==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
北大の辻下です。 Nature 403, 7 - 8 (2000) (1月6日)にAsian-Pacific Editor の Schwinbanks 氏から日本の研究者へのメッセージ「日本の科学者よ、行動の士たれ」 があることを北大の栃内新さんから教えてもらいました: http://bio.sci.hokudai.ac.jp/bio/shinka3/nature.html 公的研究資金の有効配分に関連省庁が関心がないこと、新設の文部科学省に何も 期待できないこと等、日本の科学技術行政の劣悪さに言及すると共に、その責任 の一端は科学者にもある、と指摘されています。 今週、邦訳がオンライン http://www.naturejpn.com/newnature/hottopics/swinbanks/index-j.html で公開されました。簡単なオンラインの手続きでアクセスは可能になります。 このメッセージの一部を転載します。 ----転載始、 [ ] 内は辻下による補足--------------------------------------------- 「研究資金の不足 1996〜2001年に科学分野に対する公的資金を50%増額するための5ヵ年計画により、 科学を所管する複数の省庁から多額の研究助成金が提供された。しかし増額分のほと んどは、必要とされる根本的なインフラ整備ではなく、新たな設備機器の購入にまわ された。 [1996-2001 政府研究開発投資17兆円の内訳については [reform:02398]で新大 の渡邊勇一さんが紹介されています。転載: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/99b30-watanabe.html ] さらに、省庁間の連携不足から資金は分散し、無駄になっている。すなわち必要以上 の助成金を受取った研究者がいた一方で、同じように資金が必要な研究者には助成金 が行き渡らなかったのである。 [末端では競争率が数十倍の公募型研究費になっており、中には100倍を越える宝く じのような場合もあります。また、審査員が自分の研究を採択した場合が少なくない と Nature で報道されたこともあります。 経常的研究費と競争的研究費の適切な比率がどのくらいかはわかりませんが、後者が 上のような数十倍の競争率のものに重点が置かれるのであれば、それは「競争」とい うような範疇から逸脱しており、それに全移行しかねない最近の科学技術政策は、研 究者を<もてあそぶ>ものであり、責任ある政策とはいえないように感じます。 ] 世界で大々的に報道された慶応義塾大学の研究者の場合が、まさにそれであり、彼ら は政府が西暦2000年に実施するゲノム関連研究を対象とした研究助成プログラムの対 象から外れてしまっているのである(ネイチャー第402巻、569頁、1999年参照)。 [cf. 記事抜粋 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/99c09-nature.html ] 一体、誰の責任なのだろうか? 主たる責任は、科学を所管する各省庁にあることは 明白である。これらの省庁は、従来の予算枠の死守と新たな予算獲得に走り、日本国 全体のニーズを軽視していたのである。 来年、文部省と科学技術庁が統合される。これは、政府の科学技術行政を再編し、効 率化することを目指す試みである。しかし文部省の役人は、非能率的かつ無駄な官僚 機構を作り上げることに長けており、科学技術行政の再編を推進できるとは思えない 。」 「大学制度にも同様の大改革が必要である。国立大学をある程度の自治権を持つ独立 行政法人にしようという政府の方針は、国立大学に効率性、説明責任や経済性を導入 する動きとして伝えられている。しかしこの方針の裏には、大学教職員に対する政府 からの直接的給与支給をやめることによって、帳簿上の公務員削減を実現し、納税者 にはこれまで通りの負担をさせようという政治家の浅薄な企てを見てとることができ る。」 ----転載終-------------------------------------------------------- 辻下 徹 北海道大学大学院理学研究科数学専攻 〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目 011-706-3823(office) tujisita@math.sci.hokudi.ac.jp http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst