな形での[p.19]任期制の導入はやむを得ないだろうと思っていた。……
 放送大学では教員を再任する手続きとして、専攻ごとに該当する教員の業績などを審査して、再雇用が適当かどうかを決め、その結果を学長に報告し、学長は評議会に再任の可否を問う形をとることになっていた。そして、該当する三人について、それぞれの専攻ごとに審査が行われ、『適』の結論が得られた。そして、三人を含めて、学内では再雇用の問題はクリアした雰囲気だった。
 一九八八年五月に学長から呼び出しを受けた。評議会で筆者の業績を説明するのに不明のところでもあるのかと出向いてみると、『理事会の中に先生の再雇用に反対する動きがある。研究者としてのキャリアに傷がつくといけないから、再雇用を辞退してはどうか。その代わり、私立A大学にポストを用意した』という内容だった。
 文字どおり寝耳に水だった。評議会に反対があるという話は聞いていなかったし、放送大学教授として、やることはきちんとしてきた自信がある。それだけに、再任拒否は理解できなかった。話のあったA大学に不満があるわけではないが、それこそ筋がちがう。そう考えて、再任を評議会にかけてほしいと頼んだ。・・・・・
(深谷昌志「任期制導入の問題点は何か」)

任期制と恣意的運用の問題−−放送大学の事例から−−

〔放送大学では〕一九八四年に開学準備のための教授が一三人採用された。定年になって来学された教授はともかく、現職の教授は、当然のことながら、任期制の導入にこだわった。無理に任期制のある大学に移る必要がないからである。
 当時の理事長は『この制度は裁判官の採用と同じように形式的なもので、発動することはないから、安心してほしい。先生たちはチューターのような役割で各領域の中心となり、いろいろな先生をお呼びしてよい教材をつくってほしい。任期制にこだわらず、放送大学に骨を埋めるつもりで頑張っていただきたい』とわれわれを説得した。
 公式の場での理事長の説明で納得できる内容なので、任期制についての不安は解消した。それに、筆者は、他の大学はともあれ、放送大学では大学の性質上、緩やかな形での[p.19]任期制の導入はやむを得ないだろうと思っていた。……
 その前年の一九八八年、初年度に採用された一三人の教授の任期が切れることになった。もっとも、一三人のうち、一〇人は七〇歳の定年を越えていたので、該当する教授は三人だった。そして、それぞれに学内外で活躍していたので、再契約はスムースに進むも[p.20]のと思われていた。三人のうちのひとりはドイツ文化の専門家で、ドイツとの交流を重ねながら、語学教育の中心として活躍していた。もうひとりは理学畑の人で、学習センター長を務めながら、文系に傾斜しがちな大学の中で理工学を支える貴重な教授だった。
 筆者は一三人の中でもっとも若い五〇代前半で、しかも、教育学関係の唯一の教授なので、責任を痛感していた。それだけに、可能なかぎり、研究に打ち込みたいと、専門にしていた児童生徒の意識調査を国際的な規模に拡大して展開した。六年の在職期間の間に、五冊の単行本のほか、学会誌などに数多くの論文を執筆した。……[p.21]
 放送大学では教員を再任する手続きとして、専攻ごとに該当する教員の業績などを審査して、再雇用が適当かどうかを決め、その結果を学長に報告し、学長は評議会に再任の可否を問う形をとることになっていた。そして、該当する三人について、それぞれの専攻ごとに審査が行われ、『適』の結論が得られた。そして、三人を含めて、学内では再雇用の問題はクリアした雰囲気だった。
 一九八八年五月に学長から呼び出しを受けた。評議会で筆者の業績を説明するのに不明のところでもあるのかと出向いてみると、『理事会の中に先生の再雇用に反対する動きがある。研究者としてのキャリアに傷がつくといけないから、再雇用を辞退してはどうか。その代わり、私立A大学にポストを用意した』という内容だった。
 文字どおり寝耳に水だった。評議会に反対があるという話は聞いていなかったし、放送大学教授として、やることはきちんとしてきた自信がある。それだけに、再任拒否は理解できなかった。話のあったA大学に不満があるわけではないが、そ[p.22]れこそ筋がちがう。そう考えて、再任を評議会にかけてほしいと頼んだ。
 筆者とは別の二人も、学長から呼び出しを受け、それぞれに別の理由をつけて、再任拒否を告げられたらしい。そして、ひとりの教授は斡旋された大学に移り、他のひとりは浪人の道を選んだ。[p.23](深谷昌志「任期制導入の問題点は何か」川成洋『だけど教授は辞めたくない』ジャパンタイムズ、1996 年より)

tjst |11月25日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000303.html |任期制の諸問題
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