2003年11月22日

大学の教員等の任期に関する法律をめぐる国会議事録の整理

大学の教員等の任期に関する法律をめぐる国会議事録の整理

阿部泰隆=位田央

はじめに

大学の教員等の任期に関する法律

一 任期制導入の目的、現状認識

(1)目的
(2)人材流動化の実例―放送大学、素粒子論グループの例
(3)現状認識

二 任期制は適切な手段か

(1)任期制の問題点
(2)学問の自由に関して
(3)事実上の任期制について
(4)任期制以外の手法

三 身分保障との関係

(1)米国のテニュア(tenure)制の運用、外国法制度との比較
(2)給与体系
(3)インセンティブ
(4)女性教員
(5)任期切れ後は?
(6)国家公務員法等との関係

四 任期制導入の三類型  助手の任期制は妥当か?

(1)任期制を導入する三つに類型は適切か?限定的か?
(2)なぜ教授まで対象とするのか?
(3)流動化と再任制度は矛盾しないか?
(4)助手の任期制は妥当か?

五 業績評価

(1)業績評価はどのように行われるのか?
(2)大学の教育研究活動に対する自己評価、外部評価、情報公開

六 恣意的な運用の恐れ、任期切れ教員の救済方法

(1)恣意的な運用の恐れ
(2)救済手段

七 私学の場合、労働基準法との関係、教授会

八 選択的導入と予算等による事実上の強制

(1)選択的導入の根拠
(2)選択的導入と文部省の圧力
(3)選択的導入の弊害―市場の狭さ

九 大学ではどんな再任ルールを作るべきか? 規則作成過程は? 規則の変更は?

十  労働組合との関係、団体交渉

はじめに

大学の教員等の任期に関する法律が平成9年に制定されたとき、その合憲性、
政策的な妥当性について種々疑問が示された。学問の自由を侵害し、実際上は
大学の活性化に寄与せず、混乱を生ずるだけであるということである。

 しかし、その後、6年間の間、その議論はほとんど行われずに経過した。こ
の法律は、一般には活用されていないので、あまり気にもとめずに、死せる法
と思われていたのではないか。たしかに、医学部系統では全教官に任期制を導
入しているところも増えているが、実際に、任期を理由に失職させる事件はな
かったので、それは普通は形だけと思われているだろう。

しかし、今、国立大学法人化などを契機に、全教官に任期制を導入する動き
が出てきている。そこで、今一度、この法律の合憲性、政策的な妥当性を再検
討する必要がある。

しかも、全教官の一律任期制が拡がりそうである。横浜市立大学は前教員に
任期制、年俸制を導入する方針を決定した。しかし、同大学では商学部教授会
が10月2日全教官への一律任期制導入は違法との法的な意見を提出している。
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/20031002NinkiseiKyojukaiIken.htm

 たしかに、この法律は任期制を導入できる場合を限定し、しかも、職に就け
る場合に限っているから、現職の教員を全員任期制に切り替えることは違法で
ある。この意味では、この法律のしくみを正確に理解することが必要である。

 さらに、2002年12月には、京大再生医科学研究所で、任期制初の任期
切れ失職扱い事件が発生した。これは、外部評価で7人の高名な医学者が「国
際的に平均」「再任可」と評価したのに、教授会が、無記名投票で、白票も反
対に数える方法で、再任賛成が過半数に達しないという理由で、再任拒否を行っ
て、失職に追い込んだものである。さらに、もともと、任期制であることは、
この教授のポストの公募のさいには示されず、任期への同意は、発令直前にば
たばたと事務官から求められた。任期制法の下でも、任期が適法に付されたこ
とと、再任審査が合理的であることが前提で、失職になるものであって、この
任期自体が違法であり、また、再任審査が恣意的である(しかも、この再任審
査のルールは、この法律に基づく学則とそれから委任されたと見られる研究所
「内規」で規定されている)場合には、任期を理由とする失職扱いは、失職へ
追い込む失職・免職処分と解される。しかし、裁判所は、その救済に消極的で
ある。原告は執行停止を申請したが、京都地裁は失職だから、処分ではないと
して門前払いとし、大阪高裁も同様の態度を取ったので、原告は即時抗告を取
り下げざるを得なかった。目下、京都地裁で、失職処分の取消訴訟が進行中で
あるが、これでは研究の中断のため、実際上は、救済はできないし、任期制法
が狙った学問の進展を阻害する結果となることは明らかである。

 このように、この法律への疑問は解消されるどころかますます深まっている。
阿部泰隆は、別稿でこの点を検討するところであるが、そのための準備作業と
して、ここでは、国会での議論を整理することとした。

 これを見て感ずることは、国会では、野党側は問題こそ提起しているが、文
部省は、まともに答えずに、はぐらかし、これに対して野党側が徹底的に追及
しないので、問題点が十分に解明されずに終わっている。この資料は、この問
題を考える素材として役立つというつもりで、分析を始めたし、多少は役立つ
が、他面では、日本の国会では、まともな法律論を展開していないと慨嘆せざ
るを得ず、立法過程論の講義で悪しき例として参照して頂きたいという思いを
持つこととなった。

この資料は、

http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KOKUMIN/www_logout?SESSION=18978&MACIE=1043336549

の検索画面で、第139回から第141回の国会の期間を選択し、大学and教員and任
期で検索した。以下の項目が出てきたので、明らかに関係ないと思われる部分
を除いて、全てコピーandペーストでMSWordの文書に取った上で、項目毎に整
理し直し、大部になるので、できるだけ重複を避け、無駄な発言を削除した。

141 衆 文教委員会高等教育に関する小委員会 01 1997/12/03
140 参 文教委員会 18 1997/06/18
140 衆 文教委員会 20 1997/06/17
140 参 本会議 32 1997/06/06
140 参 文教委員会 15 1997/06/03
140 衆 文教委員会 17 1997/05/30
140 参 文教委員会 14 1997/05/29
140 衆 文教委員会 16 1997/05/28
140 参 文教委員会 13 1997/05/27
140 参 内閣委員会 11 1997/05/27
140 衆 文教委員会 15 1997/05/23
140 衆 本会議 37 1997/05/22
140 衆 議院運営委員会 37 1997/05/22
140 衆 文教委員会 14 1997/05/21
140 衆 文教委員会 13 1997/05/20
140 衆 文教委員会 12 1997/05/16
140 衆 文教委員会 11 1997/05/14
140 衆 本会議 33 1997/05/09
140 衆 議院運営委員会 33 1997/05/09
140 衆 文教委員会 10 1997/04/25
140 衆 文教委員会 09 1997/04/23
140 参 文教委員会 06 1997/04/08
140 衆 文教委員会 06 1997/04/02
140 参 文教委員会 05 1997/03/27
140 参 文教委員会 04 1997/03/18
140 衆 本会議 14 1997/03/05
140 衆 文教委員会 03 1997/02/19
140 参 文教委員会 01 1997/02/14
140 衆 文教委員会 02 1997/02/14

tjst |11月22日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000301.html |任期制の諸問題
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