2003年08月20日

国立大学法人制度下の使命

国立大学関係者 各位

国立大学法人化関連法が成立し国立大学制度が廃止され国立大学法
人制度に移行しますが、大学に適用する場合の独立行政法人制度の
欠陥が実質的には除去されませんでしたので、余程の「奇跡」がな
い限り、国立大学制度が実現していた諸機能は徐々に失なわれてい
くでしょう。この点について幻想を持たず、また国立大学法人制度
の官制サバイバルゲームの迷路に自失せず、学問と教育の規範を今
迄以上に鮮明にし、社会貢献においてもその規範を墨守し、大学の
使命について社会と大学が認識を共有する時が来ることを辛抱強く
待つことーーこれが国立大学法人制度下におかれる者が担う使命の
重要な部分を成すものと思います。

「学問と教育の規範」の根幹には、知識の体系性・一貫性・全体性
を重視すること、しかしどの理論にも懐疑の余地があり、そのこと
が学問の発展の源泉である、という姿勢を堅持し、理論・価値観・
世界観の多様性を尊重し先入観・非寛容を憎むこと、があると思い
ますが、1998年に全世界の高等教育関係者が確認した規範は、
ユネスコ高等教育世界宣言「21世紀の高等教育に向けての世界宣言:
展望と行動」
に詳細に記載されています。

その中で、「高等教育の使命と機能」の第二条「倫理的役割、自律
性、責任、および先見的機能」に、「倫理的・文化的・社会的問題
に関し、責任を自覚した上で、完全に独立した発言ができなければ
ならない。それは社会が自ら問題を考慮・理解し、その解決のため
に行動するのに必要な一種の知的権威を行使することである。」
「社会・経済・文化・政治の絶え間ない潮流分析に基づき、予測・
警告・阻止のための焦点を提示することによって、批判的および先
見的機能を増進させなければならない。」「その知的能力と道徳的
威信を行使し、ユネスコ憲章にうたわれた平和・正義・自由・平等・
連帯を含む普遍的価値を守り、積極的に広めなければならない。」
等が記されています。

間も無く国会で審議されると予想される教育基本法の改変は、もし
も決まれば初等中等教育の性格を根底から変質させるものです。国
立大学の法人化は余りに身近な問題であったために発言を控えた方
も多かったようですが、教育基本法改変問題については一定の距離
があって発言しやすいのではないでしょうか。大学界全体が、この
問題に責任があることを認識し、種々の立場と角度から自由に議論
し「知的権威を行使する」ことは、大学界の存在理由の一端を社会
に明示する良い機会になると思います。

辻下 徹

追伸.

国立大学法人法案の廃案を求める意見広告、特に、3次・4次の
「有料報道」は、国立大学法人制度の問題点を広く日本社会に伝
える効果がありマスメディアにも一定の影響力を持ち続けることが
期待できます。(数日前にNHKが朝のニュースで国立大学の法人
化について取り上げましたが、地域貢献と産学連携の取りくみを詳
しく紹介した後で、国立大学法人化により基礎研究が衰退する可能
性もあるという趣旨のコメントで締め括っていました。なお、地域
貢献や産学連携を過度に追求することが地方移管や民営化の勧告を
招きかねない、という独立行政法人制度の本性には触れていません
でした。)

なお、この「有料報道」は、呼び掛け人の一部の方が高額の負担を
決意されて実現したものですが、意見広告の会の会計報告(8月8
日)では、かなりの赤字が記載されていました。「有料報道」が、
今後の国立大学法人法に関連する政令・省令等の内容や施行状況に、
一定の影響力を持ち続けると評価されるかたはぜひカンパをお願し
ます。

・郵便振替口座『「法人法案」事務局』
00190−9−702697

・銀行口座 東京三菱銀行 渋谷支店
口座番号 3348763 口座名 法人法案事務局

・連絡先:houjinka@magellan.c.u-tokyo.ac.jp
------
* http://ac-net.org/dgh/03/610-ikenkoukoku.html
http://ac-net.org/dgh/03/701-ikenkoukoku.html

tjst |8月20日 |URL:http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000094.html |国立大学法人制度の欠陥 , 国立大学法人法 , 大学の使命 , 大学の自治 , 日本国憲法と教育基本法の改正問題
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